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カテゴリ:きもの
さかのぼり日記です。
先週の日曜日、きくやさんの実店舗に初めてお邪魔しました! きくやさんとのおつきあいはもう一年ぐらいになるのに、いつも来てもらうばかりで、おじゃましたことはなかったんです。展示会には一度行かせてもらいましたが、外部会場だったし。距離は近くても私の行動半径からは外れた場所にあるので、今までなかなかお邪魔することができずにいました。 今回なぜ行ったのかと言うと、展示会の案内をいただいたからなのですが、いつもいただく展示会の案内とはちょっと違っていました。 まず、届いた案内状の宛先には私の名前だけで住所がなかった。どうも直接うちまで持って来てくれたらしい。そして、「展示会においでよ」というメールまでいただきました。今までは展示会の案内が来ただけで、それ以上誘われることはなかったのに。この力の入れよう、そして「楽しい遊び心のある着物がたくさん来る」という言葉には心を動かされるものがありました。 しかし、土日の予定が読めなかったので、お返事をしあぐねているうちに週末がやってきました。なんとか日曜日の夕方、すこし時間があいたので、きくやさんのそばの高校出身の妹を案内人にして、自転車をかっとばして行ってきました。 お店に着くと、店長さんがパソコンを触っているのが見えます。「こんにちは」と声をかけると、「来てくれると思わなかった」本当に嬉しそうな顔をして、展示会場の二階に案内してくれました。 この日に展示をされていたのは、群馬は桐生の織元さん。会場には、たくさんの反物と共にジャガード織に使う紋紙や、絞りの行程がよくわかるようにまだ糸が巻かれたままの布なども置いてありました。あの「紋紙」が織り機でどんな役割を果たすのかよくわからなかったので質問すると、丁寧に説明をしてくれ、「ジャガード機を発明したジャガールさんは失業を恐れた機織り職人たちに三度殺されかけた」なんて話までしてくれました。 その話を聞いた後に見せてもらったのが、地紋にクローバーを織り込んだ反物。「ごくまれに四ツ葉がみつかることがあります」と書いてあったので、「さっきのお話だと、同じ文様を繰り返すのだから、何箇所も四ツ葉がでてくるんでしょ?」と聞くと、「一反で一箇所です」とのお話。なんでも、ある程度まで織ると、ジャガードをはずして四ツ葉が織れるのにかけかえるそうです! 現場の職人さん達から「なんでそんなめんどくさいことをするのか」という猛反対を受けたとのこと(笑)そういう、無駄とも言える遊び心を、手間をかけて実現するこの織元さん、着物を愛してらっしゃることが伝わってきます。 他にも、一見色無地、近づいてみるとなんと地紋が硬貨(100円玉や50円玉などの紋様)という、名付けて「一反で100万円分の模様!」という反物や、音符や鍵盤が地紋で織り込まれた名付けて「音符紬」、色合いが美しい名付けて「美人格子」など、楽しい反物がたくさんありました。 また、この織元さんは糸にもこだわってらっしゃって、しなやかさを出すために細い糸を使うことで、通常の三倍もの糸を縦糸に使ってらっしゃるとのこと。なんともいえない柔らかい手触りは、その手間の賜物だったのですね。 その中で、心惹かれたのが、「矢絣お召」でした。若いお嬢さんが卒業式なんかで着る、ぱきっとした矢絣とは違う、優しく落ち着いた印象が、とても素敵でした。まさに「大人の矢絣」という感じ。普通は絣で出す模様を織りで出している、とかいう説明だったのですが、優しい印象はそれが原因かもしれません。 店長さんの美しいお母様(よく似てらっしゃったのでそうですよね?>店長さん)に着装していただきました。 後ろからスカートが広がってるのが見えます(笑) これ、本当に素敵でした! 再来年の三月には、今担当してる子供達の卒業式があるのですが、「その時にこの着物と袴を合わせて着られたら素敵…」としばし妄想。買っても後悔はしないだろうし、クオリティから考えると安くて、手の届かない値段でもなかったのですが(ただし一括では買えません。貯金がないので^^;)、いいと思うのを全て買っていたらキリがないしなあ…とちょっと頭を冷やして考えさせてもらうことにして、おいとましてきました。 この織元さんがきくやさんにいらっしゃるのは翌日の月曜日までだったので、欲しければそれまでに決断をしないといけなかったのですが、結局決めきれませんでした。あそこまで興味を示していた私に一本の催促の電話もメールもなく、後日ブログのコメントにお礼を書き込ませてもらったら、「あそこは大好きな織元さんなので、どこかでみかけたらまた買ってあげてください」というお返事。今回の熱心な(といってもしつこくはない)お誘いが、店長さんの純粋な「あそこの着物を見て欲しい!」という思いの発露だったんだなあ、と改めて実感しました。 こんなきくやさんだから、展示会にも安心して行けて、安心して「あれ素敵~」「これ好き~」と言えるのですよね。強引な商法のお店だったら、そんな言葉を漏らした日にはローンの申込書に記入をするまで帰してもらえない、という世界ですものね。 気軽に行けて、いろんな着物を見せてもらえて、勉強をさせてもらえる呉服屋さんが身近にあるのは、本当にありがたいことです。 というわけで、みなさん、 きくやさんに行きましょう!! (長時間居座ったのにうどんだけもらって帰った罪滅ぼしをする私) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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