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第8章 黒影狩り 中編1
日付はかわり、0時20分、場所はディスコキングケイブ。サイバー、ウェン、ピーオー、そして、奥にはやはり、ブラックシャドー。この場にいる以上、このレースの参加は間違いあるまい。 サイバー「テルドムがいねえな。あいつから目を離しとくわけにはいかないから、俺はちょっと抜けるぜ。レースの方はピーオーに頼んだ。ウェンはピーオーがなんかあったらなんとかしてやれ。」 慣れないハイパワーエンジンである。ピーオーが事故を起こさない保障などない。 サイバー「ピーオー、今はエンジンを休めとけよ。擬似Qモンスターマグナムはあんまり連続運転に耐性がないからな。」 それだけ言うとサイバーはその場を去った。この大一番の一戦を見届けもせず立ち去るサイバーにはやはりピーオーへの信用があったのだろう。それによって彼もまた、テルドムとの戦いに出向けるのであった。 ピーオーはスタートラインについた。相手はブラックシャドー。ほかに8台の参加者はいたが、意味をもたないものだった。青のシグナルの点灯音、それに二人のスタートダッシュの排気音が共鳴し、先行していくシャドーの背中にぴったりとついていくピーオー。またもQ界の命運を背負った彼が蹴った地面から上がった乾いた土煙がホームストレートに残っていた。 レースは3周あるが、ピーオーは1周目から仕掛けに入った。最初の左コーナーでインコースへアグレッシブに攻め込むと、シャドーはなぜかすんなり身を引いてピーオーを前に出した。ピーオーは唖然としたが、その答えはすぐにわかった。次の右コーナー、代わってインサイドのポジションとなるシャドーがアウトサイドのピーオーを強くプッシュ。ややバランスを崩したところでもう一撃突っ込んできた。間一髪反対方向にスピンで避けたピーオーだったが、今の一撃に疑問を持たずにはいられなかった。 ピーオー(コイツがこんなに攻撃してくるなんて・・・。いつもは速く走ることばかりを考えてるようだったが、今の攻撃は自分のタイムロスも気にせず完全に俺を潰しにきていた・・・。どういうことだ?) 30km/h前後まで下がった速度を戻すためにアクセルを目いっぱい踏んだ直後、またも信じられない場面に遭遇する。ブラックシャドーのテールの白色のランプが点灯している。 ピーオー「バックだと・・!?」 とっさにハンドルを切ってかわそうとするも、鼻先をかすり、安定を損ねる。シャドーはしとめ損ねて舌打ちをすると、再び前方へ急加速した。さすが、悪魔プラスモンスターマグナムでゼロからの発進もあっという間だ。その後、コーナー2,3個平走した形になり、その間もシャドーは体当たりを繰り返していたが、レース序盤でシャーシにダメージが溜まることを嫌ったピーオーが一歩引いてシャドーが先行した。 ピーオー(ここまで妨害してくるなんて、コイツらしくない。) さすがに頭にきたのか、ピーオーは叫んだ。 ピーオー「おい、おまえが求めてるレースってのはこんなもんか。『攻撃』じゃなく、『速さ』で俺に勝ってみろよ。」 次のコーナー、今度はアウトサイドから追い抜きにかかる。ピーオーの言葉にも反応なく、隙あらば幾度となく攻撃を仕掛けてくるシャドー。それをかわし、逆にピーオーがプレッシャーをかけて壁際に追い込んだところでシャドーはすっと後方へ下がった。 シャドー「抜きたければ抜け。」 ピーオー「!」 シャドーの言葉を聴いたピーオーが愕然としてしまった。シャドーにブラック・マリアの魂が搭載されていることはベルズに聞いて知っているピーオーであるが、パープルペガサスとなってブラック・マリアと戦い、あのとき、最後のコーナー前の直線で、意地でも追い抜かせないという気迫を見せ付けられたときのことを思うと今、前に出た瞬間、怒りがふつふつと沸いてきた。 ピーオー「・・・・なら、ぶっちぎってやるよ。」 一段と強くアクセルを踏みつけたピーオーは必要以上に後輪を滑らせ、大きくリアボディを振ってロングコーナーを曲がっていった。まるで、自分のレースへの情熱を振りかざすように。 さて、今日も更新です。ちなみに、気づいてない方もいらっしゃるかもしれませんが、昨日も前編3を更新してます。 ブラックシャドーに対するピーオーだったが、なぜかシャドーの走りには覇気が感じられない。執拗なまでの攻撃にピーオーは果たして? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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