Ｌａ　Ｖｉｅ・音楽とともに　～標高１，０００ｍの高原だより～

今日、２麻呂はとうとう寝るまでヴァイオリンのお稽古をいたしませんでした！
いつも、学校から帰って、すぐにお稽古をするのが約束なのですが、それは守られない日の方が多いくらい。グズグズと言い訳をしているときは、仕方なくこちらも百歩譲って、「じゃあ、おやつを食べてからね｣などと言いますが、今日はちょっと勝手が違いました。
帰ってきていきなり、
「Nちゃんの家に行きたい！」
と、お友達の名前を出しました。
「Nちゃんのおうちは、お母さんがお勤めで、おばあちゃましかいらっしゃらないから、迷惑だからいけません」
と言うと、それでもう口を尖らせて泣きわめき、
「じゃあ、おけいこやらないっ！！」
と、彼なりに考えた戦法に出ました。我が家では、お稽古をしない子は、ご飯を食べなくてよい、つまり、お稽古をしないとご飯が食べられないという決まりになっております。今日の晩ご飯は２麻呂の好きなシチューなのですが、彼は、賭けに出たようです。わたくしも負けるわけにはまいりません。
「いいわよ、そのかわり晩ご飯はなしです」
「いいもん！」
Nちゃんのおうちに行けないことが、よほど悲しかったようです。
見かねた１麻呂が、
「ぼく先にお稽古するからね｣
と、ピアノでクレメンティのソナチネを弾き始めました。
ソナチネが終わり、バイエルになっても（ぎょっとされる方もいらっしゃるかと思いますが、バイエルがもうすぐ終わりなので、ソナチネと併用しております）２麻呂のふくれた頬は、ますますひどくなり、目つきも悪くなってまいりました。でも、お腹もすいているようです。
「そろそろ許してくれるかもしれない・・｣
精一杯の抵抗の向こうに、甘えもちらりと見え隠れします。
そのうち夕食が始まりました。２麻呂はまだ落城しません。
さて、夕食も終わり、わたくしはうっかり油断していたのでしょう。
気がついたら、キッチンで２麻呂が、シチューのお鍋の中のお肉を、スプーンで拾って口へ運ぶところ、そして、次は朝食の残りで、カウンターに載っていたパンケーキにかぶりつきました。やられました！その素早さときたら！
それでもう、わたくしは意地でも
「今夜はお稽古をするまで食事は与えまい・・」
と心に決めました。
麻呂達は、お風呂に入って、宿題や明日の準備などしているうちに、ついに２麻呂は眠ってしまったのでございます。
結局、この勝負は誰が勝ったのでしょう。・・・空しくなるわたくし。
【約束とパイの皮とは、壊されるために作られる：スウィフト】