109374 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

小説 こにゃん日記

小説 こにゃん日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

しましまこにゃん

しましまこにゃん

Freepage List

☆長編猫小説『こにゃん日記』


act.1『よお。』


act.2『聖なる日に』


act.3『劇的シーン?』


act.4『桃のママ』


act.5『おいらは空を飛んだんだ』


act.6『冬薔薇』


act.7『上手にちっち』 


act.8『ママVSパパ』


act.9『やっちゃった。』


act.10『おふろでちゃぷちゃぷ』


act.11『焼きたてのパンみたい』


act.12『犬と熊』


act.13『ケットウ?』


act.14『ごろごろだよ』


act.15『みんなで踊ろう』


act.16『ねんねん』


act.17『イチゴとおっぱい』


act.18『おいらの冒険』


act.19『キジ猫大将』


act.20『あれはおいらのお家だ』


act.21『トラ猫』


act.22『お耳でぐりゅぐりゅ』


act.23『回転寿司』


act.24『にゃ~ん』


act.25『おいらと銀の鈴』


act.26『おもちゃのチャチャチャ』


act.27『忍者猫』


act.28『満月』


act.29『菜の花とお月様』


act.30『しま姉さん』


act.31『綿菓子猫』


act.32『おいらのママ猫知りませんか?』


act.33『長い長いおいらたち』


act.34『月猫』


act.35『悪い猫』


act.36『会いに行こう』


act.37『おいらはこの町の猫だ』


act.38『夜の明かり』


act.39『となり町』


act.40『喧嘩』


act.41『懐かしい声』


act.42『キラキラ』


act.43『それは光のように』


act.44『あるメス猫の話』


☆ショート小説


母走る


夢で読みましょう


都会の水


3匹のこぶた


お父さん


海に行きたい


ちんどんや


仏師医


三角くじ


もうひとりの僕


ラムネ


家路


クロノス


薔薇の下にて


貝殻骨


サトリ


つり橋の心理学


命が乗る船


カーマ


おじいちゃんの机


縁日


都会の箱


恋するカレー


星の王


僕の怖いもの


旅立ちの曲


アニマル的コミュニケーション


偉大な一歩


不条理なメルヘン


ちょうちょ結び


デパートにて


お弁当


ドロップ ドロップ


夏の終わりの電話


昼下がりの悪魔


雨の日曜日


なわとび


夜を走る


傷跡


金木犀の花咲く下で


琥珀の人魚


闇の取引


変身


ある画家の話


☆中編小説


人魚姫(act.1)


人魚姫(act.2)


人魚姫(act.3)


人魚姫(act.4)


人魚姫(act.5)


人魚姫(act.6)


人魚姫(act.7)


人魚姫(act.8)


人魚姫(act.9)


人魚姫(act.10)


人魚姫(act.11)


人魚姫(act.12)


悲流子


スノーテール1


スノーテール2


スノーテール3


スノーテール4


スノーテール5


スノーテール6


月の虹


☆詩と川柳


小さな歌


夏の雨の歌


星めぐりの歌


うそつきな子供


夏休みの歌


結婚しよう


おるごぉるの夜


お祭りの歌


花の歌



そらのなみだ


ちいさな幸せ


鳳仙花


『ティータイム no1』


悪女


空とアトラス


長編小説


星を統べるもの1


星を統べるもの2


星を統べるもの3


星を統べるもの4


星を統べるもの5


星を統べるもの6


星を統べるもの7


星を統べるもの8


星を統べるもの9


星を統べるもの10


October 29, 2005
XML
カテゴリ:こにゃん日記
あれから3日もたっていた。
おいらは、ようやく傷も直って、ご飯も自分で、もりもり食べられるようになった。
足に巻いていた包帯もはずしてもらえた。
おいらはそれが邪魔で、何度か齧ってはずしちゃったんだ。
そうしたら、おいらを診てくれたお医者さんが、おいらの顔の周りにぐるりと、固い板みたいなのを巻いたんだ。
おいらが傷を舐めないようにって。
さつきが、おいらを抱いて、鏡を見せてくれた。
おいらまるでラッパみたい。
しましまの猫ラッパだよ。
おいらプオーって鳴るかわりに、なうぅ~って文句言ったけどね。
さつきってば笑っただけ。
それでね。
キジ猫大将も、おまけにトラ猫まで、まるで、くしゃみをこらえてるみたいな、変てこな顔をするんだ。
笑いたいのを我慢しているんだよ。
みんな、みんな、ひどいと思わない?

トラ猫は、大将が言ったとおり、あのあとすぐ、おいらに会いに来てくれた。
トラ猫の血は止まっていたけど、かたっぽの耳の後ろが、ちょっぴり禿げて赤黒いかさぶたに覆われていて、おいら悲しかった。
トラ猫の綺麗な毛皮。
でも、もう大丈夫だから、こんなのすぐ元通りになるわと、おいらに笑って見せてくれた。
黄色猫と灰色猫はどうなったんだろう?
おいらが聞いたら、大将猫は渋い顔をした。
『もう手出しはさせない。』
大将はそれしか言わなかったけど、その言葉がひどくきっぱりとしていたので、おいらは大将を信じた。
『大将が助けてくれたの?』
おいらの言葉に、大将は笑って片目をつぶった。
『トラ公を助けたのはお前だろう?なかなかいい戦いぶりだったな。』
『そうよこにゃん。もしあの時二匹で向かってこられたら・・・こにゃんが、あいつを足止めしてくれたおかげよ。』
トラ猫がおいらを、キラキラとした瞳で見ている。
それは優しい瞳だったけど、今まで、小さな赤ちゃんを見るみたいに見てくれたあの目とは違う。
本気で、トラ猫がおいらのことを、すごいって褒めてくれている。
おいらにはそれが解った。
たぶん。やっぱり、灰色猫たちをやっつけて、おいらとトラ猫を助けたのは大将だろう。
だけど、おいらだって、ちゃんと役に立ったんだ。
おいらすごく幸せな気分だった。

おいらが大将の家で、うとうと寝ながら過ごしている間に、大将とトラ猫は、おいらのママ猫探しをしてくれていた。
おいらには何も言わなかったけど。
おいらそれを知らなくって、だからちょっぴり拗ねていた。
トラ猫は、それっきり、ろくに会いに来てくれないし、来てもすぐにいなくなっちゃう。
大将ときたら、自分の家なのに、ぜんぜん帰ってこないんだ。
ご飯の時間にだってだよ。
大将の家の人たちは、慣れているみたいで、
『仕方がないわねえ。』
なんて、落ち着いたものだ。
おいらのお家のママも、仕方がないって思っているかな?
そうだったらいいな。
おいらなんだか心配になって、美味しいカリカリを3粒も残しちゃったよ。
おいらこうしちゃいられないんだ。
おいらはこっそり、大将の家を抜け出すことにした。

おいらのいる部屋は、明るい畳の部屋で、縁側に面している。
でも格子戸が、いつもしっかり閉められているんだ。
トラ猫や大将は、うまく戸の隙間に爪を差し込んで、いとも簡単にあけちゃうけど、おいらにも出来るかな?
おいらは肉球から爪を出して、しげしげと眺めてみた。
おいらの爪。いつもママに切られちゃうけど、でも本当だったらもう少し伸びていたはずだ。
戦ったとき、塀をよじ登ろうとしたためか、おいらの爪はいくつも、根元からぽきっと折れていた。
無事だったのは右足の小指の爪と、左の親指の爪が半分。
おいらはゆっくりと、歯でしごくようにして爪を磨いた。
戸の隙間に差し入れる。
おいらは力を入れて、戸を開こうとした。
カタカタと少しゆれたけど、どうしてもあかない。
おいらは鼻の頭にしわを寄せ、戸に斜めにしがみついて唸っていた。
カラリ・・・開いたっ!
おいらは弾みで、しがみついていた戸から、コロンと転がり落ちた。
『何やってんだ?』
そこにたっていたのは、キジ猫大将だった。

おいらは、しゅたっと立ち上がった。
ほらね。おいら元気になったでしょ?
『大将。おいらを大将のおうちに連れてきてありがとう。お世話になりました。』
おいらちゃんと挨拶したんだ。
大将は、おいらをしげしげと見た。
『元気になったみたいだな。・・・そうだな。もう帰ったほうがいいな。』
あまり勝手に抜け出すなよ。と言われて、おいらなんだかおかしかった。
だって、大将の方が、お家を好き放題抜け出してるみたいだもん。
『あのね。大将に頼みがあるんだ。』
おいらは上目遣いで大将を見た。
大将が、何だ?と言うようにぱたりと尻尾を振った。
『トラ猫さんに、おいらがちゃんと無事に、お家に帰ったって言ってくれない?』
おいらの言葉に大将の目がすっと細まった。
『おいらまだお家には帰んない。でも、もう、トラ猫さんに迷惑かけたくないんだ。』
おいらはしっかりと、大将の目を見ていった。
喧嘩を売っているんじゃないよ。
でも、絶対これだけは譲れないって気持ちだったんだ。

『母親探しか?』
大将は、おいらの目をはずさずに静かに尋ねた。
トラ猫が話したんだ・・・おいらはこくんと頷いた。
『この3日間、俺の縄張り中の猫が探し回ったよ、もちろんトラ公もだ。』
おいらの耳がぴくんとたった。
大将が言った。
『これだけ探しまくって、こんな怪我までして・・・なぁ。こにゃん。お前は確かに捨て猫だったみたいだが、今はちゃんとした家族がいる・・・だから、もういいじゃないか。』
もういい?もういいってどういうこと?
あきらめろって?
そうか・・・この町にもママはいないんだ。
だったら、おいらのすることは決まってる。
『ちゃんとトラ猫さんに伝えてね。』
おいらは、開いた戸の隙間を抜けて、縁側に出た。
お日様が目に痛い。
ぴょんと庭に降り立った。
大丈夫、よろけない。
おいら一人でもがんばれる。
この町にママがいないんなら、別の町を探せばいいんだ。

『待てっ!』
大将が声を張り上げた。
おいらは、振り向いてぺこりと頭を下げる。
ありがとう大将。でも、おいらあきらめない。ママを探すんだ。
『待て、こにゃん。』
おいらはもう振り向かなかった。
『お前の母猫は見つかったよ。』
おいらの背中に、その言葉が、降り注ぐ光のように訪れた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 30, 2005 04:43:53 AM
[こにゃん日記] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X