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La Vie・音楽とともに ~標高1,000mの高原だより~

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April 16, 2010
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カテゴリ:楽しむは音

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ジネット・ヌヴーの「詩曲」は、薄い絹のベールがかかったような、

遠く、はかない音色が胸を打つ。

まるで、自分の短い一生を予感していたかのように、

誰にも行き着くことのかなわない深遠の領域に

ひとりで歩を進めているような印象を受ける。

そう、この録音は、偶然にも、不慮の事故により、前途洋々だったはずの人生に

突然幕を下ろしてしまった演奏者と作曲者との邂逅だ。

ばら

ヌヴーは、1949年、30歳の時に、演奏旅行に向かうために乗った飛行機の事故で

愛用のストラド、そしてピアニストで仕事上のパートナーでもある

弟とともに、大西洋の露と消えた。

一方、作曲者のエルネスト・ショーソンは、1899年、44歳の時に、

自転車事故を起こし、急逝した。

私自身は、30歳はとっくに通り過ぎてしまったが、

もしも自分が44歳で突然命を落とすことになったら・・・と、ふと考えてみた。

ヌヴー、ショーソンともに、どんなに無念だったろう・・と

夭折の彼らに、思いを寄せつつ・・。

ばら

先日、突然、母方の伯父の訃報が入った。 

5人きょうだいの中で、ただひとり、特別深刻な持病もなく、

親戚中の皆から頼りにされていた人だった。

車を飛ばす私の頭の中では、ヌヴーのこの演奏がずっと鳴り響いていた。

駆けつけた夜の病院に、伯母や従妹たちの姿はすでになく、

家で伯父を迎える準備をするために戻った後で、

数十年ぶりに会う、母や伯父の従弟たちが、伯父の迎えの車を

待っているところだった。

「どちらさん?」

「かのんです。ご無沙汰しております。」

「おお、もう何十年も経って、誰だかわからないなあ。」

 

眠っているようにしか見えない伯父と対面した後、彼らが所用で中座するというので、

「よろしいですよ。私がここにいますから。」

伯父をひとりにするのが可哀想だったのでそう言うと、彼らは安心して部屋を出ていった。

伯父とふたりで20分ほど過ごした。

幼い頃からお世話になった伯父への、私にできる最後の精一杯の気持ちだった。

ほどなく迎えの車が来て、中座していた従弟たちも戻り、

病院のストレッチャーから車のストレッチャーに一緒に伯父を移した。

伯父の身体はまだあたたかかった。

ばら

人生ははかない。

それでも思うこと。

喜怒哀楽に彩られ、美しい音楽に彩られながら、

日々を大切に生きること。

今、ここにいることに感謝すること。

ちいさくても確かな愛で、世に貢献すること。

ヌヴーのショーソンを聴きながら、

静かに心に誓った。

 

カップリングのブラームスのVnコンチェルトがまた、

「女流」の言葉を返上したいほど、男勝りのいい演奏です。






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Last updated  April 16, 2010 10:25:00 PM
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