ちょっと元気
室生(むろう)犀星詩集改版を読んでいます。私には珍しく、詩集です。このブログに遊びに来てくれる方々を思い出した詩を一篇だけ抜粋します。春から夏に感じること自分は子供の時代からよく小さな生きものを救うた水に落ちたものや生命を害されようとした小鳥などを救うたそんなとき自分は「春になったらお礼にこいたくさんお礼をもつてこい」と言って放してやつた自分はそんなときに大概美しい気がしてゐたどんな最微な生きものにも深い運命をになつた使命があるにちがひない何かしら天上のものと通じたものを持つ生きものにはきっとその魂に刻まれた愛をかへしに来るときがあるにちがひない自分はいつも然う思ひながら這ふものを踏むまいとしてきたない道を歩いた私はいまでもその心を失せきれないでゐる目で生きてゐるものを害してはならないと信じる小さな生きものを一つ救うた日はきっとよいことがあると信じる自分の対世間的な激怒の折折にこんな小さな事にも気がやさしくなる私が救うた生きものがみな今やつてきて自分に酬いてゐてくれるにちがひないそのために今自分は幸福であるのにちがひないこのやうに心が平和であるのにちがひない。