2017/09/23(土)13:24
ある夏の日に アカペラYesterday
ある夏の日に アカペラYesterday
大きくて分厚いドアを開けると
「いらっしゃーい」
大音響に負けず・・・聴きなれたよく通る声が耳に入ってきた。
思ったとおり、ヨースケが大きく目を開いてやって来る。
「なんだよ、ユーイチぃ最近ぜんぜん顔見せないじゃない!新宿ばっか行ってんのかよー」
「それ誤解だってヨースケ、新宿にも下北にだって行ってないからな。忙しかっただけだから」
他の客の邪魔にならないようカウンターに移動しながら言い訳して奥の席に座るとヨースケが、
「そう言えば、ユーイチ、昨日誕生日じゃなかったっけ?」
驚いた!
「え!何で知ってんだ?」
「いいじゃん別に」
ヨーコにさえ、わざと言わないでいたのに・・・
「ヨースケ・・・」
「もう、ユーイチは言い出したら利かないからな・・赤坂のレコーディングスタジオの新倉さんから聞いた」
「ああ、なるほど・・・」納得して幾度か頭を縦に振った。
その時ドアが開いて新たな客が・・・!
「いらっしゃーい!あらら、噂をすれば何とやら、だねユーイチ」
「だね、ちょっと挨拶してくるわ」
音楽の師匠と仰ぐ新倉さんと奥様が!、空手の習得の為にリバプールから来てるティムちゃん、おっと!今日は豪のゲイリーさんも一緒!後の2人は初顔で、合計6人がテーブルにつく、その前に新倉さんが気付いてくれて。
「よー、久し振りだな」と。
「ご無沙汰してます」と頭を下げる。
「Hi, Yuichi!」とティムとゲイリーが先に挨拶をくれた。
「ハイ、ティム。ゲイリー」とカタカナ英語で手を上げる。
ヨースケがいつものように客からのオーダー待ち、かと思ってたら、近づいてった。おまけに何かを新倉さんに耳打ち、それを新倉さんがティムたちに伝えているようだ。
ティムがヨースケを呼んで耳打ちする。大きく頷いたヨースケがすっとぼけた顔して俺の横を通り過ぎると、唐突に音が止まり、ブーイングが起きる。当然の反応だ。
すると、
「Yesterday」♪ 前触れもなくティムがアカペラで歌い始めたのだ!
皆の顔が俺に集まる!
なんていい奴らなんだ・・・
ヨースケが他の客の間を急ぎ足で回ってる。
歌声は次第に大きく、そして広がり、一つになった!
目の前がぼやけたまま、アカペラYesterdayが終わり拍手が鳴
る。
俺は一言どうしても、言いたくなった。
「みんな!ありがとう!thank you!俺はこの歌が大好きだ・・新倉さん、翻訳お願いします。特に Oh, I believe in yesterday.俺はここを「ああ、俺は過去を否定したりなんかしない」と読み取りたい。自分の過去を否定してたら、これから前に向かって生きていけない。そう思うから・・・みんな今日は本当に素敵なプレゼントをありがとう!」
深々と頭を下げた俺の頭の上を拍手と「Happy Birthday!」が通り過ぎる。
頭を上げて俺はヨースケに言った。
「ここにいる全員にビールを1本ずつあげてくれ。俺のおごりだ!」
直後におきた歓声がこの日最も大きなものだったらしい。ヨースケが、そう教えてくれた。
―― 隕石落下・・・それさえ忘れさせてくれた、ひととき――
今日の好きな曲は、言うまでもなくビートルズの
The Beatles -「Yesterday」です。僕の中のNo1です!
Beatroom7Dさん、 Upして頂いて、本当にありがとうございました。
いつも応援ポチをありがとうございます。
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