牛乳酒非馬乳酒
公孫竜の「白馬非馬」論は詭弁として知られるが、加地伸行氏によれば色の認識と形の認識は同時に起こりえないことを意味する認識論的な命題として理解すべきらしい。それと比べれば、「牛乳酒非馬乳酒」は誰からも詭弁だなどとは言われないだろう。牛乳酒は馬乳酒ではないのだから。馬乳酒を知らない読者のために少しだけ解説すると、馬乳酒はモンゴルなどで作られる、馬乳を発酵させた飲み物だ。味はほとんど「飲むヨーグルト」で、アルコール度数は1%かそこらである。だから本来下戸の僕でも安心して飲める。記録(日記)によると僕が初めてモンゴル料理を食べたのは2007年7月のことである。当時、僕はモンゴル語を習っていて、その勉強グループで当時開店まもないモンゴル料理店に行った。馬乳酒を初めて飲んだのも、そのときだ。チベットのチャン(大麦から作った醸造酒)よりも僕にはおいしく感じられた。その後もたまにそのモンゴル料理店で食事をしたときには、馬乳酒を飲んだ。しかしモンゴル語を教えてくれていた先生が中国(内モンゴル)に帰国して以降、モンゴル料理店に足を運ぶ機会がめっきりなくなった。久し振りにその店に出かけたのは、2013年8月だ。モンゴル語の先生が短期間ではあるが再来日したのを機会に会食をすることとなった。むろん再会が最大の楽しみではあったが、僕は久し振りに馬乳酒が飲めることも楽しみにして出かけた。ところが馬乳酒がメニューから消えていた。そして昨日。当時の勉強グループのメンバーも含む数人で、またも久し振りにモンゴル料理店で食事をすることとなった。馬乳酒が復活していることを期待してメニューを開いたが、復活していなかった。だが、その代わりに「牛乳酒」の文字があった。全員が最初に牛乳酒を注文した。店のマスターが「今日は20度のと28度のがあるが、どちらにするか?」と選択を促す。えっ? 20度? 28度? ちょっと僕には強すぎる・・・。幹事は20度と指定して注文したが、僕の分がやはりカウントされたままだった。かつて飲んだ馬乳酒はまさに「飲むヨーグルト」そのものの白色をしていたが、今回出てきたのは、氷とともに無色透明の液体が入ったグラスだった。メニューの(眼鏡を外さなければ老眼の目には読めないような小さな文字で書いてある)説明を読むと、発酵させた牛乳を蒸溜させたものらしい。少しだけ飲んでみる。やはり僕には強い。他のメンバーは比較的早く飲み干して、別のアルコール類を注文し始めたが、僕はチビチビと3分の1ぐらい飲んだあと放っておいた。そのうちに中の氷が全部溶け、その結果アルコール度数が低くなったので、少し飲みやすくなった。それでも別に注文した水と交互に飲む必要があった。自覚的にはほとんど酔いを覚まして帰宅したが、酒飲みが発するにおいが自分の身体から出ているのに気づいた。というわけで、結論。牛乳酒非白馬乳酒(牛乳酒は白い馬乳酒にあらず)。よろしければクリックください。人気ブログランキングへ