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椿荘日記

椿荘日記

お雛様とマリ

さて三月三日は桃の節句、雛祭りですね。
それに因み、お雛様のお話を致しましょうか。

マリも自分専用のお雛様を持っていました。でも今はありません。
その昔、雛人形は、姉が祖母に買ってもらったものが実家にありました。
小さい木目込みの人形で、ふっくらとしたお顔の優美な、それは可愛らしいお雛様だったのですが、姉妹とは厄介なもので、まだ子供の時分ですから、所有権を巡り(両親と祖母は共用だと申しておりましたのに)、お人形達を分けたり(?)、其々の道具を互いに触っては喧嘩になり、余りの騒ぎに、ついに祖母と母が、母方の家に伝わる古い雛人形(江戸時代のものです)をマリ専用にとくれました。
マリの母方の家は、外様ながら大名家でしたが、祖父の代に完全に没落し、それでもかなりのお道具類が残っていた様です。そのお雛様も、そういった品々の一つだったのでしょう。

朱塗りの立派な御殿に座る、何故か2対の男雛、女雛で、金色の宝冠に気品のある細面の美しい顔、古びてはいますが朱地に刺繍が施された、豪華な装束のお雛様で、ただ残念なことに、鼻を鼠に齧られていて、子供心に、大きくなったら直してあげようと、寧ろ愛着を湧かせたことでした。
すっかり気に入り、「私のお雛様」と呼んで、毎年、お雛飾りを描いた「錦絵(母が生まれた時、親戚から贈られたそうです)」のお軸と共に取り出しては飾るのが楽しみでしたが、残念なことに何回かの引越しの間に、無くしてしまったのです。幼いマリは、随分がっかり致しまして、泣いたことを今でも覚えています。

マリの子供は男の子ですし、縁はなかったのですけれど、やはり自分のお雛様が欲しくて、新しいお人形の売り場や、骨董屋を覗くのですが、あのようなお雛様は見つかりません。
やはり、マリのお雛様はあのお人形だけだったのでしょうか。
毎年桃の節句が来ると、思い出します。




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