葉室 麟 「辛夷(こぶし)の花」
葉室 麟 「辛夷(こぶし)の花」武家物です。嫁いで三年で実家に戻された志桜里(しおり)。隣家に越してきた半五郎との運命の出会い。お互いが心を寄せ合いながらもお家の為に身を犠牲にし、自分の幸せより家と家族と藩主の安泰を思う二人。藩主と家老たちの主導権争いに巻き込まれた二人。家族を守る為、藩主を守る為、二人はある覚悟をします・・・男や女、父親と子供達、主人と家来の主従関係をなくし皆んなで団結しての闘いの始まり・・・志桜里の女性として下がるべき所は下がり、主張すべき所は主張するキリっと引き締まった姿が美しいです。辛夷の花という題名は、志桜里の家の庭に咲いていたところを隣家に引っ越してきた半五郎が話し掛けた事がきっかけとなり運命の出会いが始まることから題名となったと思います。辛夷の花が開くように、いつかお互いの本当の心が開く事を願ったことになぞらえているようでした。