自動車とエレクトロニクスの歴史を振り返りながら、その密接な関連性について考察する。
排ガス規制対応で救世主となる電子技術:
カー・エレクトロニクスは1970年代以降、排ガス規制への対応で行き詰まっていた自動車産業に、電子式燃料噴射装置の実用化という点で救世主となった。それまでの機械制御の限界を超え、出力や燃費性能を犠牲にせずに排ガス浄化を実現することに成功したのである。カー・エレクトロニクスの発展が機械技術の新たな進展を誘起し、自動車はエレクトロニクスと機械技術の相乗効果により、さらに進化を遂げてきた。そして、その応用分野はエンジン制御のみならず、デジタル・メーター、エアバッグ、ABS(anti-lock brake system)、カー・ナビゲーション・システムなどへ広がった。
このように現在は、ガソリン4輪自動車が発明されて約120年、トランジスタが発明されて約60年、T型フォードの完成から約100年、マイクロプロセサの完成から約40年が経過している。
電装品は別として、本格的にカー・エレクトロニクスが発展したのは、1970年代の電子式燃料噴射以降である。まず最初に、エンジン制御に代表されるパワートレーン制御分野で利用され、その後、ボディ系、走行安全系、そして情報系へとカー・エレクトロニクス応用製品が拡大していった。
今後は、さらなる燃費向上や予防安全のための技術に応用製品が広がっていく。自動車に求められる環境性能や安全性、利便性、情報の高度化など各分野の要請に応えるように新製品が開発され続けるであろう。
半導体の技術進化の恩恵を受ける:
世界中の膨大な数の電子技術者が技術開発を競った時代である。微細化技術がこれらのマイコンの性能向上を支え、ソフトウエア産業の台頭を誘引して、現在のエレクトロニクス産業の発展を支えてきた。自動車もその恩恵に浴した一つの分野である。
ECUの変遷を見る:
ECUはその規模だけでなく、使用する部品、パッケージの形状、ソフトウエア記述言語などが時代と共に進化している。
カー・エレクトロニクスはECUを実現するさまざまな要素技術の進化によって発展してきた。具体的にはマイコンやI/O(入出力)の機能、センサやアクチュエータ、ソフトウエア、ECUの評価方法などである。
今後も燃費向上、排ガス低減、安全性・利便性の向上など多様化するニーズに対応していくためには、半導体をはじめ、実装技術やソフトウエア技術、評価技術など各種の要素技術の進展は必須である。その意味で、カー・エレクトロニクスの基礎となる要素技術の現状と進化の動向を俯瞰しておくことは、極めて重要である。それらが今後のシステム・ニーズに対応できるかどうかを決めると言っても過言ではないだろう。
出典:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20150401/412181/?ST=ADAS&rt=nocnt