カテゴリ:ウルトラマラソン(未)完走記
< 栄光のゴールと謎の携帯電話 >
だが私には、寒さよりも剥がれかけたインソールの保護材の方が心配だった。シューズの中で保護材がよじれている。幸い軟らかい素材のため足が痛まないのがせめてもの救い。このクッションをどうしたら元の状態に戻せるだろう。私の左足はこれまでの障害ですっかりアーチが落ちてしまったため、この医療用インソールがないとレースに出るのは無理なのだ。 道の右手に地層が剥き出しになった箇所が見えた。きっと縞模様は八丈富士の火山灰が積み重なったものだろう。記憶を残そうと時々後ろを振り返って八丈小島を眺める。その時後ろから私達に迫って来たランナーがいた。同じ走友会のI藤さんだった。先ほど休んだASで、仙台の人が少し前に出発したばかりと聞き、必死になって追いかけた由。ここからゴールまでの旅は3人連れとなった。 標識の集落名がゴールのある三根に変わった。コースは小刻みなアップダウンを繰り返す。55km地点通過。残り7km足らず。ここまで来れば今日の完走は間違いない。右手に特徴のある神止山が見え出し、左手の眼下に港や集落が見えた。その集落をめがけ坂道を左折。下り切った交差点でSパパが傘を差して立っていた。 そこからコースは海へと下る。アライケ海岸で珍しいもの発見。無数の小さな穴が開いた黒石だ。きっと噴火した際の溶岩だろうと思い、1個拾って2人に見せた。記念に小石を拾うI藤さん。冷たい雨に打たれ緩い登り坂を喘ぎながら登る。曲がり角にボランティアの方がいて、ゴールまでのコースを教えてくれた。ここが59km地点だった。 この朝下った敷石道を最後の力を振り絞って必死に登る。遅れ出したI藤さんが「先に行ってくれ」と弱音。私達を猛スピードで追いかけた疲労が今になって出たようだ。「ここまで来たら一緒にゴールしましょう」とM井さん。2つ目の信号を左折した辺りで北海道のランナーにも抜かれた。次の信号から右折すると最後の直線のはず。最後の苦しみに耐えるI藤さんを2人で励ます。 坂の途中で左手奥に三根小学校が見えた。スタッフの人が何人かいてゴールテープを手にしている。唐突に現れたゴールがとても不思議な感じ。3人が手をつないでテープを切る姿を撮影してもらう。ようやく8時間22分10秒の厳しい戦いは終わった。雨でぬかるんだ校庭を横切り、着替えを置いた公民館へ急ぐ。 濡れた服装のまま温泉へ行こうと言うM井さん。気持ちは分かるけど、まず着替えてから温泉に行った方が良いと私。温泉までは車で15分ほどもかかり、冷えた体のままだと風邪を引く恐れがあるからだ。時間も十分あるため、ここまで来たら慌てる必要は全く無い。「さすが年の功でしたね」と着替えを終えたM井さん。 ようやく落ち着いた時、F田さんの帽子と携帯電話をスタッフの机で発見。だが彼の持ち物が放置されている理由が分からない。遅れた女性陣を迎えに行ったのか、それとも何か突発事故でも生じたか。そのうち宮城UMC仲間のK藤さんも到着。H多さんはもっと先に着いたと彼女。ますます深まる謎に首を捻る仲間達。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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