身体・感覚とアート

2005/05/09(月)11:13

日本の形の再発見:センス・感性

身体・感覚(46)

今、世界で『美』も流行や商品としてめまぐるしく変化する。 そんななかで、ちょっと日本を、そして自分のセンスや感性を振り返らない?とソフトに語りかけるのがこの本です。 『「形とデザインを考える60章」 三井秀樹著 平凡社新書』 この本の特徴は、複雑系のフラクタル美学と日本の美学の関連がわかりやすく述べられていることです。 『これまでの形の研究では、自然の複雑な形が幾何学や数学では説明しにくいことから、偶発的な形であるとか、出鱈目な形という形容でくくられていたのである。  ところが今から四半世紀前、IBMの研究者、B・マンデルブロが、こうした 複雑な形にもある一定の秩序があるとして、これをフラクタルと命名した。』 日本の美学・・・、茶碗のひび割れの観賞、墨流し、滲み、かすれ、さまざまな絵画表現などはこのフラクタル美学を内包していたのです。 しかも、「その秩序は黄金比のような数理的美学も存在していた」。 著者は浮世絵から家紋、茶の湯とあらゆる角度から述べています。 そして、それを西洋の美学と対比して説明しているところがもう一つの特徴です。 『18世紀に入り、中国や日本の自然志向の思想を採り入れて盛んになったイギリスの風景式庭園は、産業革命による工業化社会の実現によって、人々が自然をより身近に起きたいという欲求に根ざした庭の形ではなかったのだろうか。つまり、現在のイングリッシュ・ガーデンの原型は、この風形式庭園にあり、もとを正せばこうした東洋の自然の思想にあるのだ。』 幾何学的形体の庭を好む西洋と自然な形をめでる東洋が出会って、イングリッシュ・ガーデンが生まれた。 このように、思想にも軽くふれながら、東洋と西洋について文様から建築まで広く語っています。 そうして、最後に、「美の原理はあくまでも原理であり」美に関する感性はひとりひとり違うもの、磨くものと述べています。 『センスのトレーニングによって磨かれ、審美眼が生まれてくるものである。トレーニングのコツは、よいものを繰り返し繰り返し見ること、その対象をすきになって関心を持つことが第一のステップである。私の勤務する大学の学生でも狭いアパートに分相応に暮らしながら、腕時計に関しては人一倍関心が高く、私も憧れるロレックスの時計を身につけ、審美眼の鋭い男がいる。  彼は少年のころから時計に憧れ、時計に関する本や雑誌を読みあさり、ウィンド・ショッピングばかりしていたと聞く。つまり好きな対象に関する情報を集め、繰り返し観察するトレーニングによって腕時計の知識ばかりでなく、形体や材質・部材などの組み合わせ、全体のクオリティとともに、そのもののもつ美を見分ける能力を身につけてしまったのである。』 前書き、最後の総括とあとがきで本の全体がわかるように書かれています。 あとは、一章ずつ、完結するように書かれているので読みたいところを拾い読みして楽しむことができます。 前の日記からずいぶん日がたってしまいました。 ゴールデンウィークぼけ・・かも・・。 次はもう少し早く書きたいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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