カテゴリ:書物は、人間が与えられた最上の宝物
引き続き、トゥルゲーネフの「初恋」について書きます。 昨日は、本作品が生まれた背景について、手短かに触れました。 あまりに著名な小説なのでその必要もないのかも知れませんが、今日はあらすじをご紹介します。 冒頭のたった3ページだけ、映画の上映前の予告編と見紛ってしまうくらいささやかな前置きが設けられています。 ある家の主人とセルゲイ・ニコラエヴィチ、そして主人公であるウラジーミル・ペトローヴィチの三人が集まり、それぞれの初恋の話をしようということになります。 はじめの二人の初恋の話はさほど盛り上がらず、ウラジーミルの番になるのですが、彼は思い出せる限りをノートにしたため、後日お話したいと願い出ます。 主人とセルゲイはしぶしぶ了承し、ウラジーミルは約束通りノートを持ってくるわけですが、「初恋」の本編はその手記の中身ということになります。 1833年の夏、16歳のウラジーミル少年は、父母とともにモスクワの別荘に移り住みます。 大学受験を控えて勉強しなければならない身なのですが、家庭教師を追い払い、今は毎日気ままに過ごしています。 夕方になるとカラスを追い払うのが彼の日課で、銃を持って庭をうろつくのですが、ある日隣家を隔てる低い垣根の向こう側に「背が高くスタイルのいい女の人」を認めます。 その女性こそ、彼の初恋の相手、ザセーキナ公爵令嬢・ジナイーダだったのです。 彼女は21歳、ウラジーミルより五つ年上でした。 ウラジーミルの父はザセーキナ公爵のことを見知っていて、たしかに“公爵”と位は高いのだけれど、紆余曲折があっていまは貧乏暮らしを強いられているということでした。 父はまた、「娘はとても可愛くて教養のある子」であるという風評があることも覚えていて、妻と息子ウラジーミルに語ります。 読後よくよく思い返してみると、序盤のこの辺りのくだりから、怪しげな空気が漂っているのですけれど・・・。 さて、ザセーキナ公爵夫人の要望(要するに、「お金を貸して欲しい」ということです)もあって、ウラジーミル一家と両家の交流が始まり、意中のジナイーダとも親しくなっていきます。 ウラジーミルは頻繁にジナイーダのもとを訪れ、すでに彼女に首ったけの取り巻き連中たちとともにゲームに興じます。 ジナイーダは天性の小悪魔ぶりを発揮して、自分のもとに男性を釘付けにし、そうかといって特定の誰かに夢中になるということはなく、若きウラジーミルは彼女の手のひらでもてあそばれるのですが、彼はそれに嫌悪することは微塵もありません。 そうしてジナイーダを恋する日々が連綿と続くのですが、ある日ジナイーダに異変が表れます。 彼女は、誰かに恋をしているようなのです。 この事実にうすうす気づき始めたウラジーミルは動揺し、嫉妬に燃え、彼女の心を奪う憎らしい男が誰なのかを突き止め、殺してしまいたいと願います。 ある夜、彼はポケットにナイフを忍ばせ、ジナイーダの身辺を見張るために庭先をうろつきます。 何事も起こらないかに見えたその時、「体がぶるっと震え」る出来事が起こります。 思いも寄らぬ人物が「黒っぽいコートにすっぽり身をくるみ、帽子を目深にかぶって」現れ、その男の正体を知ったウラジーミルはあまりの衝撃にその場から逃げ出します。 途中、ジナイーダが眠っているはずの寝室に目をやると、「白っぽい巻きカーテンが用心深くするするとおろされ、窓の下までぴっちりおりきると、そのまま動かなく」なったのでした・・・。 認めたくはないけれど、そこにある事実に打ちのめされ、後日ジナイーダに向かって涙ながらに訴えます。 「何もかも知っているんです。どうして僕を弄ぶようなことをしたんです。なんのために僕の愛が必要だったんです」 ジナイーダは彼に謝りなだめると、ウラジーミルは再び虜になってしまうのでした・・・。 この間、ウラジーミル家には騒動が持ち上がり、早々に別荘を引き上げることになります。 ウラジーミルはもう二度とジナイーダと再会することはないと心に決め、お別れをします。 しかし、その後もう一度だけ、彼女と巡り会う運命が待っていたのですけれど・・・。 ・・・。 その結末や細かなエピソードについてここでは触れませんが、ざっくりとしたあらすじは以上です。 明日は、この小説から感じたことを書いてみたいと思います。 ありがとうございました!! 【三文日記】 新しい急須を購入して以来、それを使って緑茶を淹れることが多くなりました。 この急須は見た目も使い勝手も親密で、なんとなく使ってみたい欲求をそそられます。 仕事から帰ってきてすする緑茶の熱さと香りが、疲れを癒してくれます。 ●今日の天気 晴れ。 ●今日の運動 ジョギング30分。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/02/10 05:55:27 AM
コメント(0) | コメントを書く
[書物は、人間が与えられた最上の宝物] カテゴリの最新記事
|
|