ノベルの森

2017/09/23(土)13:24

ある夏の日に アカペラYesterday

SF小説(245)

ある夏の日に  アカペラYesterday 大きくて分厚いドアを開けると 「いらっしゃーい」 大音響に負けず・・・聴きなれたよく通る声が耳に入ってきた。 思ったとおり、ヨースケが大きく目を開いてやって来る。 「なんだよ、ユーイチぃ最近ぜんぜん顔見せないじゃない!新宿ばっか行ってんのかよー」 「それ誤解だってヨースケ、新宿にも下北にだって行ってないからな。忙しかっただけだから」 他の客の邪魔にならないようカウンターに移動しながら言い訳して奥の席に座るとヨースケが、 「そう言えば、ユーイチ、昨日誕生日じゃなかったっけ?」 驚いた! 「え!何で知ってんだ?」  「いいじゃん別に」 ヨーコにさえ、わざと言わないでいたのに・・・ 「ヨースケ・・・」 「もう、ユーイチは言い出したら利かないからな・・赤坂のレコーディングスタジオの新倉さんから聞いた」 「ああ、なるほど・・・」納得して幾度か頭を縦に振った。 その時ドアが開いて新たな客が・・・! 「いらっしゃーい!あらら、噂をすれば何とやら、だねユーイチ」 「だね、ちょっと挨拶してくるわ」 音楽の師匠と仰ぐ新倉さんと奥様が!、空手の習得の為にリバプールから来てるティムちゃん、おっと!今日は豪のゲイリーさんも一緒!後の2人は初顔で、合計6人がテーブルにつく、その前に新倉さんが気付いてくれて。 「よー、久し振りだな」と。 「ご無沙汰してます」と頭を下げる。 「Hi, Yuichi!」とティムとゲイリーが先に挨拶をくれた。 「ハイ、ティム。ゲイリー」とカタカナ英語で手を上げる。 ヨースケがいつものように客からのオーダー待ち、かと思ってたら、近づいてった。おまけに何かを新倉さんに耳打ち、それを新倉さんがティムたちに伝えているようだ。 ティムがヨースケを呼んで耳打ちする。大きく頷いたヨースケがすっとぼけた顔して俺の横を通り過ぎると、唐突に音が止まり、ブーイングが起きる。当然の反応だ。 すると、 「Yesterday」♪ 前触れもなくティムがアカペラで歌い始めたのだ! 皆の顔が俺に集まる! なんていい奴らなんだ・・・ ヨースケが他の客の間を急ぎ足で回ってる。 歌声は次第に大きく、そして広がり、一つになった! 目の前がぼやけたまま、アカペラYesterdayが終わり拍手が鳴 る。 俺は一言どうしても、言いたくなった。 「みんな!ありがとう!thank you!俺はこの歌が大好きだ・・新倉さん、翻訳お願いします。特に Oh, I believe in yesterday.俺はここを「ああ、俺は過去を否定したりなんかしない」と読み取りたい。自分の過去を否定してたら、これから前に向かって生きていけない。そう思うから・・・みんな今日は本当に素敵なプレゼントをありがとう!」 深々と頭を下げた俺の頭の上を拍手と「Happy Birthday!」が通り過ぎる。 頭を上げて俺はヨースケに言った。 「ここにいる全員にビールを1本ずつあげてくれ。俺のおごりだ!」 直後におきた歓声がこの日最も大きなものだったらしい。ヨースケが、そう教えてくれた。 ―― 隕石落下・・・それさえ忘れさせてくれた、ひととき―― 今日の好きな曲は、言うまでもなくビートルズの The Beatles -「Yesterday」です。僕の中のNo1です! Beatroom7Dさん、 Upして頂いて、本当にありがとうございました。 いつも応援ポチをありがとうございます。 今日もよろしくお願いします。♪  

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