|
カテゴリ:詩・文芸
沖縄県立南部商業高校文芸部「綾羽」第六号(2008.1.31)
![]() 詩十二編、小説七編で構成。 B5の三十二ページ。 巻末記載の部員は三人。 詩「グッバイ」(ハチ)は〈瞬きをする暇さえ与えてくれない/一瞬にして全てが閉ざされる//与えられない光/歪む世界/見えない明日//長方形の部屋の中静かに今日も瞼を閉じて/受け入れられない事実を掌に〉と世界の終りのような情景を描き、〈俺らの進む道はどこにもない//残酷にも眩しい朝日は照らしていた///無残に転がる欲の塊を〉と閉じる。現実の至る所にある矛盾や歪みとの決別は、翻って自己対象化の手段にもなることを示している。 同じことを繰り返し、終わりの見えない日常生活を〈償い〉であると表現する詩「彼なりの」(ハチ)を引用する。生活を拒絶し、日常を諦てているようにもみえるが、最終行は抑制のきいた着地になっており、諦観よりも自己を対象化し再評価する営みと取れるところがいい。 彼なりの ハチ いつになったら終えることができるのだろうか 埋めては、拾って、埋めては、拾って いつもそれの繰り返し。 ずっと、ずっと、ずっと、繰り返し。 めんどくさい。 でも、やらなきゃ。 埋めなきゃ、拾わなきゃ、拾わなきゃ、 今日もまた同じことの繰り返し。 いつまで経っても終わらない。 そんな人生。 そんな償い。 今日も倒れそうなぐらい暑い日だ。 他の作品では、巻頭詩(涼月)が部誌の題「綾羽」からイメージを膨らませた作品。作品集の導入として十分機能している。 小説「大切な事」(朝比奈薫)は仕事と妻のどちらが大切かという社会人にとって究極の選択肢を題材にとった作品。その問いの前提には互いに思い合っている関係があるというところが忘れてはならない大切なことだというのに気づく、最良の結末になっている。ただ、その過程が電話一本で描かれるのはあまりに短く、もっと妻が究極の問いを夫に投げかけるまでに積み重ねた我慢や切羽詰まった心境に至った背景を読みたかった。愛があるからこそ生活とのはざまで憎しみが生まれることもあるという恋愛(夫婦関係)の深い部分まで描かれていればいうことなしだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/01/03 05:44:45 AM
コメント(0) | コメントを書く |
|