恩返しができない

恩師からの手紙　４

　小学校の３年生、４年生の担任だったN先生は、その後は担任から離れました。たぶんN先生の健康のことがあったのではないでしょうか。

　でも、N先生は６年生になってからの修学旅行には、私たちと一緒に行動をしてくれました。
　N先生は私の健康を気遣ってか、私の傍にいてくれました。私の祖母も付き添いで行きました。

「ばっちゃ！ばっちゃ！」（おばあさん、おばあさん）と先生は祖母と仲良く話をしていました。
祖母もN先生との旅行でとても楽しそうでした。

　コカコーラ仙台工場では、
「病院では患者の健康のためにコーラを飲ませている」
と説明があり、その後試飲をすると先生と私はコーラを吐き出しました。

「なんだあ～こんな薬臭い飲み物を飲む奴がいるのかい！？」
と先生はしかめっ面をしました。そして
「はじめ、こんなもの無理して飲むな！！」
と言うのでした。

　そしてN先生と私は目を合わせて笑いました。


　あれから３９年が経ちました。

　N先生からの返事には先生の近況が綴られていました。

　病気の療養をしながらの生活だそうです。でも、先生らしく時々苛立ちをみせることもあるようです。私は、先生は相変わらずだなあと微笑んでしまいました。

　恩師というひとことでは言い表せない感謝とたくさんの思い出があります。今日、何とか生きていけるのもN先生のお陰であり、特に私自身も気付かなかった私の個性を引き出して、それを自信に変えていってくれたN先生でした。教え育てることが教育の基本とすれば、N先生はまさしくすばらしい教育者であり、私が尊敬するおひとりとして一生忘れることができません。

　でも、私はいつになったらN先生に恩返しができるのでしょうか……

「　教え子の文（ふみ）に来し方　懐かしく
個性　豊けき　肇と広洋　」　　N先生の手紙から…

　２００５年８月１日記