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『或る「小倉日記」伝』松本清張著
短編小説集。 「小倉日記」は森鴎外が小倉にいたときの日記で、森鴎外全集が発刊された後に、一番最後に見つかったものらしい。 小倉は福岡県北九州市にある地名で、「小倉日記」っていうお菓子もあるらしいんだけど、関東出身の私はいっつも「おぐら」って読んじゃうし、そうタイピングしています。 ![]() 『或る「小倉日記」伝』は小倉にいた時の鴎外を知る人を探すっていう、障害のある青年の話。 そんなの聞いてどうするの?ってバカにされながら、体を引きずるように、鴎外に関係のある人、手紙なんかを探して歩く。 結局、鴎外の子供(長男だったけかな?)の家から「小倉日記」はみつかるんだよね。(なんだそりゃ!!っていうオチ。) それから、「断碑」「石の骨」「笛壺」は、別々のお話なんだけど、考古学に没頭して苦労する人の話。 「断碑」はそれまで、弥生時代の土器と稲作などの文化と結びつけた研究はなく、その研究、学会誌の発行など、貧乏をし、苦労した人の話。 あら、今では弥生と言ったら、稲作ってくらい、誰でも知っている常識なのに・・・と思った。 「石の骨」は学位がないためにバカにされながら、それでも発掘して、いいところまで認められながら、学閥・派閥の中で淘汰されていく人の話し。 今なら科学の力で何年前の骨かなんて、すぐに証明できるんでしょうけどね。 「笛壺」は20年の平安時代の研究も妻子もすべて捨てて、愛人の元へ行く学者の話し。 この人の愛人が「『笛壺』の穴に竹筒を差し込むの?」って言ったらしい。 それまでは、音を出すつぼだと思われていたみたい。 つまり、「笛壺」っていう名前の楽器なので、「竹筒をさして、吹いて音を出すの?」っていうのが愛人の質問だったんだけど、 実は竹筒をさして、樽から酒が出るようにするように、土器の真ん中から酒が出るようにしたものだってことに気付かせてくれたっていう話し。 笛壺=はぞう 和歌山県立博物館より 「菊枕」は美術教師と結婚して、田舎暮らしで貧乏に耐えられず、俳句で認められたいと、のし上がる女性の話し。 俳句で良いところまでいくんだけど、最後には気が狂っちゃうんだよね。 この短編集には、全体的に貧乏の話しが多い。 貧乏のくせに、愛人関係の話しも多い。「喪失」 金もないくせに愛人を作り、さらにその愛人に嫉妬して暴力振るうってどんだけカス?! 博打みたいな商売で成り上がり、愛人(芸者)を作り、商売に失敗して夜逃げする父を持つ息子の話し。「父系の指」 時代もあるんだろうけど、気がめいる話しが多かった。 でも、実際のモデルがいる話が多いらしく、今では常識と思われていることを証明しようとして、苦労して研究して、貧乏していたんだな、と思うと胸が痛かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.11.08 18:34:58
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