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Mar 7, 2020

実質的な主役はエノケン★「虎の尾を踏む男達」（1945年　東宝）

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カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

こんばんは、映画狂のモイラでございます。

今宵の名画は、黒澤明監督初の時代劇…
「虎の尾を踏む男達」です。

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歌舞伎「勧進帳」を題材にした作品で、
シーンは安宅関近くの山の中と、安宅関だけ。
兄・源頼朝に追われる判官・義経（岩井半四郎）を守るため
家来の武蔵坊弁慶（大河内傅次郎）らは、山伏に化けて
加賀の国は安宅の関所を突破しようとするのだが、
彼らに雇われた強力（榎本健一）が
早くも山伏姿の義経に違和感を抱き……

♪旅の衣は鈴懸の……で始まる歌が、まず良かったです。
大河内傅次郎扮した弁慶が、安宅関で富樫（藤田進）と火花を散らせ、
何も書いていない巻物を開いて、これが勧進帳だと言わんばかりに
高らかに歌うように読み上げるシーンが良かったですね。
それと、強力に身をやつした義経の正体がバレそうになると
弁慶が金剛杖で主君・義経を打擲するシーンも。
それから、義経を演じた岩井半四郎、顔はほとんど見せませんでしたが、
所作のひとつひとつが美しかったです。
さすが歌舞伎役者で、岩井友見、仁科亜季子、仁科幸子のパパですね。

しかし、一番の見どころはやはり、
原作には出て来ない、剽軽者の強力役のエノケンの芝居でしょう。
彼は本当に生まれついての喜劇役者ですね。
主役の大河内傅次郎や藤田進を、完全に喰ってましたもの。
この映画の実質的な主役は、エノケンですよ。

「歌舞伎や古典はちょっと苦手……」という方に、ぜひおすすめの秀作です。

★黒澤明作品あれこれ★