カテゴリ:ウルトラマラソン(未)完走記
<集落を歩く>
ごく短い座津武(ざっつん)トンネルを抜ける。狭い歩道は注意を要するが車が通らないので心配はない。宇嘉集落の手前に沢があり、崖から水が流れ出している。沖縄では珍しい風景だ。その付近に小さなバンガローが建てられ、岩手ナンバーの車が停まっている。様子からすると岩手出身の人が気に入って別荘にでもしたようで、とても不思議な感じがした。 10時45分、辺野喜(べのき)集落で小休止。お握り、バナナ、梅干を食べ、オレンジジュースを飲む。そのままベンチで眠ろうとしたが果たせず、再び灼熱の国道58号線をひたすら南下。佐手(さって)と謝敷(じゃしき)は集落内を通ってみた。少し遠回りだが、所々に日陰もあって助かる。建物の陰で涼んでいる老人。いわゆるヤンバル(本島北部の通称)は典型的な過疎地。この辺の現金収入は何なのだろうと考えた。 謝敷では「兄ちゃん、お茶でも飲みな」と屋敷内から声。ここは確か走ろう会の先輩であるT事務長の故郷のはず。「ええっ?」思わず声を出したが、そのまま通り過ぎた。集落の一角に沖縄民謡「謝敷節」の石碑。幹の皮が黄色い染料になるフクギ並木が美しいこの村を讃える歌のようだ。ひっそりとした集落にドブの臭いが漂う。きっと下水処理がなされてないのだろう。 与根には新しいトンネルが出来ていた。歩道も広くとても明るい。それにひんやりして気持ちが良い。思わず走り出す私。古いトンネルは曲がりくねった海沿いにあった。ここは私が沖縄を去った後に完成したようだ。集落の中にまたもや民謡「与根節」の石碑。昔の難しい言葉だが恋の歌のようだ。与根川の上流には職場の演習林があったはず。12時40分、道端でアンパン、ゼリー、チンスコウを食べる。 辺土名は国頭村(くにがみそん)の役場が置かれている最大の集落。名護市からここまではバスが何本か通っているようだ。そしてこの先の過疎地へは村営のマイクロバスを運行しているようだ。村一番の繁華街には飲み屋が数軒連なり、夜はここで村の衆が飲んでるのかと思うと、とても愉快な気持ちになった。 「みちの駅国頭」に「クンジャンサバクイ」の石碑。クンジャンは国頭の現地名。サバクイは元来捌理(さばくり)と呼ばれる琉球王朝時代の村役人の総称なのだが、かつて王都である首里城を建てた時に国頭地方の山林から建築用の丸太を切り出したお祭りの意味に転じている。かつて私も、再現された祭りで木挽きの様子を首里城近辺で見たことがあった。 みちの駅で休憩し、カキ氷とチキアギを食べる。チキアギは練った魚肉を「搗き揚げ」たものでさつま揚げのこと。これが巨大でとても美味しい。小片をガチマヤー(腹ペコの猫)に与えているうちにすっかり元気回復し、意識がはっきりし出した。もしここで休まなかったら、きっと熱中症になっていたに違いない。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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