エピローグその1
数年前に『フィッシャー症候群』という病になりました。風邪を引いたときにできる抗体が何らかの原因(解明されていない)で突然変異を起こし、神経系を攻撃するという病気で、1万人に1人の割合で発生すると言われている病気です。抗体は通常2週間ほどで消えるので、それに従い、症状も段々と落ち着いてくる病気なのですが、神経への攻撃の傷つき方によっては、後遺症が残ると言われています。なので、症状の出方も千差万別で、私の場合は、目の神経をやられたのでモノが二重に見え、手足の神経もやられたので、一時はモノが上手く掴めなかったり、歩けなかったり、さらにめまいや吐き気を起こしたりしました。数年経った今はわかりませんが、当時はきちんとした治療法が確立していなく、比較的“有効”と言われる3つの治療法の選択しかありませんでした。ひとつは、血液製剤を使った治療法⇒血液の病気に感染するリスクが多少あり。もうひとつは、血液自体を洗浄する方法⇒感染のリスクがあり、身体の負担も大きい。最後は、何もしないで様子をみる⇒軽い人にはこれが一般的。私の場合は、病院の同じ症例の中でも重症の方だったので、少しでも後遺症のリスクを減らしたいと、医師から上のふたつのどちらかを選択することを勧められ、家族との話し合いの末、血液製剤での治療を選択しました。同意書にサインをし、いよいよ明日から治療・・・という前夜、さあ寝ようというときでした。『血液製剤は感染する。治療をしなくてもきちんと治るから大丈夫。』という言葉が湧き上がってきたのです。その途端、涙が溢れて溢れて仕方ありませんでした。(中止にしなくちゃダメだ!)大泣きしながら治療の中止を懇願する私を医師が尊重してくれ(多分余程怖がっていると思ったと思う)、後遺症を心配する家族を説得して、血液製剤による治療は中止になりました。その後は、「今まで僕が診た患者さんの中ではかなり重かったけど、治りは一番よかった!」と言われる程、みるみる回復し、後遺症も全く残らず完治したのでした。エピローグその2へ続く・・・。