カテゴリ:本・テレビ等
久しぶりに興味深いという意味での面白い本を読んだので、紹介してみたい。
ウィリアム・ホープ・ホジスンという作家で1900年頃のイギリスの作家。 同じ作者の「異次元を覗く家」というハヤカワ文庫の作品を所有しているのだが、怪奇幻想譚といった感じの作品を書いている。 ラブクラフトみたいな、と言えばわかりやすいか。 この「ナイトランド」はかなりの長編で、内容はアマゾンのレビューなどを参照してもらえればわかるのだが、100万年後の滅び行く地球を魑魅魍魎が跋扈しているという、ほとんどその情景描写を延々と読み進めていくというような感じだ。それだけをとって見れば、特に読むに値しない古びた怪奇譚になってしまうのだが、年代的にまさにファンタジー創世記に書かれた物として読めばまた違った印象となる。 当時、地球上にはまだまだ未知の領域が存在しており、科学技術という存在が身近に感じられるようになってきたものの、人々は不可知なものへの興味・恐れ・憧れといったものを抱きながら暮らしていたはず。そういった近代世界へ突入しつつある時代の空気を作品として書き残しているのが、この「ナイトランド」なのである。 100万年後の滅び行く地上でなんとか生き延びている少数の人間たちという世界観もさることながら、注目すべきはやはり闇の世界「ナイトランド」の主役である怪物たちの数々だろう。獣人や巨人族といったおなじみのものもいるが、「監視者」と呼ばれる山のように大きな異形の物体などはゾクゾクするような存在だ。この世界の始まりの時からその場に存在し、生き残りの人類が生存している大ピラミッドを監視し続けている・・・これだけで作品が一つ書けそうなヤツだ。 他にも「沈黙の家」や「無言のやつら」とか、こんなものがそこかしこに存在するとんでもない世界をよくもまあ作り出したものだ。 ストーリー的には主人公が愛する女性を救い出すためにナイトランドを決死の思いで進んでいくという、特筆すべきところのないものだ。そのロマンチックすぎる愛情描写については当時においても「読むに堪えぬ冗長なロマンス」と評価され、訳者も「信じがたいほどのアナクロニズム」と表現するものだ。 正直なところ、作品後半部分は「あーもう、いい加減にしてくれ!」的な、二人の乳繰り合いばかりなので相当飛ばし読みしてしまった(これでも原文からは大幅にカットされているらしい)。 なので、かなり評価は分かれる作品だとは思うのだが、やはりこれは読んでおくべき作品ではないかと思う次第である。 今読めばさほど目新しいものはないのかもしれない。しかし、裏を返せばこれ以降現代まで続くファンタジー作品の数々に、この作品中の様々な要素が取り入れられているということではないのか。 そう考えれば、ホジスンの恐るべきオリジナリティというか、幻想怪奇に対するバイタリティーに敬服してしまうのである。 ちなみに、作品はすでに絶版のようであるが、一応リンクだけ貼っておく。 中古であればそこそこ売っているようだ。 蛇足だが、これを読んでいてコリン・ウィルソンの「スパイダー・ワールド」を思い出してしまった。雰囲気が似ているなぁ・・・。 「ナイトランド」が少しでも面白いと思えた人は是非読んでみてw。 あと、「賢者の石」も超大好きな作品、オススメ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 31, 2014 04:28:48 PM
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