趣味の漢詩と日本文学

2017/04/22(土)18:53

伊勢物語 119段

学習・教育(61)

第百十九段【本文】 むかし、女の、あだなる男の形見とて置きたるものどもを見て、 形見こそ 今はあたなれ これなくは 忘るる時も あらましものを【注】〇あだなり=誠意がない。誠実さに欠ける。〇形見=過去のこと、また別れた人や死んだ人を思い出す手がかりとなるもの。〇あた=恨みの種。『平家物語』巻二・大納言死去「形見こそ今はあたなれ」。〇あらまし=あるだろうに。あればいいのに。ラ変動詞「あり」の未然形に、反実仮想の助動詞「まし」がついたもの。〇ものを=~のになあ。不満の気持ちを含んだ詠嘆を表わす終助詞。形式名詞「もの」に、間投助詞「を」がついてできたもの。【訳】むかし、女が、誠意がない男が記念にといって置いていった品々を見て、次のような歌を作った。別れた男が残していった思い出の品々が今となっては恨みの種だ。これさえなければ、あんな不実な男を忘れて気が休まる時もあるだろうになあ。

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