山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

2021/05/21(金)18:24

貞九郎の扮装の実説

話のタネ本 東堀一郎氏著(7)

貞九郎の扮装の実説話のタネになる本昭和49年4月5日 20版発行東堀一郎氏著   株式会社 光文書院話のタネになる本   一部加筆 山口素堂資料室 仮名手本忠臣蔵の五段目にでてくる定九郎は黒羽二重の肩付に朱鞘の大小刀という扮装です。これは初代中村仲藏の工夫によるものとして、講談や小説で有名ですが、実説は五代目市川団十郎の創意になるものです。 もともと定九郎のこしらえは、文楽の仮名手本忠臣蔵の定九郎人形のドテラ姿を踏襲していて、上の役は端役とし、観客の方でもこの幕は弁当の時間と称し、ろくに舞台は見なかったそうです。これに対し五代目団十郎は観客をひきつける型の改革を企て、黒羽二言に朱鞘の大小刀という扮装を考えましたが、父の四代目団十郎(随念翁)は時機が早いとして、その改革を延期させました。たまたまその話の席に居合わせた中村仲藏は、この話を記憶していて、団十郎の許可を得て明和三年の秋、市村座で定九郎を勤めたとき用いて大好評を博しました。 仲藏の演技もさりながら、タイミングも良かったといえ、その時機を考えていた随意翁はさすがに名優の見識といえます。ちなみに講談などでは、仲藏が役づくりの工夫に困り、妙見様へ祈願して満願の雨の日、黒羽二重に朱鞘の雨にぬれた浪人を見、それを写したというのです。物語作者の創作で、有名な団十郎の創意とするより、下っ端役者の伸蔵の工夫とした方が面白いからです。

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