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ブログ版 南堀江法律事務所

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Bar UKからのお知ら… New! うらんかんろさん

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2006/07/31
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カテゴリ:判例、事件
JR西日本の脱線事故について。私自身は全くの第三者ですが。
事故で亡くなった方の冥福をお祈りするとともに、遺族の方の心情はお察しします。またJRには事故再発防止に向け全力を尽くしてもらうべきことは当然です。
今回は、この件に関して、私が何となく疑問に思っていることを書きます。

疑問とは、1.遺族補償がなぜこんなに進んでいないのかという点と、2.遺族への説明会がなぜこんなにもめているのかという点。もし私が遺族の立場ならどう思うかわかりませんが、部外者的観点から見ると不思議に思うのです。

まず、上記1.
たとえば、私自身が、事故で親族を喪った遺族だったとしたら、さっさと賠償金をもらっていると思います。
私が普段から職業的にそういうことに接しているからそう思うのかも知れませんが、人の生命が奪われた際の賠償金は、その人の年齢や職業などからして算定しうる客観的基準が裁判所内で確立しており、賠償金はだいたい正確に計算できます。
(人の命をお金で計れるのか、と違和感を抱く方もおられましょうが、何らかの客観的基準を作っておかないと、ゴネたほうが得をするとか、うそ泣きのうまいほうが得をするとかいうことになってしまい、もっと不正義です)

かように賠償金の計算はドライなものなので、自分が遺族であれば、その賠償金をさっさと受け取って、あとはJRとは一切縁を切りたい。であるのに本件、補償の話はいったいどこでつまづいているのかという点が率直によくわかりません。

次に上記2.の、遺族に対する説明会での紛糾について。
ここ数日の報道を見ると、事故原因が明らかにされていない、例えば、事故を起こした運転士は健康だったと会社は言ったがそれならなぜ事故が起きたかという点に会社は答えてないとか。当時の上層部が関連企業に天下りしているとかが問題にされている。

しかし、事故の原因が何であろうと、賠償金の額に変わりはない(故意に事故を起こして乗客を殺したとなると慰謝料の額も違うだろうけどそれはないと思う)。私なんかはずるい人間なので、お金さえ受け取ったら、事故原因や再発防止策などとりあえずは興味なくて、監督官庁や検察機構がよろしくやってくれるのに任せたい。

そもそも考えてみると、事故の原因なんてものが果たして究明できるのかどうか。
せいぜい、その運転士が、傍からみたら分からないくらいだったけど、ちょっと体調不良または寝不足だったかで、運転中に何らかの疾患を発症したか居眠りしていたかのいずれかではないか。
(もちろん、速度を制御する装置の改善や点検が遅れていたという事情もあるのでしょうが、これまでその路線で問題なく運行されていたということは、運転士に何らかの原因があるように思える。亡くなった運転士の方は責めることができないと思うけども)。
原因はそれに尽きていて、それ以上に、何を明らかにすればいいのか。

「運転士は健康だった」というJR側の答弁に対し、健康な者がなぜ事故を起こすのだ、それなら常に事故が起こる可能性があるということではないか、と遺族がおっしゃったという報道も見ました。
これについては、私のごく個人的な経験を一般化するつもりはないですが、私の父親は、会社での作業中、突然倒れ、そのまま亡くなりました。
普段まったく普通に生活していたし、当日もまったく普通に出勤した。これまでの会社の健康診断でも、まったく悪いところはなかった。あとから、心臓の動脈に疾患が生じていたとわかったが、それまで周りの誰も、もちろん本人にも、わからなかった。この場合、父親の死亡の原因について、それ以上の説明を求められてもできない。たとえばこの件で父親の会社の同僚や取引先から、動脈血管に悪影響が出ないように、どうして家族一同、毎日の食事や生活全般を管理してやらなかったのだ、突然死なれて困ったじゃないか、と私たちが言われても、そんなもの知るかとしか言いようがない。

健康な人でも突然死んだり病気になったり居眠りをしたりする、それなら、鉄道事故は常に発生する可能性があるではないか、と考えるとしたら、それは、その通りなのでしょう。飛行機だって、山の上に墜落したり、機長が逆噴射したりする事故がありました。

人が扱うものである以上、人為的ミスは完全に回避することは不可能です。
それらを利用する人はたいてい、事故の可能性はあるけど、たぶん大丈夫だろう、という前提で日々暮らしている。100%の安全性を確保してくれと言われたら、それはそもそも無理なのでしょう。
それがイヤなら、電車や飛行機は利用しないようにするほかありません。それでも、交通事故に遭う可能性は否定できないのですが。

事故再発防止という社会正義のために、遺族の方が、日夜説明会に通っておられるのには、私としても敬意を持っています。
ただ、述べたように、事故原因の究明と遺族補償は別物であるし、かつ、事故再発防止は完全には不可能であるのに、これらのことを理由に遺族補償が進んでいないのは、利己的でずるい凡人としての私には、正直理解し難いところです。

以上、完全な私見として述べさせていただきました。
私の理解が足りない点については、メールなどでご指摘ください。





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Last updated  2006/07/31 08:19:49 AM



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