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カテゴリ:法律、制度
前回、留置場や拘置所がどういう所であるのかを書きました。
それを前提として、富山で起きた強姦罪の冤罪事件について書きます。 ある男性が、無実の罪で強姦犯として逮捕・起訴され、有罪判決を受けて服役した。 出所した後になって、別の事件で逮捕されていた被疑者が、その強姦についても自分がやったことを告白し、男性の無実が判明した、という話です。 先週の毎日新聞に、その男性のインタビュー記事が載っていました。 取調べにあたった警察官に、やったのはお前だと言われ続けたと。裁判官や検察官には無実を訴えるが、その後、警察署に戻ると「なぜあんなことを言ったんだ」と言われ、また自白させられたと。 まさにここに、今の刑事事件捜査の大問題が含まれています。 刑事訴訟法の規定によると、逮捕された被疑者は、48時間以内に検察官に身柄を送られ、検察官は24時間以内に勾留(こうりゅう)の手続きを取るか釈放するかを決める。勾留するかどうか決めるのは裁判官で、勾留されると、10日間(延長が1回可能で合計20日間)、拘束されたまま取調べを受けることになる。 取調べは警察署の中で行われますが、勾留の前に、裁判官がその被疑者を勾留するかどうかを決めるために面会する機会がある。また、警察の調べのあとで、最後に検察官が取り調べる機会がある。 裁判官や検察官は、私と同じ司法試験を受けてなった人たちだから、現場の警察官よりは穏やかな人が多い(と信じてます)。だから被疑者も、裁判官や検察官の前では、自分は無実だと訴えやすい。 冒頭の冤罪事件の男性も、それをやったわけです。でも警察署に帰るなり、警官に怒鳴られた。 「代用監獄」(だいようかんごく)の問題です。 捕まった人は、警察の留置場→拘置所→刑務所という順で送られていく、と前回書きましたが、裁判を待っている人が入るのは本来は拘置所なのです。 留置場は、逮捕されて勾留が決まるまでの短時間だけ入っていて、勾留が決まれば拘置所に送られる。取調べのときだけ車で警察署に運ばれてきて、取調べが終われば拘置所に帰って寝る、というのが制度上の建前です。 しかし実際には、収容能力の問題等で拘置所にはなかなか送られず、警察の留置場にずっと留め置かれたまま、その中で取り調べを受けることがほとんどです。拘置所の代わりに留置場で寝泊りさせる、これが代用監獄で、多くの学者や弁護士は問題があると指摘しています。 被疑者はその身柄を、取調べを受けている当の警察に拘束されている。そのため警察に圧迫を感じ、警察官に迎合するような供述をしてしまいがちになるということです。 この代用監獄について、私なりに感じたことも書いてみたいと思いますが、それは次回に。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/04/16 06:21:52 PM
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