2005/01/29(土)13:28
宣伝上手:建築家 ル・コルビュジエ
偉大な建築家であるとともに、偉大な戦略家でもあったことを初めて知りました。
彼は建築家として活躍のかたわら、メディアにたくさんの寄稿をしていました。
また、ある時期から私的な文書もすべて保存していました。
自分の仕事を今の人に知ってもらうこと、そして後の人に知ってもらうことを明確に意識して生きた人であることがうかがえます。
そんなル・コルビュジエが残した非常に美しい文章が、
『「建築へ」 ル・コルビュジエ著 中央公論美術出版』
という本で味わえます。
当時の考えかたから、コルビュジエの思想、哲学的なエッセンスまで楽しむことができます。
『偉大な時代が始まった。
新しい精神がある。
・・・・工業のすべての領域において、新しい問題が提起され、それらを解決することのできる道具が創り出されてきた。この事実を過去と対比するなら、そこに革命がある。』
大量生産が始まった時代です。すべての人にものがいきわたる、それが当たり前になることが、どんなに生活に変化をもたらしたのか、「革命」という言い方の中に、その変化の大きさが感じられます。
『結論、近代人すべての中に機械的なものがある。機械的なものの感情が、毎日の生活によって生じて存在する。この感情は、機械的なものに対する尊敬、感謝、感嘆である』
同時に、機械文明にある種のいきずまり、問題をかかえている今からみると、「機械的なもの」に対する文章はとても興味深く読めます。
そんなさまざまな文章の端々で、コルビュジエの人間としての強さ、思想の強さをよみとることができます。
『プランを作る、それは考えを明確化し、固定することである。
それは、考えを持つことである。
それは、それらの考えを秩序立てて、理解でき、伝達できるものとなるようにすることである。それゆえ、意図を表明しなければならず、意図を得ることができるためには、考えを持たなければならない。プランは、いわば材料の分析表のように濃縮されたものである。結晶や幾何学的図形のように濃縮された形の下で、プランは大量な考えと駆動する意図を保っている。』
「考え」の重要さがひしひしと伝わってくる名文です。
このような詩的な哲学エッセンスがちりばめられていることが本書の魅力のひとつです。
単なる建物、であると同時にその中に組み込まれた思想が存在している、そのことに思いをはせてみるのも、ちょっと楽しいかも知れません。