2008/05/07(水)22:46
~シリーズその1~伊藤恵&朝比奈隆&新日フィルによるブラームス
今日は、ブラームスの誕生日。
・・というわけで、ブラームスの175歳(!)の誕生日を記念して、今月は、当ブログ初の
シリーズものに取り組んでみたいと思います。
題して「ピアノ協奏曲第1番二短調op.15への誘い」。
ここ1年ほどハマって聴きこんできた、いろいろな演奏家によるこの曲をご紹介させていただきます。
第1回は、伊藤恵さんをソリストに迎えた、朝比奈隆先生と新日フィルとのライヴ盤。
これは熱き演奏を記録した、名盤の誉れ高い1枚です。。
この盤の大きな特徴。それは、「聞こえないはずの音が聞こえる」のです。
冒頭からゆったりのテンポ。重厚なベース、鳥のさえずりのようなフルート。
ピアノソロが入る前の、緊張感溢れるリアルな管楽器群の音。
テンポがゆっくりなおかげで、他の演奏家の盤では、聴き取れないような、小さい音や短い音が
聞こえてくるのです。これは、新鮮な体感。
丁寧に、情感のこもったタッチで始まる伊藤さんのソロ。何度もこの曲を合わせている朝比奈先生を
心から信頼している様子が音を通して伝わってきます。
伊藤さんは、ダブルトリルが実にブリリアント!
ピアニッシモの部分では、一音一音を大切に紡ぎながら、しっとりと。
ブラームスの時代には、このようなテンポが、案外、当たり前だったのではないか・・・と思えてくる
くらい、とても自然にまとまっています。
202から210小節の3声の響きの美しいこと!
第2楽章は、ピアノの4声の音がそれぞれはっきり、しかも静かに聞こえてきて、まさに瞑想の森に
入り込んだ気分にさせてくれます。
弦は、森の中にある湖。そこにたゆたう、管楽器群とピアノ・・。
こうしてスコアを見ながら聴いていると、本当によくできている曲だとしみじみ感じますね。
若きブラームスの、天賦の才能がここに結晶しています。
第3楽章、この場でも伊藤さんは、慌てることなく落ち着いて打鍵することに集中し、ひとつとして
ミスがありません。驚異的な技術と持久力を持ったピアニストです。男性でも、ここまで完璧に
弾ける方は、そうはいないと思いますね。しかも、ライヴですよ、ライヴ。
そしてフィナーレは、鳥肌が立つような感動が待っているのです!
拍手は鳴り止まず、その後7分間も続いて、フェイドアウトしました。
昨年の6月、伊藤さんのこの曲の演奏会を、身内の入院でふいにした私。
同じ頃、このCDに出会い、大いに慰められたものでした。
大きな声では言えないけれど、あのツィメルマン&ラトル&ベル・フィルとの演奏をも、凌駕するほどの
名演といえます。