カテゴリ:本・映画・ドラマ・ゲームなど
でも、そんな平和や幸せは、自分で勝ち取るんだなあ~……と、実感するような話が、やはり「まんが日本昔ばなし」にありますので、今日はまたまた昔ばなしです。 そんなわけで、今日は「百合若大臣(ゆりわかだいじん)」!o(^▽^)。o0○ 九州や沖縄(特に、大分県)では、超有名な昔話だそうで、浄瑠璃の世界にも大影響を与えた百合若大臣。 Yahooで検索しても、今のところ51,300件もヒットしますね。ご興味のある方、調べてみてください。注意:またまたわたしのオリジナル的な台詞もありますが、お話内容は間違いありません。 ※以下、お話の内容です。 時は平安。豊後(ぶんご)の国(今の大分県)に、百合若(ゆりわか)という若い武将がおりました。 百合若は体がとても大きく、子供のころから大変力が強くてたくましく、心の優しい男で、昼は得意の鉄の弓矢を手に勇ましく戦い、夜は結婚したばかりの美しい妻、春日姫(かすがひめ)に書や詩を習って、姫と幸せに過ごしておりました。 そんなある日、朝廷は百合若に、九州を狙う新羅(現在の韓国の一部)の国への遠征を命じました。 百合若は春日姫に、愛鳥の鷹、緑丸(みどりまる)を預け、戦い続けました。 その戦は思いの他長引いてしまい、さすがの百合若も疲れ、船上で休むことにしました。 その隙をねらう者がいました。 前から百合若を良く思わず、いつも彼の地位を狙っていた逆臣、別府貞澄(べっぷさだすみ)と、実弟の貞貫(さだつら)です。 貞澄と貞貫は、百合若とは正反対で、嫉妬深くずる賢く、心の中は真っ黒で、目的を果たすためなら手段を選ばない男たちでした。 貞澄と貞貫は、深く眠り込んでいる百合若を、無人島・玄界島に置き去りにし、ほくそ笑みながら去ってしまいました……。 目をさました百合若、周りにはなにもありません。断崖絶壁や荒々しい岩肌しかなく、筏や船を造れそうな木どころか、草すらほとんど生えておりません。そこは無人島でしたから無理もないでしょう。 百合若は、すぐ、貞澄たちの策略と分かりました。 「おのれ貞澄……裏切ったな! それにしてもここは一体何処だ……?」 周りの様子を見て、百合若は途方にくれ、その場に大の字になってしまいました。 「おお、春日……緑丸……俺はもう一度お前たちに逢えるのだろうか」 百合若の心の中と、毎晩見る夢は、愛する妻、春日姫と、愛鳥の緑丸でいっぱいでした……。 戦いで疲れた百合若をいつも美しい春日姫が癒してくれました。 春日姫と一緒にいると、百合若は本当に幸せでした。力がみなぎりました。 そんな春日姫を、百合若はよく狩りに一緒に連れていきました。そんなある日、一羽の鷹が、大きな猪に追い回されていました。 百合若は、得意の弓で、その鷹を助けてあげました。 それ以来、その鷹は、百合若と春日姫に懐いて、二人は「緑丸」と名付けて、かわいがっていたのです。 また、この時、百合若は豊後の国の大臣(国主)だったのですが、「鉄の弓矢を操る男」「民を思いやる良心的な政治をする」と、畏れられ、尊敬されていました。 そんな、無敵だった百合若でありましたが、島に置き去りにされた時ばかりはどうにもならず、不覚としか言いようがなかったのでした……。 「……百合若さまが戦死なさった?」 その頃、豊後の都では、春日姫があの貞澄兄弟に、夫の百合若が戦死したと、嘘を吹き込まれているところでした。 もちろん彼女は信じようとしません。 「嘘ですわ……百合若さまは、あの方は簡単に死ぬような方ではございませぬ!」 「いや、嘘ではござらぬ。あのような剛勇な方が……まことに残念であった」 「いいえ! 信じません! 百合若さまは生きていらっしゃいますわ!」 春日姫は、百合若がどんな男か一番知っているし、彼を心から信じているだけに、貞澄の言うことを信じようとしません。 「春日殿。わたしは前から、そなたを思っておりました。このわしの妻になって暮らすお気持ちはないものか」 「お断りします。わたしには百合若さまがいらっしゃいます」 「なにをとぼけた事を。百合若殿はもうこの世にはおらぬ。兄上についてゆかぬか!」 「嫌です! わたしは百合若さまのものです!」 「ええい、聞き分けのない女じゃ! 少しそこで頭を冷やすがよい!」 怒った貞澄は、なんと、春日姫を無理矢理牢に入れてしまいました。 自分に逆らう者はたとえ女でも容赦しない、なんという極悪非道な男でしょうか。 春日姫は冷たい牢の中で、夫の百合若を想い泣いていました。 すると、いつの間にか牢の鉄格子をすり抜け、緑丸が入ってきました。 「緑丸。お前も百合若さまが生きていらっしゃると信じていますね? 百合若さまは必ず戻ると約束してくださいましたもの。百合若さま、春日は、ずっとあなたさまのお帰りをお待ち致します」 春日姫は、意を決して、紙に筆で何かを書き始めました……。 それから月日が経ち、百合若は、髪もひげもぼうぼうになりました。肌も焼けて真っ赤になり、彼の容姿はまるで鬼のようです。 しかし心の中は変わることなく、純粋に春日姫を想い、愛し続けていました。 「春日……無事か? 早くお前に逢いたい」 美しい春日姫。長い黒髪。白い肌。透き通る声。そして何よりも賢く聡明な妻……。 しかし今、二人は離ればなれ。百合若はいたたまれない気持ちになりました。 「うおおおーっ!」 百合若は思わず空に叫びました。 すると……。 「なんだ?」 何かが、こちらに向かってきます。 「おお、緑丸! お前か!」 いつまでも帰ってこない主人の百合若を不安に思い、緑丸は空を飛び回って懸命に探し続けたのです。 「こんなところまで……よく飛んできたな」 百合若は、何度も緑丸を優しく抱きしめました。 すると、緑丸の足に、なにか紙切れが結んでありました。 「なんだこれは……?」 百合若は、紙切れを緑丸の足から外しました。 それは春日姫からの手紙でした。 「春日……」 百合若は、食い入るように、春日姫の手紙を読みました。 そこには、百合若がいなくなってからの貞澄・貞貫の極悪非道ぶり、春日姫が貞澄の求婚を断ったために、現在、牢に監禁中であることが書かれていました。 百合若は、わなわなと激しい怒りに震えました。 「おのれ、貞澄め……! よくも春日を!!」 怒りのあまり、百合若は拳を地面にたたきつけました。 「よくも春日を牢などに入れてくれたな!! 待っておれ、春日……。何とか俺の無事を春日に知らせねばならん」 しばらく考えた百合若は、木の葉を取り、自分の指を短刀で傷つけて、その血で懸命に手紙を書きました。もちろん、春日姫にでした。 そして、百合若は、その想いを緑丸に託しました。 「緑丸、頼んだぞ。何とか春日の元へ届けてくれ」 緑丸は、百合若の手紙を運ぶと、また、空に消えていきました……。 しばらくして、春日姫の元へ、緑丸は百合若の手紙を届けておりました。 百合若の手紙を見た春日姫は、それまでの悲しそうなお顔がパッと明るくなっておりました。 「まあ……緑丸! これは……百合若さまの字で……! やはり百合若さまは生きていらっしゃるのだわ!」 しかしよく見ると、その字は、茶色く変色しておりました。 「まあ! この字は……血……!?」 心優しい春日姫、遠い百合若を想い、心が痛みました。 「わたしのために……百合若さま……なんとおいたわしいこと……」 考えた春日姫は、硯と筆を、緑丸に託そうとしました。 ※百合若大臣(後編)に続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年11月20日 23時14分24秒
[本・映画・ドラマ・ゲームなど] カテゴリの最新記事
|
|