見たまま、感じたまま、思ったまま

2008/07/20(日)00:41

内科認定医の試験にお出かけ

ちょっと医学なお話(41)

昨日の徳島は35度、今日も夜の9時前の国道の電光掲示板が29度を示していた。 暑いでんな。 配偶者は明日の内科学会の認定医の試験を受ける為に今日の夕方から神戸入り。 まあ彼女の気合いの入り具合は相当なもので、この数ヶ月というもの、暇があればリビングのテーブルで本を開いて勉強していた。我が家の子供達よりも何倍も勉強していたのではないか? 僕ら夫婦は伴に内科医だけど、卒業して20年以上になろうと言うのに未だ認定医の資格を持っていなかった。しかし、これは決して僕らの名誉の為に言うけど僕らが不勉強と言うわけではない。 僕らが卒業した頃は、そもそもこういう認定医精度は無かったし、内科学会に入会せよと言う指導自体が無かった。1年の大学での研修を終えて外の病院へ出て、内科学会の地方会で症例報告なんぞの発表をする段になって必要に迫られて入会したと言うのが多い。 ここで知らない人の為に説明しておくと、卒業して医者の免許を取ったら自分で専攻を決める。 内科になっても良いし、外科になってもいいし、産婦人科になっても良い。 もちろん、途中で変更しても構わない。運転免許を取得したら、セダンに乗ってもオープンカーに乗っても良いのと同じである。 内科医になるための試験、外科医になるための試験のようなものはない。 各学会と言うのは、そういう医者の国家資格とは全く無関係に存在している独自の団体である。 まあ独自と言っても、それなりにちゃんとした権威や発言権などは持っている。 こういう団体が独自に認定医を言うのを制定している。 医者の免許を取得して、他に医学関係者が何か資格を得られるか?と言うと、学位と認定医の2つである。学位と言うのは、所謂医学博士と言う奴で、これこそ更にいい加減。大学、教室単位で独自に発行しているものだ。医学博士の多くは、臨床ではない基礎医学(細胞や、動物を使った実験)が中心なので、医学部の人間以外でも医学博士の称号は貰える。 おお、そう言えば僕も持っていた医学博士。何の研究をしてたかさえも忘れてしまったけど(笑)。 で、認定医と言うのは基礎医学ではなく臨床的な学問の認定医であるが、これが何の為に制定されているかと言うと、ある一面から見れば医者の生涯教育、レベルを維持するためのもので、別の側面からみれば学会の人集め、金集めである。 認定医になるには、学会へ入会して○年が必要で、試験を受けて合格しても、それを維持するのに×年に○回の学会への出席、講習会への出席(ともに会場費を取られる)を必要とされるから、学会にはどんどんお金が入ってくる仕組みになっている。 で、学会同誌に関連があって、内科学会、外科学会などは学会の親玉的存在であり、例えば呼吸器病学会の認定医を取得しようとしたら、まず内科学会の認定医を取得して○年・・と言う具合に縛りがあって、大きな学会は枝葉の学会に影響を及ぼしてる訳だ。 ま、そんな風に、僕らが卒業してから数年経った頃に内科認定医の制度が始まった。 これが結構面倒なのよ。 試験を受けて合格すればオッケーと言うなら話は簡単だし、今だって受けてやろうかなと思う。 しかし、試験以外に症例と言うのがあって、内科学会の研修指定病院(多くは大学、各公立病院など)で担当した患者のサマリーを各分野(呼吸器、消化器、神経・・と言う具合に)数例ずつ提出しないといけない。更に外科紹介で手術をした患者の手術記録、解剖した患者の剖検記録なども提出を必要とされる。 そんなのさあ、初めから分かっていたら準備するけど卒業して数年経ってから言われても困るんだよ~。 それにさあ、「暫定」と言う形で、僕らの2年上までは、こういう試験や症例のサマリー提出無しで認定医が貰えていたのよ。だから僕らにも暫定が降りてくるのかと思ってたら降りてこなかったのよ。これが腹立つじゃん。今の学会のお偉方ってさあ、みんな暫定で、試験も受けてなければサマリーの提出もしてないのよ。 それでも、大学や国公立病院で勤務していく人は、こういう資格(みんなが持っていたらそれほど有利じゃないけど、持ってなければ不利になる)が必要なので、一生懸命サマリーを揃えて頑張って試験を受けてたし、今の若いドクターはカリキュラムの流れとして卒業して数年でこれを取得するようになってるので、みんな持っている。 認定医を持ってないと内科が標榜できなくなるとか、保険診療の点数が低くなるなんて噂もあったけど、医師の資格が国家資格である以上、そんな事にはならないだろうし、まあそう言うわけで僕ら夫婦は「ワシらは医者の免許と運転免許以外には何も要らんのじゃ~」と割り切ってやってきた訳だ。ところが、どうしてそのポリシーを変更して認定医の試験を受ける事になったかと言うと、彼女は東洋医学界の認定医を欲しくて、それを取るには内科学会の認定医を持っているのが必要とされるからだ。 彼女はこの東洋医学界の認定のもう一つの条件、研修指定病院で3年の研修と言うのを満たすために今年から週に一回淡路の病院まで半日研修に行っている。 この熱意は凄いなあと思う。と、言うか女性はどうしてみんなこんなに資格に執着するのかなとも思う。肩書きが無くても、自分がちゃんと勉強して日々の診療でそれを実践すれば良いと思うけどね。内科認定医にしても、僕らの同期の女性のドクター達はいち早く取得していた。僕ら同期の男性医師が大学で患者さんの診療に追われていた頃に、認定医の試験の為の勉強やサマリー造りに奔走して資格を取ったけど、現在その資格を生かせる仕事をしてる人は誰も居ない。 まあ、うちの配偶者はそういう事はなくきちんと資格は生かすのだろうけど。 昨年は、中国語検定の3級を頑張って取得していたし、やっぱり資格を自分の勉強の形として残しておきたいと言うことなのだろう。 で、このとばっちり?がこちらにも回ってきて、来年はあんたも認定医の試験を受けろと彼女が迫ってくるのよ。僕は自分としては日々の診療に必要な勉強はきちんとしているつもりだし、前からと同様に医者の免状以外は要らんと言う態度で行きたいんだけどけどなあ。あのサマリーが面倒なのよ。大学へ全部調べにいかなあかんからなあ。単に試験を受けろと言うだけなら幾らでも受けさせていただくのだけど。試験勉強をしている時に、彼女が出来ない問題を僕が出来ると凄く悔しがっていたからなあ。 でもね。内科学会の認定医の試験ってとっても細かいのです。もちろん大事なところもあるけど、多分一生出会うことの無いような病気についての問題も沢山ある。そういう広い視野を持つことも大事かも知れないけど、自分としては日々の診療でよく診る病気について広く深く知っておきたいし、教科書でしか見たことのない病気のことを一生懸命覚えてもなあと言う気はある。 なんかめんどいですなあ。

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