カテゴリ:素晴らしき銀幕のバイプレイヤーたち
チョイ役だけど、名演技や独特の雰囲気で、変に目立ってる役者さんっていますよね。
かつての蟹江敬三氏は、まさにその典型なのではないでしょうか。 劇団青俳を経て、60年代後半にスクリーン・デビュー。 20、30代はほとんど、チンピラ、囚人、殺人鬼といった悪役ばかりを演じていました。 モイラが蟹江氏の顔と名前が一致したのは、「太陽にほえろ!」で、 彼が東南アジア帰りのヤクザ(?)を演じていた時です。 麻薬密輸か何かで、相棒のヤクザと二人で逮捕され、 七曲署で取り調べを受けるのですが、 蟹江氏は何度も苦しそうに、「べ、便所行かしてくれよ‥‥」と訴えます。 ゴリさんや殿下は、「しょうがねえなあ」という顔をしますが、 蟹江氏の「便所行かしてくれよ」の訴えがあまりにも頻繁で、おまけに彼がひどい吐き気まで催すので、 「これはおかしい」と思って病院に連れて行ったら、なんとコレラに感染していたいう役どころ。 このお話が放映された頃、東南アジアから日本にコレラ菌が持ち込まれ、 感染した人たちが病院に担ぎこまれ、うちお一人は確か亡くなり、 一種のコレラパニックが日本列島を直撃していたのです。 悪事を働いたものの、あっさり警察に捕まった挙句に、コレラで七転八倒する蟹江氏の迫真の演技は、 今でも強く脳裏に焼きついています。 「この人こそ名脇役だ!」と思わせたのが、'79年の柳町光男監督の「十九歳の地図」のダメ男・紺野役。 根っからの悪人じゃないんだけど、意志薄弱の根性なしで、 10代20代の若造たちからも軽く見られ、恋人といえば、 労務者相手の醜い年増の娼婦(沖山秀子が熱演!)。 そのくせちょっとインテリぶってて、愛読書は中原中也の詩集。 「どういう具合に生きていいのか、わからないなあ‥‥」が口癖で、 どうしようもない、流されるだけの中年男を、見事に演じていました。 あと印象に残っているのは、80年代前半にNHKで放映した山谷を舞台にしたドラマ(題名忘れた)で、 多重債務から逃げ、オカマバーのホステスとして隠れるように生きているダメ男の役。 それはそれはおぞましい女装でした。 でもいつしか蟹江氏は、悪役から善人役に転向してしまいましたね。 ご子息の一平さんは、子どもの頃、お父さんが悪役としてテレビに出た翌日、 学校の友だちから、「お前の父ちゃん、きのう人殺してたな」と言われるのが、嫌だったとか‥‥ だけどモイラは、どちらかと言えば、今の人の良いオヤジさん役の蟹江さんより、 変にクセのある悪役だったり、ダメ男役だったころの蟹江さんのほうが、好きなんです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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