La Vie・音楽とともに ~標高1,000mの高原だより~

2007/01/12(金)00:00

ツィマーマン「ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15」

楽しむは音(136)

昨年の暮れに、ブラームスの2番のピアノ協奏曲をご紹介させていただき、「次回は1番を・・」と 予告をしながらも、その直後に聴いた、グリモーの1番があまりにも素晴らしかったので、そちらの 感想をご紹介し、本来ご紹介する予定だった1番が、大幅に遅れておりました。 本日、ここにあらためてご紹介させていただきます。 ツィマーマン&ラトル、ベルリン・フィルという、最強かつ極上の組み合わせ。 最近のNo.1の呼び声の高いこのアルバム。「音楽の友」最新号でも、2006年レコード・アカデ ミー賞の銅賞に輝いたと紹介されていましたね。 この録音は、ひとつの宇宙を作り上げています。 残念なことにわたくしはこの宇宙をすべて語り尽くせる言葉を持ちません。 「筆舌に尽くしがたい」・・とは、こういうことをいうのですね。 ブラームスにしては稀有なほどの、とても饒舌な、若く瑞々しい感性に満ちた作品です。 ツィマーマンとラトルという、同年代の芸術家の信頼関係の強さが、全面に溢れています。 この曲の主人公も若き男性。そう、ヨハネス・ブラームスその人です。 第1楽章。たたみかけるようなティンパニの響きの中、若者が必ず通る「苦悩」という名の道を 彼は進みます。長い長い連続トリルがその心の乱れを象徴しています。 ラトルの間の取り方の上手さ! ソロの導入部。これ以上ないくらいの、神々しいまでのppで入るツィマーマン。 これが彼の音の世界。彼の音の宇宙。 第2楽章。静寂の宇宙。 一音一音に、懐かしさ、悔恨、ブラームス自身の思いを代弁するツィマーマン。 まさに極めつけの緩徐楽章でございます。嗚呼、このゼクエンツの美しさ! そこに浮遊する我が身。ここは、すべてを受け入れ、すべてを許すニルヴァーナの世界。 バッハへのオマージュのような主題で始まり、激しい感情がほとばしる第3楽章。 珍しくツィマーマンは、いつもの修行僧ではなく、貪欲に情熱を求める若者のよう。 こういっては語弊があるかもしれませんが、完全にラトルとベル・フィルを圧倒しています。 こんな彼は初めて。50歳にして到達した境地なのでしょうか。 好みはあるかもしれませんが、ソロもオケも非常に完成度の高い良い演奏です! ブラームス氏は、この曲を自ら初演したそうですが、かなりの腕前を持っていたということが よくわかります。昔、何かで読みましたが、普通は生徒が先生のお宅に通うものですが、 ブラームスの場合、先生の方が、彼の住まいのそばに引っ越してきたのだそう。それだけ 彼の素質を買っていたということなのでしょうね。素敵なエピソードです。 さて、申し遅れましたが、このCDは、にゃお10さんからいただいたギフト券があったからこそ 手に入れられたものでした。カップリング曲がないアルバムなのに値が張るので、自分で 買うには躊躇してしまっていたのです。細かい金額の分は自分でお支払いしましたが、 ギフト券が思いきって購入する後押しをしてくださいました。 にゃおさん、あらためてありがとうございました。                                     同年代ならではの親密なショットですね                                     ついでに・・。                余ったギフト券を足して買ったワケありのCD。                理由について知りたい方、メッセージをどうぞ。

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