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ああ…日本新党!?


追悼 気骨の政治家大石武一さん


故・大石武一氏を偲ぶ会


ドキュメント小説 吹雪の如く


吹雪の如く 第2回 ひとりの専務理事のこ


吹雪の如く 第3回 理事会と地区労が作っ


吹雪の如く 第4回 小川明と多田昭男・出


吹雪の如く 第5回 福対協


助けられたり助けたり


第1回 市民参加型福祉のはじまりです


第2回 「聴く耳を持った医師」


第3回 大木仁さんに学ぶ「社会貢献


第4回 今野敏子さんに学ぶ「心意気」


第5回 佐藤由利子さんに学ぶ「介護は人間


第6回 Kさんに学ぶ「さよなら」


第7回 鈴木チヨ子さんに学ぶ「笑いで明る


第8回 Mさんに学ぶ「介護は気持ちよ」


第9回 猪口悦子さんに学ぶ「介護体験を社


第10回 たくろう所の出来事


第11回 たくろう所利用者に学ぶ「家庭延


第12回 私たちの目指す介護とは


第13回 安部ハルミさんに学ぶ「プロは頭


第14回 佐々木隆信さんに学ぶ「懐かしい


相澤嘉久治さんに学ぶ「主体的創造的に生き


第1回 出会い


第2回 知る


第3回 祖母と父


第4回 父の写真


第5回 大いなる情報誌ういずy


第6回 命を懸けた闘い


第7回 合掌 早坂茂三 さん


第8回 早坂茂三さんの遺言 その1


第9回 早坂茂三さんの遺言 その2


第10回 早坂茂三さんの遺言 その3


第11回 早坂茂三さんの遺言 その4


第12回 早坂茂三さんの遺言 その5


第13回 早坂茂三さんの遺言 その6


第14回 早坂茂三さんの遺言 その7


第15回 早坂茂三さんの遺言 その8


第16回 早坂茂三さんの遺言 その9


第17回 早坂茂三さんの遺言 その10


第18回 早坂茂三さんの遺言 その11


第19回 早坂茂三さんの遺言 その12


第20回 早坂茂三さんの遺言 その13


第21回 早坂茂三さんの遺言 その14


第22回 早坂茂三さんの遺言 その15


第23回 早坂茂三さんの遺言 その16


第24回 早坂茂三さんの遺言 その17


幼幻記


幼幻記1 微笑


幼幻記2 あーちゃんのハイヒール


幼幻記3 和田屋のロマンス


幼幻記5 福島行きの汽車の中で


幼幻記6 氷水(こおりすい)


幼幻記7 焼きみそおにぎり


幼幻記8 仔猫とチョウマ


幼幻記9 結い髪


幼幻記10 傷つけた写真


幼幻記11 パパのおしゃれ


幼幻記12 母の笑顔


幼幻記17 命日


幼幻記18 安寿と厨子王


幼幻記 19 祖母の生誕100年 佛光寺


幼幻記 20 ホットカルピスの味


ニューストピックス

2008年06月08日
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~山形マンガ少年~ 第三部 『熱い夏の日』
●第72回 祖父母の不安



第1025回 2008年6月9日

~山形マンガ少年~ 第三部 『熱い夏の日』●第72回 祖父母の不安


長吉


 

「やまがた~…やまがた~…」
 減速したつばさが山形駅に到着するとぞろぞろと乗客が降りてきた。
 構内には駅の独特な臭いが立ち込めていた。
その臭いは煙分のような感じで、ムーッとした暑さのせいか空気の中で一層充満しているようだった。
「山形も結構暑いなあ。
さあて、旅館に行ってお風呂を浴びよう。
そして大村ちゃんから原稿をもらって明日帰ろう」
 すでに汚れたハンカチで首筋や顔の汗を拭いながら、虫プロ商亊の野口勲は改札口を抜けてタクシー乗場に向かった。
「いやあ~、甘い甘い、天下の手塚治虫先生だから、いまだに原稿が描きあがっていないことを想定しなければ……。
でも、ボクは他の編集者と違って、手塚ファンだから同じ部屋に一緒にいられるだけで幸せだ。
絶好のチャンスだ!!」
 野口はそう言って、タクシーに乗った。

「ジョン!
そんなに走るな!!
歩け、歩くんだ!!!」
 井上はじめの祖父長吉は愛犬と散歩をしていた。
 愛犬といっても大型犬だから、体格のいい長吉でも犬に引きずられるようにして歩いていた。
 街の中にある空き地にくると、長吉は犬の首輪から鎖を外して、犬が自由に遊べるようにする。
その間、長吉は無造作に置いてある長方形の石に腰を下ろして、休憩をして考え事をするのが日課だった。

 いまごろはじめは手塚治虫と会ってなにを話しているんだろうか。
たかはしよしひでサンや鈴木和博クンと、マンガ家になるように口説かれてはいまいか。
 あのコムの石井編集長はなかなか立派な方だから、ヤクザな商売ではないのはわかったが、マンガ家の仕事は画家と同じで売れなければ価値はない。
大事な孫をそんな仕事に就けていいのだろうか。
 長吉の心の中はけっして穏やかではなかった。

 祖母のふみは台所で夕飯の支度をしていた。
 ふみの心中も穏やかではなかった。
 今夜はじさま(爺様)と二人だけの食事だから、おかずもたいしたものはいらない。
だけども孫のはじめのことが心配だ。
 はじめはマンガ家になりたいなんて言ったこともないから、手塚先生に付いて行くなどというバカなことはないだろう。
だけど、マンガ界の仕事はマンガを描くばかりではない。

 ふみはコムの編集長石井文男が訪ねてきた時のことを思い出していた。
あの時の石井編集長ははじめの将来のことを訊いてきた。

「井上くんは将来何になるつもりでしょうね」
「何したいなだがなあ・・・。
 そろそろ考えなんねげんどね」
そしてふみは石井に訊いた。
「石井さん、はじめを手塚先生の所さ、連れて行こうと考えてるんだか?
 はじめが(家出したりして)居なぐなったら、石井さんさ一番最初に訊けばわかるようにしてくだいなあ」
「おばあちゃん、何を言っているんですか。
 井上くんが来たいのなら別ですけどね」
ふみの気持ちはうれしくもあり、淋しくもあり、複雑だった。
「うちのばさま(婆様)は、バカなごどばっかり言うがら気にしねでくだいな」
と、長吉が言った。

 あれ以来、ふみは石井編集長がはじめを自分と一緒に働く編集員として考えているのではないかと思えてならなかった。

 はじめにいろいろ訊いてると、手塚治虫はマンガ制作、アニメーション、出版の、三つの会社の社長だという。
そこでは何百人の社員が働いている。
 マンガ界は奥深い産業だということがわかってきた。
だったら今日の手塚治虫とはじめたちの会合は、将来のマンガ界へのチャレンジの一歩かもしれない。
いいや、それはもう始まっている。
だって、高校生が主催する田舎のまんが展に、売れっ子マンガ家の原画を何百枚も無償で貸すなんて考えられないことだ。
 これにはきっと裏がある。
 手塚治虫先生、石井編集長、酒田の村上サンと山形のたかはしセンセイとの間で進んでいる将来のビジョンが潜んでいるのに違いない。
つまり、いずれ村上サンもたかはしサンもはじめも手塚先生の下で働くということが決まっているのかもしれない。
 それをはじめだけが知らないで、どんどんその中に引きずり込まれていっているのではないかと。

 長吉とふみの不安は一層濃くなっていくのだった。
 
 2008年 4月 5日 土曜 記
 
 事実経過に基づいて描いておりますが、ご本人や関係者の名誉のためにも、登場人物のの心理や考えは作者の想像の範囲であることをお断りしておきます。

写真
祖父長吉は愛犬ジョンと散歩するのが日課だった 
(昭和40年代初期に撮影・川島印刷初代社長)






~山形マンガ少年~ 第三部『熱い夏の日』 
●第72回 祖父母の不安

つづく 「熱い夏の日~山形マンガ少年~」第73回にご期待下さい!!

 「山形マンガ少年」まとめてご覧いただけます。
 
第一部「はじめちゃんの東京騒動記」のホームページ


第二部「旅立ちの歌」のホームページ






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最終更新日  2008年06月08日 16時45分32秒
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