|
カテゴリ:法律、制度
続き。
少し話は変わりますが、近年、犯罪の凶悪化と国民の処罰感情の高まりを受けてか、犯罪の法定刑は重くなりつつあります。 例えば殺人罪は、少し前までは最低で懲役3年だったのが、法律が改正されて懲役5年になった。強かん罪は、最低懲役2年だったのが最低3年になった 懲役刑の上限も、15年だったのが20年になった。 ところが、こういった厳罰化傾向にあって、唯一、法定刑が軽くなった犯罪があります。 それが強盗致傷です。少し前までは最低で懲役7年だったのが、6年に下げられた。 なぜ強盗致傷に限って軽くなったかというと、それはこの犯罪がかなり容易に成立しがちだからです。 ゴマキの弟もたぶん、最初から強盗致傷を働こうと思っていたのではない。 こっそりと盗みをしようとしていたのであって、人を傷つけるつもりはなかった。それが警備員に見つかってしまい、頭に血がのぼって、逃げようとして手が出た。 警備員のケガの程度は知りませんが、ちょっと血が出たとか、血がでなくてもアザになったとかすれば傷害にあたります。 同じ強盗致傷でも、たとえば包丁片手に誰かの家に押し込んで、住人に切りつけて抵抗できなくした上でモノを取ったようなケースであれば、重く処罰されて当然といえる。 強盗致傷罪の罪が重いのは、典型的にはこういう場合を想定しているからだと思われます。 一方、ちょっとした出来心で万引きやコソ泥をしたら見つかったので手が出てしまって相手にケガをさせた、これも同じ強盗致傷です。 もちろんこれも犯罪行為であって処罰されるべきは当然なのですが、上記のような押し入り強盗と全く同じに考えてよいかというと、ちょっとためらいが残る。 そこで、法定刑の最低ラインを下げて、柔軟に刑罰を決められるようにした。 7年が6年になっただけの違いですが、ここは極めて大きい意味を持ちます。 前回書いた酌量減軽が適用されると、6年の半分の3年になる。懲役3年だと執行猶予をつけることができるのです。刑法上、3年を超えると執行猶予をつけることができない。 これまでは酌量減軽を適用しても3年半となってしまい、犯人に同情の余地があっても3年半は刑務所に行かないといけなかった。 (実際には、ちょっとしたケガであれば目をつむって、強盗致傷でなく単純な強盗として、それだと最低懲役5年、酌量減軽で半分の2年半にして執行猶予をつける、といった少しムリな処理をすることもあったようです) そういう次第で、強盗致傷でも情状によっては執行猶予をつけてもらえることになったのですが、ゴマキの弟は複数の犯罪を行っていたので実刑となった次第です。 刑法を勉強した人であれば誰でも知っていることだと思いますが、ゴマキの弟の事件をきっかけに解説してみました。以上です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/05/30 12:59:44 PM
[法律、制度] カテゴリの最新記事
|