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milestone ブログ

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ウソ -6

~疑惑~

「エリカ、どうしてここに?」

私は一瞬びっくりした。病院でいなくなった時にもう、家に帰っているものだと思っていた。
あれだけ待たされたら自分が置いてけぼりになったことはわかるはずだ。
だが、普段のエリカだったら連絡をしてくると思っていた。怒っているのかも。
私は単にそう思っていた。怒っている時のエリカは何を言っても聞かない。時間をあけたらまた普通に戻っているからまた時間をあけて連絡をしようと思っていた。
いや、今目の前にエリカがいるからそういう言い訳を思っているだけなのかも知れない。
だが、どうしてエリカがここにいるんだ。
私には理解が出来なかった。この部屋に来るには鍵を持っているか、中にいる人間がインターフォンで誰が来たのかを見てロックを解除するしかない。
今、この601号室にいるのは高見だけのはずだ。
そういえば、高見はどこに行ったんだ。
高見を探している中で私よりも行動を先に起こしていた人がいた。
小林さんだ。

「なんで、あなたがかおりの部屋にいるのよ。
 今すぐ出て行って」

ものすごい剣幕で小林さんはエリカにそういい捨てた。少しあごを上げて上から下をみる小林さんを見ていると私が言われていなくて良かったと思った。
だが、エリカも負けていなかった。

「あなたには関係ないでしょ。それに、私あなた嫌い。ゆうをちょっと連れて行くとか言って
 全然帰ってこないし。この嘘つき」

小林さんより背の低いエリカは下から小林さんを見上げていた。
見たことがないくらい眼光が鋭いエリカ。
沈黙のあと、二人が言い争い始めた。
私は二人を横に部屋の中にいるはずの高見を探した。
リビングのソファの下で横たわっている影が見えた。高見だ。
まるで気絶しているかのよう、倒れていた。
まさか、死んでいるのか。私は、おそるおそる近くにいった。

「おい、高見」

私はかけよろおうとしたら、エリカが話してきた。

「なんか高見さん、体調が悪くて横になっているみたいよ。 高見さんにここまで入れてもらっ
たの。 でないと鍵のない私はここにこれないでしょ。
 でも、ゆうひどい。 ちょっと席はずすって言ってずっと戻ってこないんだもの」

エリカがそう言っていたが、わたしにはなにかひっかかっていた。
何かがおかしい。高見は確かに私がこの601号室を出る時も体調が悪そうだった。頭を抱えてうずくまっていた。だが、意識はあった。
あの状態で本当にエリカをここにあげるだろうか?
それに、小林さんに言われて気になっていたことがあった。
そうあの疑問、

『どうしてすぐに会いにこれたのか』いや、『私の会う前にどこにいたのか』

私はエリカに聞いてみた。

「なぁ、エリカ。ちゃんとこっちもどうしてエリカをこんなに待たせたのか説明するよ。
 ただ、ちょっと説明する前に教えて欲しいことがあるんだ。確かに今どうしてここにいるのか
 もものすごくきになるんだけれど、もう一つ気になることがあるんだ。
 今日、私と会う前はどこにいたんだ。
 家じゃないよな。家だとあんなに早くここにこれないから。
 教えて欲しいんだ。私と会う前にどこで何をしたいたのか」

私は話しながら、自分の声がやけに低く冷静なのがわかっていた。
エリカはなにかを隠している。私は自分の声の後に明らかにエリカの様子の変わったのを見たからだ。

「それは、、、
 家よ。ゆうから連絡があって用意してきて、それから着たわ。
 別に早かったのはたまたまよ。 それがなにか?」

エリカが答えてすぐに小林さんが話し出した。

「じゃあ、あなたは連絡が来る前から出かける用意をしていたの。
 一体どこに?
 それとも、あなた今日ゆうから連絡が来るってことわかっていたんじゃないの?
 だから早く用意が出来た。
 それとも、ホントは家にいたんじゃなくて違うところにいたんじゃないの?」

エリカの目が一瞬大きく開いて、そして体が震えだした。
そして、細く消えそうな声でエリカは話し出した。

「ひどい、まるで私がライヤーみたいにはなすのね。 どうして私がライヤーじゃなきゃいけな
いの。 私がライヤーだっていいたいの。 もし、私がライヤーだったら、あんなヒントなん
か書かずに。かおりなんかゆうの目に付かないとこに追いやるわよ」

エリカは泣き出した。
だが、小林さんはエリカ泣いたことで余計にスイッチが入ったのか追い立ててきた。
小林さんの目に力が入ってくる。

「かおりをどこにやったのよ」

小林さんの声が響く。ただ、エリカは泣いているだけだった。
私はその光景を見ながら考えていた。確かに、エリカが犯人だとライヤーからのメールはしないだろう。いや、なにか他に意図があるのかもしれない。
それとも私はなにかを見落としているのか。
エリカがライヤーであって一番助かるのは誰だ?いや、エリカは確かになにかを隠している。
「痛~い」
鈍い音ともにエリカがこけて、カバンから携帯が出てきた。その携帯に残っている画面。
そう、忘れることなんて出来ない。
高見の携帯の待ち受けになっていた、かおりの指の画面。

「エリカ、これは一体なんだ?」

私の声が怒気を帯びていたのがわかる。今までにエリカにそんな口調で話したことなどなかった。
付き合っていたときでさえ。
エリカは一瞬固まって、そして口を開いた。

「わかった。すべて話すから。
 でも、一つだけ約束して。
 絶対に信じてほしいの。
 だって、信じてもらえないって思ったから、いえなかった」

エリカはそうして、隠していたことを話し始めた。けれど、そのことは何の救いにもならなかった。
すくなくても私には。


~疑惑~

エリカの話しはにわかに信じがたかった。
エリカのもとに少し前からメールが来ていたという。
そのアドレスは私の携帯に一番最初に来たアドレスだ。フリーメールだが、ライヤーとだけはわかる。後はxxxxで埋め尽くされている。
エリカは話し続けた。

「はじめは、何変なの~って思ってたのよ。 でも、ゆうのことすごくわかっていて、
 怪しいけれど、でも、信用できるかもって思ったの。 そして、昨日のメールがこれよ」

エリカはそういって携帯に入ったというメールを見せた。
そこには、こう書かれている。

「愚かなお嬢さん
 明日であなたが想っている『ゆう』 との関係が変わるよ。
 明日昼にあなたの大事な『ゆう』からメールが来るよ。
 今から会わないかって感じのね。
 今日が転機だよ。
 望む世界か、望まない世界かはわからないけれどね。
 変わるのは確かさ。
 後は愚かなお嬢さん次第。
 ライヤーより」

差出人はライヤー。また一緒のメールアドレスだ。私はだがそんなことでは納得できないことがあった。

「その写真はどうしたんだ?」

言葉はまだ怒気を含んでいる。私は今までエリカが隠していることを、ウソをついていることをみぬけなかったの。いや違和感はあった。でも、それは今に始まったことでもなかったから気にもしなかった。気にしないようにしていただけなのかも知れない。
だが、この画像。
待ち受けに普通するのならこんなグロテスクなものは選ばない。
そして、高見の携帯の待ち受けにも同じ画像があった。誰かが爆破前に写真で取って携帯に送らない限りこんな画像が広まるはずがない。
だが、エリカはそれにも淡々と答えていた。

「それも、メールが来たの。 画像つきだったからびっくりしたわ。 このメールよ」

エリカはそういって、また携帯を見せてきた。

「愚かなお嬢さん
 賽は投げられたよ。
 そして、動き始めた。この画像がその証だよ。
 でも、不戦勝なんかじゃあなたの望む形には永遠にこない。
 これはでも、あなたが有利な証拠さ。
 愚かなお嬢さん
 ライヤーより」

そのメールに添付はついていた。そう、携帯はそのままになっていたという。
私はわからなくなっていた。いや、エリカが言っていることは正しいのかもしれない。

「少し、考えさせてほしい」

私はそういって601号室を出た。非常階段を登る。違う世界が見たかった。屋上までは距離があったが別に苦にならなかった。いや、むしろ体を動かしている方がどうしてか楽だった。
屋上の扉は鍵をかざしたら普通にあいた。
どうやらこのマンションの住人なら誰でも屋上は上がれるらしい。
そして、このマンションの屋上へ上がった。たばこを取り出して外を見ていた。
そういえば、たばこをゆっくりもすえていなかったな。
私は金網にもたれながらマンションから見える景色を見ていた。
少し丘になっているところに立てられているマンション。この高さだと色んなところまでが見える。
私のマンションも見える。そういえば、小林さんのマンションも見える。
この近くに住んでいないのは高見だな。高見の住んでいるほうを見るが、ぜんぜん見えない。
当たり前だよな。
引っかかっているセリフが頭をよぎる。

「だから早く用意が出来た」

小林さんが言っていたセリフだ。
よく考えるとおかしい。なんで、高見はすぐに来れたんだ。家も遠いのに。
そして、もうひとつ。なんで小林さんはすぐ近くに住んでいるのに。
時間がかかったんだ。
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。

「ここにいたのか?」

ふいに声がしたびっくりした。振り返るとそこにいたのは高見だった。
少しフラフラしている高見は本調子ではないのだろうと思った。
だが、手にはタバコを持っていた。かおりの部屋は灰皿がない。
それに、かおり自体がたばこを吸わないから部屋で吸うことを許さない。
だから高見も屋上に来たのだろう。
私はそう思った。
私の横で景色を眺めている高みに話しかけた。

「大丈夫なのか?」

さっきまで横になって寝ていた、いや気絶していたのかも知れない。
その高見がここにいる。いや、あの二人は下で何を話しているんだろう。かおりの部屋で。
小林さんがいるから部屋がむちゃくちゃになることはないだろう。
そんな暴挙にもしエリカが出たら強制的にエリカは外に連れ出されるだろう。
私は大きくたばこを吸い込んだ。高見が話しかけてくる。

「ああ、ちょっとくらくらしてな。非常階段で倒れこんじまったよ。
そして、気が付いたらかおりの部屋で横になってたよ。
5月とはいえ日が長くなってきたな」

空を見上げながら高見はそう言った。だが、夕焼けは徐々に暗い空へ変わってきている。
もう、暗くなってきている。

私は高見に切り出した。

「今日、高見はここに来る前はどこにいたんだ。いや、ちょっと考えたらすぐに来れたからな」

私はひやひやしながら聞いた。

「ああ、ちょっと外にいたんだ」

そういった高見に私の口は止まらなかった。

「よかったらそのときの話を聞かせてくれないか?」

いいながら私の中で疑問が疑惑というものに変わっていった。



~高見とかおり~

高見の話しはこうであった。
今日は仕事のため、会社に行っていた。
そう、だからすぐに駆けつけることができたと。
確かにあの研究所からならば、ここまで遠くない。

「ちょっと明日までにまとめて起きたかった資料があって、朝から研究所にいたんだ」

高見は説明してくれた。確かに、そうかもしれない。でも、何かがまだ聞くべきことがある。
私は自分の中でまとまっていないだけなのかもしれないと思うようにした。

「後、さっき5階でこの写真があったんだ。 この写真に見覚えはあるか?」

私はおそらく聞きたいことはこれではないと思っていたが、古い館を背に高見とかおりが写っている写真を見せた。一瞬高見は固まってから、話し出した。

「この写真。さっきかおりとは血がつながっているということは伝えたと思う。 その事実を知ったのがこの館なんだ。 私の父親の話をしないといけないな」

高見の話は長かった。

高見自身古くからの名家である。いうならば、資産家である。そして、高見の父親は若いときに身分違いの恋をしたそうだ。そのときの相手がかおりの母親。
その段階で想像はついた。高見の父親ができたことは一つの館を渡したこと。それがこの写真の館だという。

「かおりにこの館に連れてこられたときに、気がついた」

高見はそういった。そう、二人の恋の終止符となった場所がこの館だそうだ。
 
「だが、なんでこの写真が5階に?」

疑問を持っていたのは高見であった。

「ま、悩んでも始まらないしな。そろそろ下に戻ろうか」

高見はタバコの火を消してそういった。 だが、私にはまだ聞くことがあった。

「高見、いつから記憶が戻ったんだ?」

そう、事故でここ数日の記憶が曖昧であったはす。なのに、今日の午前中のことは覚えている。
つまり、すでに記憶が戻っている。

「ああ、さっき非常階段で倒れたときに記憶が戻ってきた。そして、気がついたら6階の部屋にいた。 起きたときはまだぼんやりしていたけれどな」

高見がそういった。

私は聞いた。事故にあう前に何を見たのか。
それと
「答えはそ・・・」
のメモ。

だが、高見の答えは私には納得できるものではなかった。



~高見が見たもの~

高見はタバコに火をつけながら話し出した。

「あの時、ちょうどあの場所でタバコをすっていた。 火をつけて、一瞬何か動いたと思った。
 そう、非常階段に誰かいる。 誰がいるのがでもちゃんと見えなかった。 だから、道路の中
央に出ていったんだ。 そしたら、かおりの携帯から電話があった。 声はボイスチェンジャ
ーで変えられていた。 その時に車にはねられたんだ」

高見の話しはそれで終わった。

「あのメモ
 そう、『答えはそ・・・』はいったい」

私は確かにかおりの携帯に電話するように伝えたのはわかった。だが、メモはいったい。

高見はそのメモを見て話し出した。

「これは、事故にあって、倒れる間際に見えたもの。 それがこの事件の解決につながると思っ
た。だが、『そ』と書いた記憶はない。これは、文字の途中なんだ。 「さんずい」の途中で、書きたかったのは、「演技」という文字だったんだ」

高見はそういってタバコを投げ捨てた。

「ま、信じる、信じないは任せるよ。 とりあえず、ちょっとまだ仕事が残っているんだ。
 これからまた研究所に戻らないといけない。 何かあったら携帯に連絡をしてくれ」

そういって、高見は屋上から出て行こうとした。

「高見、最後にひとつだけ。 さっき非常階段で倒れる前にエリカをマンションに入れたのか?」

エリカを信用していないわけじゃない。でも、気になっていたことだ。

「ん?てっきり、私は3人でマンションに来たと思っていたが、違うのか?」

高見はそういって屋上から降りていった。
~再びエリカ~

私はしばらく考えていた。
高見とエリカ。言っていることが食い違っている。いったいどっちが本当のことを言っているんだ。それとも、何かまだあるのだろうか?
私は悩んでいても何も変わらないから、私はエレベーターで下におりた。
6階。そこにいたのはエリカだけであった。エリカはリビングで雑誌を読んでいた。

「小林さんはどこにいったの?」

私はそこにいたエリカに声をかけた。

「知らない、帰ったんじゃない?」

そっけなくエリカは話す。ここはエリカの家でないのに、くつろいでいた。
ものすごくいやだった。こんなことを私は望んでいない。


「何しているの?」

私はエリカに複雑な思いをもって話した。
かおりの部屋をそんな風に使わないでほしい。

「何って、ゆうを待っていたのよ
 もう、いいでしょ。いきましょ」

そういって、エリカは部屋を出ようとした。だが、いったいここを出て私にどこに行けというんだ。私はまだ動くわけにはいかなかった。

「エリカ、ちょっといいかな」

私は今抱いている疑問をエリカにぶつけようと思った。だが、何から聞けばいいのだろう?
私はまずは些細な質問からしていった。

「今つけている香水、エンジェルハート。
 それっとどこで手に入れたの?」

そう、いつもエリカがつけていた香水は違ったはずだ。それに、この部屋に一面のエンジェルハートもあった。無関係とは思えない。でも、本当に聞きたいことはこれじゃない。
それも解っている。でもいきなり本題に入るのが怖かった。私はエリカが話しやすいことから質問していこう。私はそう決めた。
私がエリカをずっと見つめているとエリカは話し出した。

「え、ああ、かおりからもらったの。
 もらったというか、なんというかね」

歯切れは悪かった。だが、かおりは確かにつけていたかもしれない。
赤いハート型の香水。そういえば、見たことがある。

「そうなんだ。
 んで、このマンションに来るまでどこにいたの?」

そう、それもひとつの疑問だ。でも、まだ本題じゃない。
心臓がどきどきしているのが解る。そう、エリカのウソを暴いている。私はどこかでエリカがウソを付いていると確信していた。
小林さんと違って近くに家があるわけでもない。
それに、エリカから連絡もなかった。
どこかで何かをしていたと考えるほうが不思議じゃないのかもしれない。

エリカはが話す。

「うん、ちょっとね。用事があったの。
 それより、いつまでもここにいてるのはいや。
 早く行きましょ」

話をはぐらかしてきた。いったいこの間に何があったというんだ。
何かを隠している。そう感じた。
だが、どうやって聞けば話してくれる。私は考えていたが、思いつかなかった。

「ねぇ、なにだまっているの?」

エリカが話しかけてきたときに、いきなりテレビがついた。
そこに映っていたのはエリカだ。
今より若い。大きな瞳。変によそよそしく撮影している人と話しながら歩いている。
歩いている景色はよく見た景色。
そう、私が昔住んでいたアパートだ。
すぐに場面が変わる。私の部屋だ。また場面が変わる。
次はユニットでエリカが縄で縛られている。
まるで今日ライヤーから送られてきたかおりの画像そっくりに。
AVビデオ
すぐにそれとわかった。
私と付き合っていた時に、こんなことまでしていたのか。
夜働くだけじゃなく。
私はどんどん呆然としていった。いや、何かが吹っ切れたかも知れない。
目の前にいるエリカを私はちゃんと見れなくなっていた。
エリカが震えながら話し出した。

「なんで、ここにこれがあるのよ」

今までとエリカは口調が変わっていた。テレビの電源を切ろうとする。
だが、上手く切れない。映像は流れ続けている。
恍惚の表情を浮かべるエリカの顔が画面に流れる。

「これはいったい何?」

答えなんてわかっている。ただ、自分の知りたいという気持ちはとめることができなかった。

エリカが話し出した。

「わかった。 話すよ。でも、ゆうこれだけは信じて。私、ゆうのこと好きよ。
私、前に夜の世界で働いていたの。そのときに、ちょっとホストにはまって、
気がついたら借金ができていたの。それで、借金の返済で一度ビデオに出たの。
それがさっきのビデオよでも、後悔しているの。だから、ゆうと別れなきゃって思ったの。
でも、やっぱり私ゆうが好き。こんな女だといや?」

そう、話してエリカは一筋の涙を流した。私は一瞬エリカを抱きしめそうになった。
涙に弱いのかも知れない。だが、その瞬間、携帯が震えて、動きが止まった。

「そうだよね。こんな私じゃだめだよね。でも、信じて。私、ライヤーではないから
 それと、さっきのビデオで思ったかもしれないけれど、かおりの写真をみて、私はまっさき
にこのビデオを思い出したわ。だから、あせったの。その確認で私、このとき撮影した場所
に行っていたの。そう、あのビデオはゆうがいないときにあのアパートでとったのよ。
 すごい罪悪感があった。でも、私にはどうすることもできなかったのよ。
 わかって。これがさっきの答えよ。そこにはかおりいなかったから」

エリカはそういって部屋を出ようとした。

「最後に教えてほしい。どうしてこの6階に来れたんだ?」

私は多分かける言葉は違っていたのかもしれない。
でも、口から出たのはこのセリフだった。

エリカは、かばんからポーチを取り出した。

「これ、昨日かおりのを間違えって入れちゃったんだ。
 その中に、香水も、ここの鍵もあったの。
 だからよ。だって、私がここに鍵持っているってしったら、真っ先にライヤーだと思われる
もの。でも、私がライヤーだったら、こんな回りくどいことしないわ。
 だって、まるで何かに気がついてほしいみたいなんだもの
もう、ゆうとはこれでさよならだね。」

そういって、エリカはマンションを出て行った。
多分、もう私からもエリカに連絡はしないだろう。おそらくエリカからも。
私は自分の携帯に来たメールを見てそう思った。
そして、私は徐々に気が付いてきた。ライヤーが誰なのか。
全ての疑問は徐々に確信へと変わっていった。


~メール~

私の携帯に来たメール。差出人は 小林さんだ。
そして、メールの内容。

「私がゆうにかおりのどこが好きなのって聞いたときのこと覚えてる?」

内容よりも、あのタイミングでこのメールが来たことのほうが私には不思議だった。
気にしすぎなのだろうか。

私はそのときのことを思い出した。




「ねえ、ゆうはかおりのどこが好きなの?」

けだるく小林さんが話す。でも、顔は笑っていても目は笑っていない。
私はでもそのときはその目にも気がつかなかった。
私はかおりを好きになったのはギャップがあったからだ。
仕事をしていたときもそうであった。

「もう一度確認するね。準備は大丈夫なんだよね」

かおりはあのイベントに際してほぼ毎日確認してきた。

「大丈夫だって。もう、何回も確認しているから」

そう、こういう些細なギャップからかわいく感じたんだ。
それを小林さんに話したら、

「それだけ?じゃあ、逆にかおりのいやなところを見たらどうなの?
 別れるの?それとも、それもギャップだって受け止められるの?」




そう、そのときは何も思わなかった。けれど、これには意味があったのだろうか?
私は確認のため、非常階段から5階に下りた。私の想像が正しければ、5階に今ライヤーがいるはずだ。
私は非常階段を下りて、5階の部屋を開けた。
何もない部屋。ただ、今回はひとつの書類だけがあった。
その書類は、私の部屋に在るべきものだ。
書類は今仕事で苦しんでいること。そして、私がかおりにプロポーズをしたきっかけでもある。
そう、とある事業家から結婚式のプロデュースを依頼されたもの。
ただ、事前になってキャンセルをされたため、今宙に浮いている企画である。
確かにキャンセル料はもらっているが、多くの業者に無理を言って用意をすすめた。
会場にはキャンセルができない。
そう、結婚式を誰かがその場所で挙げないといけないのである。
その書類がここにある。ああ、そういうことか。
私は話しかけた。ここにいるはずのライヤーに。

「もう、いいよ。ここにいるのはわかっているから」

そう、ライヤーはこの5階と6階をいったりきたりしているはずだ。

「いつから気がついてた?」

そういって、奥から出てきた。

「どうしてこんなことをしたんだ?」

私はできるだけ落ち着きながら話そうと思った。
そう、出てきた人物が私の予想とは違ったからだ。



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