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全18件 (18件中 1-18件目)

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偏在儀式

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第４章　（第１回）　「今度の戦いが、我々の最後の戦いになるであろう！リンダエル、失敗は許されないぞ！」　メタニエル様は僕にそう云いながら、「モリヤの雫」と感応出来る亜空間「ポイントビューウィック」に至るゲートウェイのマスターレコーダーを手渡した。　「ポイントビューウィックも、連中に気付かれている可能性は高い。攻撃を受けたら、天上に一旦戻るのだ！」　「心得ております。メタニエル様」　僕はそう答えた。　「間違っても、そのままキエフに向かってはならぬぞ！」　「はい」　「我らの狙いがキエフにあることを知られたら一巻の終わりだ！」　メタニエル様は深い溜息をついた。　「リンダエルよ！我らが古えの神獣ラムウを召喚出来るのは、もはや荒々しき人間を於いて他にない」　「存じております」　「良いか、リンダエル良く聞け！我らの一族がサタニエルの跡目を継ぐ前に、武甕槌神（タケミカヅチカミ）と云う我らと同じ雷の精霊が人間界に降臨された」　「降臨されたのですか？」　　「そうだ、今では偏在しか許されていないが、その頃はまだ、降臨することが精霊にも許されていたのだ」　「凄いことですね」　「確かに凄いことである。降臨によって得られるパワーは計り知れないものがあるからな」　「その神はいま何処に？」　「槌神はヒエラルキーＢの精霊であったが、人間の娘と交わったために、寿命が発動して今はもう亡き神になられている」　「では、そのパワーは？」　「今は、槌神の末裔である麹智雄神（キクチユウカミ）に引き継がれ封印されている。雄神こそが、唯一ラムウを召喚出来る方であろう！リンダエルよ！雄神と共にキエフに赴くのだ」　「ははっ！」　僕の名前はリンダエル。　ヒエラルキーＤの精霊である。　ヒエラルキーＤの精霊は、妖精界と人間界に偏在することが許されているが、偏在中は堕天使扱いになってエルの称号は剥奪される。　サタニエルが剥奪されてサタンになったように、僕の場合もリンダエルからリンドにならなければならない。　精霊が偏在する理由や目的は様々だが、僕の場合は、僕の出身である雷の一族としての役目を果たす為であることが多かった。　一方、全精霊の３分の２を占めるヒエラルキーＣの精霊は、天使界だけに偏在する精霊のことである。　ヒエラルキーＣの精霊は、天使に偏在しても精霊の称号であるエルという名前は剥奪されないが、偏在した天使の階級（セレスティアル・ヒエラルキー）によってその精霊の序列も決まってしまうので、何かと揉め事が多いクラスでもある。　それから、ヒエラルキーＢの精霊は、所謂「熾天使（セラフィム）」のことである。　彼らは純粋な光の思考として神と直接に交わり、愛の炎と共振することが出来る。　人間の世界では、何故か天使の最高位とされているが、彼らは天使界に偏在しないので天使ではない。　彼らこそが、偏在しなければならない理由がなくなった上級精霊であって、神の参謀役から親衛隊、或いは精霊たちの指導、統制、処罰まで幅広い任務を負っている。　そして最後のヒエラルキーが、我らが雷の一族の統領であるベルニエル様も所属しいるヒエラルキーＡのクラスである。　ヒエラルキーＡの精霊は、神が「神の計画」を遂行するために、天使界や妖精界、又は人間界に偏在しなければならなくなった時、「神の三位一体（トリニタス）」の第ニ位のペルソナ（位格）を構成する精霊のことである。　神の分身となる精霊であるから想像を絶する世界の住人であるらしいのだが、僕のような下級精霊には全くと云っていいほど分からない世界でもあった。　　「リンダエルよ！そろそろ人間への偏在儀式を始めるぞ！」　「はい、かしこまりました」　僕はメタニエル様の言葉に従って、祭壇の上に登った。　偏在する能力そのものは僕に中に存在しているから、別に儀式がなくても人間と妖精にだったら偏在は物理的には可能である。　事実、堕天使は、儀式なしで偏在しているらしい。　しかしそれでは、偏在に同意した霊はいい迷惑になってしまう。　天使、妖精、人間の各霊にとっては、精霊の偏在もそのクラスを上げる機会のひとつであるが、堕天使のようなやり方では霊のクラスは上がらないので、同意した霊は騙された気持ちになる筈だった。　「精霊、リンダエルよ！汝を、エストニア住人である、人間アダムクス・クリスティン・パルツの青年霊に偏在させることを神は許し給もうた！」　本来、人間への偏在儀式は、ヒエラルキーＢの精霊が行うことになっていたが、雷の一族は今、存亡の危機に見舞われいて、後方支援に僅か数体の精霊を残して、全員が天上での戦いに参戦していた。　そして、僕とメタニエル様は極秘の任務を持つ遊撃隊のような立場だった。　ヒエラルキーＢの精霊が居ない場合は、より上位の精霊が儀式を代行する。　今回は、ザフキエル様やラファエル様と並んで、セレスティアル・ヒエラルキー第ニ位の座天使（スローンズ）への偏在経験を持つ、ヒエラルキーＣの精霊メタニエル様による代行儀式が始まっていた。　「大いなる神よ！いざ、リンダエルに人間の意識を与え給え！」　「ううっ・・・」　僕は、メタニエル様の言葉で、人間に偏在できるレベルまで、自分の意識を降圧していった。　偏在儀式は、降圧と云う表現を取るが、実際は自らの意識を粗大化していく作業であって、精霊にとって苦行とも云うべき苦しいものであった。　「ぐぐっう・・・ぐうっ」　僕の意識は、少しずつ粗大化を始め、天使の波動から妖精の波動まで粗大化が進んだその時、　「リンダエル様、リラでございます！」　リラからのテレパシーが届いた。　「おお、リラか！久し振りであるな！」　苦しんでいる僕に代わって、メタニエル様がそう答えた。　リラは、かつて僕が妖精界に偏在した時に、僕と盟友関係にあった妖精だった。　彼女はピクシーと云う種族に属していて、現在はその種族の長をしていると聞いていた。　僕の意識が、妖精の波動まで降圧されたために、リラがそれを感じて、直ぐにテレパシーを送って呉れていたのだ。　「我らピクシーは、これまで雷の一族様から限りないご恩を頂戴して参りました！この雷の一族様の危機に際して、我らも何か御助勢がしとうございます！」　「おお、それは有り難い！」　メタニエル様が叫んだ。　今回の特殊任務を考えれば、妖精が一体でも参加してもらえれば、多いに助けになる筈だった。　「本来なら、私目が御助勢しなければなりませんが、キエフにお行きになられるのでしょう？残念ながら、今の私目は老体ゆえ、人間界に行くのはもう無理でございます」　確かに、リラの年齢を考えれば無理であることは誰もが分かっていた。　「また、私めの娘のカナは、先の天幕祭の時に他界してしまっております」　「何？カナが他界したと？」　「がうっ・・・るるっ」　僕はテレパシーをリラに送ろうとしたが、結局、送れたのは獣のような呻き声だけだった。　「そこで、まだ幼く、甚だ頼りになりませんが、私目の孫娘のマヤを遣わしとうございます！」　「おおっ！そうして呉れるか？それは実に有り難い！」　メタニエル様がまた叫んだ。　「うぐがぐっ」　僕もそれは実に有り難いと獣語で叫んだ！　「リンダエル様、ポイントビューウィックでございましょう？ビューウィックにお着きになられましたら、妖精サイドのゲートをお開き下さい。マヤを送り込みます！」　「分かった、リラ！ピクシー族の忠誠、このメタニエルが、必ず我らが統領ベルニエル様にお伝え申し上げるぞ！」　メタニエル様のテレパシーは、僕の意識が、未知の領域である人間の波動に降圧された瞬間、掻き消された。　「うをっ！これが人間の波動なのか？何てエゲツないヴァイヴレーションなんだ！」　僕は思わず叫んだ！　　「よし、リンダエルをビューウィックに転送するぞ！」　僕は、人間の波動領域に降圧したままポイントビューウィックに転送された。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 29, 2005

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激突

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第３章　（第５回）　「ユウカ様、どうか気を悪くされないで下さいね。ユウカ様に限らず、人間の世界には私たちの世界を記述できる言葉が少ないのです。」　リンドウは私に申し訳なさそうに言った。　「そのために、一番近いニュアンスの言葉を使っても、人間には意味が分かり難くなるんです！」　「偏在って、結局、肉体を持つって事なのよ！ねえ、リンド？」　「ええ、人間や妖精から見たら、そう云うことになりますね。でも本当は精霊にも肉体はあるんですよ！」　それから、私に対するリンドウとマヤのレクチャーが延々と続いた。　私は２６歳の女性のなかで、最も平凡な人生を送ってきたグループに属していると思う。　確かに父を、幼い頃に亡くすという悲しい出来事はあったが、勉強もスポーツも普通以下で、仕事だって退屈の連続だし趣味も余り無い。　恋愛に至っては普通の人の５分の１くらいの経験しかないと思うし、宗教などには全く関心がなかった。　そんな私にとって、彼らのレクチャーを理解するのはとても骨が折れた。　レクチャーはリンドウが喋って、マヤが俗な例えで補足すると云うやり方だったが、眠気を堪えるのが精一杯だった。　彼らの話自体は、リンドウとマヤの存在に関する話題が中心だったので、とても知りたいという意欲はあったのだけれど、私は自分が喋ったり何か体を動かしていないと、生理的に眠くなってしまう体質だったのだ。　マヤは自分が喋る番が終わると、コーンフレイクのような食べ物を可愛い前歯でかじり、それから小さなストローが付いているピンク色の液体を必ず啜った。　そして、その度に「うまっ！」と云った。　それを見ていると私のお腹もグウと鳴ってしまった。　「やあ、これは！すっかり調子に乗って喋り過ぎてしまいました。ユウカ様、どうかお許し下さい！」　「いいえ、初めてお聞きするお話しばかりで・・・　とても直ぐに信じることは出来ませんけど」　「ええ、勿論です！でも、ユウカ様にはどうしてもこのお話はしておきませんと、私たちの戦いやユウカ様にお願いしたいことなどを正確にお伝えすることが出来ませんからね！」　「お二人は戦っていらしゃるんですか？お二人共凄い方なのに、人間の私なんかがお役に立てるとはとても思えませんわ」　「いえ、どうしてもユウカ様のお力をお借りしたいことがあるのです！」　「こんな私に」　「ええ、そうです！ユウカ様にです！」　「私、何だか怖い・・・」　本当は「私、何だか眠い・・・」が正しかったのだが、ちょっとばかり震える乙女を演出してみた。　「大丈夫です！ユウカ様なら絶対に！」　精霊の世界には、演技という概念はないらしい。　リンドウは自分の席を立つと、私の手を強く握り締めてそう云った。　私は女の感で、この辺りにリンドウ攻略の手掛かりがありそうだと思った。　「ねえ、二人共、食べないの？ウチはもう食べ終わったから寝るよ！」　マヤは、手を取り合っているリンドウと私の周りを何周か回った。　「うん、そうだね、食べよう！折角、僕が一生懸命作ったんだからね」　「ええ、戴くわ。リンドウ様お手製のスープが冷めたりしたら勿体ないですから」　私の淑女言葉も、段々と板に付いて来た。　　「じゃあ、ウチはもう寝るね！今日のウチは２０年分くらい働いたんだからね。リンド、ちゃんと約束通り人間の世界に連れていってよね！」　「うん、分かってるよ」　リンドウの言葉を待つ様子もなく、マヤはさっさと自分の寝室に戻った。　ダイニングルームには、私とリンドウの二人きりになった。　先刻まで、眠くて仕方がなかった私は、リンドウと二人きりになった途端、眠気などどこかへ吹き飛び、心臓がまたバックンバックンと鳴り出した。　「お祈りはもう済ませてましたよね！じゃあ、戴きましょう！」　「ええ」　私はそう云うと、冷え切ったスープを口にしたが、そのスープは冷めているどころか程良い暖かさを保っていて、口の中に入ると直ぐに水蒸気に変わった。　「これは？」　「人間も、妖精も、それから僕のように人間に偏在したばかりの精霊も食べることが出来るスープですよ」　とリンドウは云った。　そのスープは昔懐かしい、それも子供の頃なんかの最近ではなくて、もっと昔の、前世か前々世で食べたことがあるような匂いと味がした。　そして、それは飲むというより、水分を一杯含んだ気体を吸っているという感じのスープだった。　「精霊は普段から全然食しませんし、妖精もお祭りの時期以外は何も食べません。ですから、もしユウカ様が、お祭り以外の時期に妖精の世界に行かれて何かを食べてしまったら、もう人間の世界には戻れなくなってしまうんですよ！」　「まあ？」　「ここの食事は、僕やマヤにとってのリハビリ食みたいなものですから、ユウカ様には少し物足りないと思います」　「いいえ、とても美味しいですわ」　私はそう答えたが、それは嘘ではなかった。　パンもサラダも、全て気体になって私のお腹の中に入ったけれど、次元を超えた究極の美味しさがあって、空腹感に優しく浸透していく素晴らしい料理だった。　グワーン！　その時、突然、とてつもなく大きな爆発音がして、ポイントビューウィックが激しく揺れた！　「ギャ！」　私は、その衝撃で椅子ごと振り飛ばされて壁に激突した！　これが私のワンルームで起こっていたら私は即死していただろう。　私は仰向けに空中を飛んで頭から壁に衝突し、床の上に上半身から落ちて、その後で足の部分が壁にぶつかった。　そのため、海老のような形で床にめり込んだ私は、ドレスの裾が捲れ、下着も何も着けていない下半身が上になっただけではなく、剥き出しになってしまっていた。　ポイントビューウィックの壁と床が衝撃を見事に吸収したために、私には怪我ひとつなかったが、それは気絶するくらい恥ずかしい格好だった。　「トカゲめ！覚えてらっしゃい！」　下着を着けないことを提案した、爬虫類の脳を殺してしまいたい気分だった。　「こんなに早くここに気付かれてしまうとは！」　幸いにも、リンドウはあのくらいの衝撃では怪我がないことを知っていたのか、私の方には一瞥もくれず、コントロールボックスのような装置の前で必死に何かをインプットしていた。　　私は素早く立ち上がると、何事もなかったかのようにドレスの裾を直した。　「リンド！ウチどうしよう？」　マヤが寝室から出てきた時に２度目の爆発音と衝撃がポイントビューウィックを襲った。　私は、今度はドレスの裾を押さえながら壁に激突した。　床へ落ちる時も上半身と下半身の高さを保ったために、海老状にはなったが横たわるような姿勢で倒れることが出来た。　今度はリンドウは直ぐに私のところにやって来た。　「良かった！リンドウが来るのが１回目ではなくて」　私がそう思った時、後ろからマヤの声がした！　「リンド、ウチだけで戻るよ！」　「駄目だマヤ！お前だけではとても無理だ！」　リンドウはそう叫ぶと、私の手を掴んで、ダイニングルームの中にあったカプセルのような物の中に私を押し込んだ。　「ユウカ様、敵が攻撃して来ました！私とマヤは一旦戻って状況を立て直します！必ず迎えに来ますから、このカプセルから絶対に出ないで下さい」　「リンド、もう時間が無いよ！」　マヤが叫んだ！　「分かってる！じゃあ、ユウカ様、必ずお迎えに参ります！」　リンドウは私に背を向けて走り出した。　「あっ、リンドウ様、待って！」　私がそう叫んだ時、カプセルが作動し始め、私の体に圧力が加わり、私は座席のような部分に自動的に固定された。　「迎えに来るって云ったて、私はこれからこのカプセルで何処に行くのよ！」　声を枯らしながら私はリンドウに向かって尚も叫んだが、二人の姿は寝室の方に消えて見えなくなった。　「うん、もうっ！リンドウの馬鹿！」　そう罵った瞬間、体がバラバラになりそうな激しい圧力がかかり、私はカプセルの中で気を失った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 29, 2005

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バルト海の守護神

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第３章　（第４回）　マヤは、それからも私を挑発するように何度か私の頭の周りを飛び回ったが、先刻の動きを見ればとても私に捕まえられそうな感じがしなかったことと、そんなパワーがあればリンドウ攻略の為に残しておくべきだという計算も働いて私は素直に降参した。　「え～っ？つまんないの！人間ってもっと面白いと思っていたのに」　マヤは洗面台の上に腰を下ろした。　「ねえ、マヤさん、リンドウ様とは長いお付き合いなの？」　まさかリンドウがこんな小娘を相手にしていると思ってはいなかったが、何かリンドウに関する情報が得られればと思って、私はマヤに探りを入れた。　「リンドウ？あいつはクソ真面目で全然面白くないヤツなワケよ！勿論、限りなくいいヤツだからウチがムカついたりしないで済むから、まあいいかって感じなんだけど」　「面白くないって？」　「だってさぁ、あいつって元々精霊じゃん！確かに今は急に人間をやらなきゃならなくなってるけど、ウチのように妖精しかなれない子から見たら優等生過ぎてさぁ」　マヤは私の話に乗ってきた。　「リンドウ様が精霊？」　「オバはん、ホントに何も知らないんだ！」　マヤはびっくりした顔をして、それから少しだけ私に同情的な表情になった。　「マヤさん、お願いだからそのオバはんって云うのは止めにして呉れる？私の名前は由佳だから」　「そんなの知ってるよ」　「じゃあ、ちゃんと名前を呼んで頂戴！」　「ちぇ、オバはんの方がアンタにはピッタリなんだけどなぁ！だけどリンドみたいにユウカ様なんか絶対に呼ばないからね」　「ええ、いいわよ、ユウカさんで十分！ところで妖精と精霊ってどこがどう違うの？」　「ふ～ん、オバはん、あっ違ったユウカさん、アンタ完璧に何も知らないんだね！あ～あ、教育係なんか引き受けるんじゃなかった」　「リンドウ様が今は人間ってどう云うこと？」　「だからぁ、リンドは１０日くらい前まで、バルト海ってとこで守護神をしていた訳よ！」　　　　「守護神？」　私は完全に訳が分からなくなった。　「人間の世界に、バルト海ってとこがあるんでしょ！ウチは人間の世界にまだ行ったことがないから分かんないけど、兎に角、リンドはそこで精霊としての任務についてたって訳！分かったぁ？」　そんなに簡単に分かる筈がない。　私は首を横に振った。　「んもうっ！ウチは妖精だから言葉で説明すんのは苦手なの！後はリンドに聞いてよね」　マヤは段々、プリプリし始めて来た。　「そんなことよりさぁ、メシを喰いに行こうよ！リンドが作ってる筈だから。アイツ、料理の腕だけは確かなんだよね」　マヤはそう云うと、さっさと独りでダイニングルームの方へ飛んで行った。　マヤと話をしたお陰で、リンドウは元々バルト海の精霊で守護神もしていたけど、今は何故か人間をしていて、本当の名前はリンドだと云うことが分かった。　そんなこと、マヤと会う前だったら絶対に信じたりはしなかったのだけど、現役の妖精を見てしまった以上、それを嘘だと決めつける根拠も私には無かった。　と云うことは、もしそれが本当だとしたら？　もしそれが本当だとしたら、私はそんなことは知りたくなかった。　だって、そんな男に恋愛を挑んだりしても勝ち目なんかないじゃん！　精霊までなら、まだ何とかなりそうな気もするけど、守護神じゃ一体どんな恋愛をすればいいのよ！　第一、守護神との恋愛パターンなんか想像が出来ないよ！　　何となくブルーが入り始めた時、リンドウが先刻、昔バルト海で精霊や守護神ではなく妖精をしていたと云ったことを私は思い出した。　「嘘つきの守護神なんかも居るわけ？」　もう、私が何も知らないと思って、皆でいい加減なことを云ってるんじゃないでしょうね！　私を騙すと後が怖いんだからね！　私は段々、挑戦意欲が復活してきた。　そして兎に角、リンドウの口から私が納得するまで、じっくりと真実を聞き出そうと覚悟を決めた。　それと、例え本当の名前がリンドであっても、私にはリンドウの方がピッタリ来るので、彼のことをこれからも私だけのスペシャルネームで呼ぶことも決めた。　「やあ、ユウカ様はこちらにお座り下さい」　私が一世一代のセクシーな勝負服を着ていると云うのに、リンドウはそれには全く気付かずに、せっせと食事の準備をしていた。　やはりマヤが云ったとおり、リンドウはとびきりの優等生で、しかも筋金入りの堅物なのかも知れなかった。　つい１０日前まで守護神だった訳だから、浮世離れしていても仕方がないと云えば仕方がないのだけれど。　「えっ～？これだけ？」　私は思わずそう口に出掛かった。　お腹が減っていたこともあって、内心、豪華な晩餐を期待していたからだ。　それにマヤが、リンドウに料理の才能があると云っていたので、それを確かめてみたい気持ちもあった。　でもこれじゃ、料理の腕なんて振るいようがないわね？　食卓に並んでいたのは、スープとパンのようなものと、初めて見る野菜のようなものだけだった。　「父なる神と、なんたらかんたらの恵みと、なんたらかんたらに感謝して、なんたらかんたらの・・・・」　リンドウの長いお祈りが終わって、私たちは食事を摂ることになった。　父なる神以外は、全く聞き慣れない名前だった。　バルト海に関係がある名前なのかしら？　私はそう思ったが、同時に１０日前まで守護神をしていた男と人間の世界に行ったことがない妖精が、何故こんなに人間の言葉が、しかも日本語が上手に話せるのか素朴な疑問が湧いてきた。　リンドウの顔立ちは、あれだけ端正であるにも関わらず無国籍な雰囲気があって、私はこれまで彼が日本語を喋っていることに違和感がなかったのだ。　モリヤの笛を通じて、既に日本語で彼と会話をしていたからかも知れない。　「ユウカ様、私たちは妖精と精霊ですから、厳密な意味では、人間のような言葉と云うものを持ちません」　「・・・・・」　「従いまして私たちが今、お話している言葉はユウカ様のなかにある言葉の破片を集めて、私たちの思いに一番近い言葉が選ばれて伝わっております」　「そう、だったんだ」　「私たちには、自動翻訳装置が内臓されてるってわけぇ！」　食卓の上に置かれた小さな椅子に座っていたマヤが、私たちの話に割り込んできた。　私の教育係と云うことを意識している風だった。　しかし、彼らの言葉が私のなかの辞書を使って話されていることを知って、私は少なからずショックを受けた。　リンドウは兎も角として、マヤの品がない言葉使いも、元々私の中にあったものだと云うことになるからだ。　「ユウカさん、どう？ウチの言葉、人間の世界に行っても通用するかな？」　「えっ？ええ、勿論よ！可愛い感じがするわ」　私はお世辞を云った。　「やったーっ！ウチ、一度でいいから人間の世界に行ってみたいんだよね、だって何か楽しそうじゃん、ねえリンド？」　「そうだね、マヤ良かったね」　「うん」　マヤは自分の椅子の周りを一周した。　「マヤのお祖母さんと私は、昔からの知り合いでして」　「その時、リンドは失恋したんだよね！」　「マヤのお祖母さんに？」　私は訊ねた。　「ギャハハ、そんな訳ないじゃん！だって、リンドが妖精に偏在した時、リンドは女の子を選択したんだよ！」　元々は、私の言葉で構成されていると云うのに、悲しいくらい私にはマヤの言葉の意味が理解出来なかった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 26, 2005

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マヤ登場

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第３章　（第３回）　ビューウィックのバスルームは私のワンルームの３倍くらいはありそうな、広くて豪華なものだった。　そしてバスタブも大きい。　「まあ、何てキメが細かいお湯なのかしら」　私はそこに張られているオーシャンブルーのお湯に触れてみて、その水質の良さにまず驚いた。　お湯は入浴に適した温度であったにも関わらず、その表面は常に水蒸気で低く満たされていて、丁度、それが泡の役目を果たしていた。　「よいしょっと」　私は、バスタブに横たわった。　女も２６歳にもなれば、何か体を大きく動かす時には、掛け声が必要になって来るのだ。　「ふいーっ」　完璧な湯加減と入り心地だった。　先刻、手で触れた時には分からなかったが、実際に入ってみるとここのお湯には相当の質量があって、比重が重そうな感じがした。　そして水蒸気からは、絶え間なくフィトンのような癒される香りが立ち昇って来ていて、私はとてもリラックスした気分になった。　しかも、周りを囲んでいる大理石風の壁や床も、触るととてもソフトな素材で出来ていた。　「もしかしたら、ここは本当に異次元の亜空間？」　もし八木沢がここに一緒にいたら、空間デザイナーらしく眼を輝かせてあれこれと観察し、推理した答えを嬉々として説明してくれるだろうと思った。　「八木、私、やっぱり変なところに連れて来られたみたい」　まだ、ビューウィックで目覚めたばかりだと云うのに、八木沢のことを思い出すと、何か懐かしい感じがした。　そして早くも、ここが都内の某所であるのか、或いは本当に異次元の亜空間であるのかということは些末なことのように思えた。　「八木、私、こっちですっごい美形に会ったんだよ。私まだくらくらしてるよ。リンドウって云うんだけど、彼が誘拐犯だったんだ」　私は、八木沢に心の中で報告した。　「でも私、彼にマイっていて、もしかしたらロマンスに発展するかもね。その時は八木にも彼を紹介してあげるね」　私は、勝手にリンドウとのロマンスを想像し、独りで顔を赤らめた。　　ビューウィックのバスルームにはシャワーがなくて、タワシのように体をごしごし擦るものも置いてなかったため、疲れは取れたのだけど少し物足りないバスタイムになった。　私は皮膚がふやける前に、そそくさとパールホワイトのバスタオルを体に巻きながら、隣合わせになっているドレスルームに入った。　ビューウィックのバスタオルは、信じられない程の細い繊維で織られていて、瞬く間に私の体に付着していた水分を吸い取っていった。　少し濡れた髪で、露出が大きいドレスを着ることでセクシーさを強調して、リンドウを一撃でノックアウトしたかった私は、バスタオルが余りに私の髪から水分を奪うので、慌てて髪を拭くのを中止しなければならない程だった。　ワードローブには、沢山の女性用の衣装が吊るされていた。　コスプレマニアや衣装好きな人なら堪えられないような珍しい色彩とデザインの服が多かった。　だが私は、普段からあまり服に凝る方ではなくて、地味目のスーツやバーゲンで買った安物の服ばかり着ていたので、果たしてどの衣装が自分に似合うのか全く想像がつかなかった。　想像がつかないながらも、今日の私は一世一代の大レースに赴くジョッキーのように、勝負服にはとことん拘りたい気分だった。　私はまず色目のことから考えることにした。　リンドウは紫色の服を着ているから、それに一番似合うのはどの色なのかを考えた。　ワードローブの扉を次々と開けていくと、ひときわ鮮やかなワインレッドのドレスが眼に止まった。　取り出してみると、私のサイズより一回り大きい感じがしたが、ノースリーブで胸元が大きく開いていて、露出度は申し分なかった。　試しにそのドレスを着てみると、最初私には少し大きいかなと思った着心地が嘘のように、衣装側で勝手に体の線にアジャストしてきて、逆に何も身に着けていないような頼りなささえ感じられた。　姿見に映してみると、そこにはいつもの私とは全く違ったセクシーで清楚な女性の姿が映っていた。　「私って、もしかしたら本当はいい女だったのかもよ」　私は生まれて初めて、自分の姿に見惚れた。　そのドレスは、体で感じるジャストフィット感に反して、見た目にはふわっとした感じがあった。　そのうえ、私が特に気に入った部分でもあったが、そのドレスは私の貧しい胸を自動的に強く引き上げてくれていて、胸に谷間らしき窪みまで形成されていた。　　　「クククッ、これにすべぇ」　私は大いに満足したが、　「幾らなんでもそのショーツはなかんべぇ」　私の爬虫類の脳は、トカゲの癖して私のファッションにアドバイスを試みた。　しかし云われてみると、先日、デパートの特売コーナーで買ったそのショーツは、この神々しいまでに高級なドレスには不釣合いのような気になってきた。　それに体を動かしてみると、姿勢によってはショ－ツの線が見えてしまうことも分かった。　私は、それからワードローブの中を全部調べてみたが、中世風の下着が相当数あったが、どれも現代の女性がこのドレスの下に着れるような代物ではなかった。　「じゃあ、一体どうすんのよ？」　私はトカゲに訊ねた。　「脱いでしまえばよかんべぇ。ここは亜空間なんだから問題は何もなかんべぇ」　相変わらず非論理的な思考をする脳だったが、ショーツを脱いでみると、それまで体とドレスを隔離していた空間が埋まって、うっとりとするいくらい完全無欠な着心地になった。　「やっぱ、勝負をする女はこうでなきゃねぇ」　トカゲと遜色ない非論理的な言葉で締めくくって、私のお着替えは完了した。　ワードローブの脇にある洗面台には、何かの金属で出来たマグカップが置いてあって、その中に緑色の液体が満たされていた。　その液体で口の中を濯ぐと、シューッと口と喉全体にガスが拡がり、私は２６年分の口臭が一挙に無くなったような爽快な気分になった。　おまけに、私は煙草は吸わないのだが自然に黄ばんでいた歯も抜けるように真っ白になっているではないか。　「私、ここに居たら段々綺麗になっていくみたい」　八木沢やアストラルのマスターが、見違えるように綺麗になった私を見て、どんな顔をするか想像するだけでワクワクした。　まあ、それも元の世界に戻れればの話だけれど。　兎に角、今はリンドウの話を詳しく聞いてみるしか方法はなさそうだった。　私は、それからもしつこく鏡に向かって、自分の歯茎や舌先が、もしかしたら綺麗になっているかも知れないと思って丹念に調べ直した。　その時、鏡に何か緑色っぽい物体が映ったような気がして、振り向いた私はそのまま腰を抜かした。　「ふ～ん、オバはんって聞いてたんだけど、思ったよりは少しマシじゃん！」　　その身長４０センチ位の生物は、ソプラノがかった声でそう云うと、腰を抜かした私の体をジロジロと眺めた。　最初、緑色に見えたその生物は、良く見るとハイレグ水着のような服と羽根の色だけが緑色で、それ以外はショートヘアのとても可愛い女の子だった。　昔、八木沢がハマっていたゲームに出ていた、ピクシーだか、ポクシーだかの妖精にそっくりだった。　妖精？　「じゃあこの娘がマヤちゃん？」　マヤが現役の妖精だと云っていたリンドウの言葉を思い出して、私はそう呟いた。　「ぴん、ぽょ～ん！大当たりぃ！」　マヤは私の顔の周りを何周か飛び回って、　「ここには、リンドとウチしか居ないんだからね、当たってアタリマエじゃん！ばっかみたい」　そう云って後ろを向くと、短い尻尾を私の鼻先に向けて２、３度フリフリした。　「ふ～ん、そう来たか」　本物の妖精が出てきた以上、私はただのクソ度胸ではとてもここで生き抜いていけないことを直感した。　私はクソ度胸を一旦胸の奥に仕舞い込むと、今度はクソクソ度胸の出動レバーに手をかけると一気に倒しながら、ゆっくりと起き上がった。　「ねえ、マヤさん。あなたは確か私の召使いだったわよね」　自分でも怖いくらいの猫撫で声だった。　「ぶっ、ぶぅ゛ー！大外れぇ！ウチはアンタの教育係なんよ。びっしびっしいったるでぇ！」　「リンドウ、話が違うじゃんか！」　気が付くと、何時の間にか猿の脳がブルペンで投球練習を始めていて、私に向かってスタンバイオッケイのサインを出した。　「猿はすっこんでな！」　私は、にっこりと笑いながらマヤに近づき、　「ねえマヤさん、マヤさんの年頃ってオイタをしたい年頃なのよねぇ」　と云うと、素早くマヤの尻尾を掴もうとした。　ところが、マヤは小さな体だったが、私が思った何倍も動きが素早くて、私の手のひらは空を掴んだ。　「オバはん、とろ過ぎ！」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 24, 2005

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妖精

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第３章　（第２回）　「がはははは！」　リンドウも私につられて一緒に笑った。　アングロサクソンごときでは足元にも及ばないその端正なマスクで、そんなに豪快に笑って大丈夫なの？と思わず心配したが、笑った時のリンドウの眼がどうしようもなく可愛いことを知って、私はまたじゅんとなってしまった。　「このままじゃ、私、精神分裂症になっちゃうよ」　私は爬虫類か猿か、どちらかの脳に統一しなければならないと思った。　そして私は少し悩むふりをしたが、本当は心の奥で元々決めていた爬虫類の方を選択し、猿は封印することにした。　「おうお、いいのかよ、俺引っ込んじゃっても。お前、相手は誘拐犯なんだぜ！ラブラブなんかしてる場合かよ」　猿の脳が反論した。　「分かってる。でも、これだけの美形にはもう二度と会えない気がするの。それに笑った時の瞳を見たでしょ？彼、絶対悪い人ではないと思うの」　「ちっ、よく云うぜ！後で泣いても俺は知らないからな！」　「大丈夫、後悔なんかしない」　「ふん、トカゲの方を選んでいつも後悔してる癖に！」　猿の脳はそう捨て科白を吐いて、私の脳裏から姿を消した。　「ユウカ様、そろそろ全てをお話しなくてはなりません」　「ユウカ様？」　「ええ、ユウカ様、その前にまずはポイントビューウィックにようこそおみえ下さいました！」　リンドウは感極まった感じで私に云った。　「何、寝言云ってんだよ！こっちが来たんじゃなくて、てめえが誘拐したんだろが！」　もし猿の脳がまだ健在だったら、きっとこう答えたに違いなかったが、　「まあ、私って歓迎されているのね」と努めて上品に相槌を打った。　「勿論ですとも！ユウカ様！」　何時の間にか、私はイエローピッグからユウカ様に格上げされていた。　私の名前は由佳だが、確かにユウカの方が何となくここの雰囲気には似合いそうな感じもした。　それに「様」が付く以上、取り敢えず茄子と一緒に炒めて食べられることはなさそうだったし。　「イエローピッグなんて紛らわしい名前を付けるから、余計な心配をしちまうだろが！このボケ！」　猿の脳はまだ成仏していないようだった。　「お黙りっ！」　私は、今度は容赦なく完全に猿の脳を封印した。　「リンドウ様、ここは一体何処ですの？」　ピンクのパジャマを着たまま喋るような科白ではないと思ったが、何故かスムーズに言葉が出た。　私は幼い頃から、独りの時は小さな事にくよくよ悩むのだが、他人がからむと急に冷静で大胆になる傾向があった。　そして窮地に追い込まれると平然と開き直るのだ。　亡くなった父は、よく私に「お前にはクソ度胸がある」と褒めてくれていた。　「ユウカ様、ここはビューウィックという亜空間です」　「アクウカン？」　「ええ、これからの大事に備えて、特別に確保した場所です」　「大事？」　私にはさっぱり分からない話ばかりだった。　「ユウカ様には何もお伝えしていなので、ご存知なくても仕方ないのですが」　　「・・・・・」　「それより、お腹が空かれたでしょう？お召し物もお着替え下さい。ああそうそう、お体も湯殿で温めて下さい！話はその後で」　私は八木沢の為に、お風呂にお湯を張っていた時に誘拐されたことを思い出した。　八木沢はあれから私のワンルームに来たのだろうか？　私の姿が見えなかったので驚いたに違いない。　それから竜巻も起こっていたから、私の部屋は今頃、現場検証をされているかも知れなかった。　どのくらいの時間、気を失っていたのかは分からないが、アストラルで少し食べただけだったから、確かに空腹感はあった。　そして、シャワーも浴びていなかったので、お風呂は有り難いと思った。　だが、化粧品の類は何も持って来れていないので、お風呂に入ればその後はスッピンになってしまう。　「まあ、いいか。リンドウ君の競争相手はいないみたいだから、ここはひとつスッピン勝負で行ってみるか」　私は持ち前のクソ度胸を更に発揮することにした。　「今はちょっと出掛けていますが、ユウカ様の召使いを後で紹介しますね」　「えっ？召使い？私に？」　「そうです。ユウカ様はこちらのことがお分かりになりませんから、召使いが色々とお世話を致します」　わーい！私はついに召使いを持てる身分になったんだ。　すごく嬉しい気分になったが、どうせならリンドウ様にお世話してもらえる方がもっと嬉しいのだけれどと云いかけて私は慌てて口を押さえた。　それから、好事魔多しって云うから、まさか召使いってハゲたエロ爺だっりしないよねと少し心配になった。　「リンドウ様、私の召使いって男の方ですの？」　「まさか、女の子ですよ。名前はマヤと云います」　「マヤちゃんですの。その方はお綺麗な方ですの？」　リンドウの丁寧な言葉に合わせて、私も貴婦人にでもなったようにするすると上品な言葉が出だした。　私はその場の雰囲気をブチ壊すことも得意だが、合わせることだってかなり上手いのだ。　「見かけは可愛いタイプかな？昔は一部に熱狂的なファンがいたこともありましたからね」　「まあ、そうなの」　「ええ、ユウカ様も彼女に会えば、ここが亜空間であることをきっと信じてもらえると思いますよ」　「オホホホ！」　「何しろ、彼女は現役の妖精ですからね」　「はいはい、楽しみにしておきますわ」　私はまず、お風呂から先に使うことにした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 23, 2005

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竜胆（りんどう）

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第３章　（第１回）　「お目覚めのようですね。ご気分は？」　私の意識が戻るのとその言葉を聞いたのはどちらが先だったのか。　私がその言葉をしっかり理解出来たと云うことは、私の目覚めの方が早かった筈だが、私の感覚の中ではそれはほとんど同時に起こっていた。　それから僅かな時間が過ぎて、私に最低限の思考力が戻った瞬間、私はがばと跳ね起きた。　理由は無かったのだけれど、直感的に私は素っ裸にされたうえに、頑丈な椅子だか十字架だかそんな硬いものに固定されて、すごく恥ずかしい格好になっているような気がしたからだ。　私は素早くベッドから降りながら自分の格好を改めて確認した。　素っ裸にされていると云うのは私の被害妄想で、実際は私はモリヤの笛から搬出された時に着ていたピンクのパジャマを着たまま、中世風の豪華なベッドに寝かされていたのだった。　取り敢えず私は、服を着ていたことで最低限の余裕が出て来て、　「ぎゃー、人殺し！」　と叫んだ。　２６年生きてきて、これだけ無条件に大声で叫んだことは生まれて初めてだった。　その瞬間、私の心の中に長く満たされないまま沈殿していた何かが、少なくともその表層部分はその叫び声と一緒に弾け飛んだ。　一種のカタルシス作用が起こり、私はこれまで味わったことがないスッキリとした気分になった。　そして今度は、私に声をかけた男の顔と姿を、ゆっくりと視覚的に捉えることが出来た。　「大丈夫だから！心配しないで」　その男は、ノリ的にはハグのような感じだったが、実際は私の肋骨が何本折れたのかを数えなければならないくらい力任せに私を抱き締めた。　「きゃ～、助けて～！」　その痛みにも似た感覚が私にその言葉を発させたが、１０秒前に「人殺し」と叫んだ時とは明らかに異なる領域からその声は出ていた。　彼の顔と姿を捉えた私の視覚から、情報が脳に伝達され解析されていたからだ。　「うそ?」　私は心の中で呟いた。　私の脳の解析結果は、無茶美形、無茶マブい、無茶イケてる、無茶素敵！　そして脳は、念のため私の美的嗜好に照合した。　私の美的嗜好は、それまで彼と比較出来そうな対象を見たことが無かったにも関わらず、理想的とかと云う次元をはるかに超えた完璧、究極、至高のイケメン男と断定し、　「この男性こそがあなたのツボです」　と私にお墨付きまで与えた。　「もうっ、甕壺でも骨壺でも持って来て！」　私はそう叫びたい気分になった。　それから、そのイケメン男が私を強く抱き締めているため、私の細い腕と脚は剃り返っていたが、同時に私の乳房が彼の引き締まった胸板に押し潰されていることにも気付いて、眩暈がして私は全身から全ての力が抜けてしまった。　「痛い」　イケメン男の顔に見惚れていた私は、漸く体の締め付けが異常にキツいことを思い出した。　「あっ、でしたね。力加減が十分インプットされていなかったから」　そう云ったかと思うと、彼は一気に私から両手を離した。　その為、背中側に剃り返っていた私は、足先から彼の身体の線に沿ってずるずるとスルメのように倒れ込んでいった。　物理的に彼の、男の人だったら一番敏感な場所に、もろに顔が触れながら倒れ込んでいったために、私は全身がカッと熱くなった。　そして最後は、相当惨めなうつ伏せの状態で両足をバタつかせなければならなかった。　「大丈夫？」　彼は、まるで私が王女様でもあるかのように、甲斐甲斐しく私を抱きかかえた。　この行動の力加減はインプットされていたらしく、今度はとてもソフトで、抱かれ心地は最高だった。　「お前はロボットか？」　思わず突っ込みを入れたくなったが、そのイケメン男の顔と姿をしげしげと眺めて見ると、私のさして広くないストライクゾーンのその又針穴程の芯を、彼が見事にブチ抜いていることを悟った。　姿の方だって、イケメン男は紫色のシルクローブのような物を纏っていて、普段の私だったら、　「ふざけるのもいい加減にしろよな、このヴォケが！」と蹴りを決めたくなるのだが、昔、母に無理矢理連れて行かれた歌劇団で観た、アンドレだかオスカルだかラスカルだかの服装が、その神々しい彼の風貌に良く似合っていると思った。　私って面喰いだったんだ！　そう悟った途端、私の心臓は体の外に飛び出してしまうのではないかと思うくらい、ばっくんばっくんと激しい鼓動を繰り返し始めた。　「これまでのご無礼をお許し下さい。実はこれには深い訳がありまして」　「あのう」　「はっ？」　鼓動が高鳴っただけではなく、呼吸まで荒くなってゼイゼイ云い始めて来たので、このまま抱かれた状態で溶けていきたい気持ちもあったが、　「降ろして！」　「あ？」　「下さい」　毅然とした云い方になったため、彼が傷ついてはいけないと思って、私は丁寧語を付加してフォローした。　「でしたね」　「ギャー、コラ！　一気に手を離すな！　このままの状態で落ちたら後頭部を打っちゃうでしょ！」　「でしたね」という彼の言葉に反応した私は、先刻、丁寧語でフォローしたことなど忘れて叫んだ。　イケメン男は今度は丁重に私を抱えたまま、ゆっくりと私をベッドの上に座らせた。　「先刻、手を離したりしたのはわざとだったの？」　そう思えるくらい、イケメン男の所作はスムーズで気品に満ちたものだった。　「力加減の修正は完了しました」　イケメン男は私にそう報告した。　彼がもろに私のタイプだった為に、これまで私の古い爬虫類の脳が思考して官能的で非論理的な反応を示してきたが、誘拐されたと云う事実を思い出して、私が猿になってから獲得した新しい脳がむくむくと彼に抗議することを要請した。　　　「ちょっとアンタ、一体これは何の真似よ？」　「ここは何処なのよ？」　「私をどうするつもり？」　２分程前に、可愛いらしく「降ろして下さい」と云った女と同じ女だとはとても信じてもらえない剣幕で私は一気に捲し立てた。　「落ち着いて！」　これだ！この表情と状況に私は弱いのだ。　八木沢で何度か経験したことがある。　困惑と親愛が入り混じった表情で、私が喚いた瞬間に冷静にしかし優しく嗜められる。　私のウィークポイントに必殺の一撃が決まって、私はこのゲームをエクセレントで失ったことを知った。　私の猿の脳は完全に出番を失って、爬虫類の脳が私を全面的に支配した。　彼を見つめる私の瞳はうると輝き、濡れそぼける感覚が全身に芽生えはじめ、私の心と体はじゅんとなってしまった。　「僕の名前はリンド！」　「リンドウ？」　「そう、リンドです！」　彼が身に纏っていた紫の衣装と、竜胆の花の色が重なって、　「リンドウ、リンドウ、リンドウ・・・」　そう何度も呟く私に、私の爬虫類の脳は、　「とても麗しい響きのお名前ですこと」　と彼に云うことを薦めた。　「とても麗しい響きのお名前ですこと」　私は爬虫類の脳の薦めに従った。　「へっ？そう？僕の名前が麗しい？ギャハハ」　取り敢えず、彼の脳と私の爬虫類の脳の相性は悪いみたいだった。　「リンドウ、あなたは一体何者なの？あなたが私を誘拐したんでしょう？」　「ええそうです。本当に申し訳有りませんでした。実は僕はかつてバルト海で妖精をしていた者なんです」　「妖精？アンタが？」　今度は、私の猿の脳の方が、私にゲラゲラと笑うことを要請した。　「ゲラゲラゲラ！」　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 21, 2005

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クロロホルム

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第２章　（第３回）　「困るんですよね」　「はあ」　「我々も忙しいので、もっと真剣に答えて戴かないと」　「・・・」　「八木沢さん、聞いてるんですか」　「えっ？」　昨夜は酔い潰れた時と明け方にちょっと眠っただけだったので、睡眠不足と二日酔いで体調は最悪だった。　今日の現場検証には、専門家の捜査官と作業員らしい服装の男が数名来ていて、思っていたよりずっと本格的な検証が実施されていた。　そして彼らは、今回の事件が空き巣や強盗による犯行ではないと直ぐに断定した。　確かに素人の俺でもそう断定出来そうな状況が揃ってはいたが。　調度品があれだけ粉々になったのに、窓ガラスは全く割れておらず、施錠も完璧だったからだ。　あそこで俺がナイフにでも刺されて死んでいたら、歴史に残る完全密室殺人事件になっていたかも知れなかった。　外部からの不審な侵入者がいないとすれば、後は合鍵を持っている者の嫌がらせか狂言という事になる。　捜査官の話では、捨てられた女性が合鍵を使って男性の部屋に入って、腹癒せに花瓶とかを割ることは時々あるらしかった。　その話を聞いて、由佳だったら別れ話の仕方次第では、このくらいのことはやりかねないと思って俺はニヤリと笑ってしまった。　それを見ていた捜査官が、只でさえ要領を得ない俺の話に苛立っていたこともあって苦言を呈したのだった。　捜査官の口振りからは、今回の事件とテロとの関連を疑って俺の背後関係を調べた形跡が感じられた。　勿論、俺にテロリストの友人はいないのでシロだと判明したが、念のため爆発等があったかの検証をしていたようだ。　暫くして、作業員が捜査官に何か耳打ちして現場検証は終わった。　「我々はこれで引き上げますが、もし合鍵を渡している人を思い出したら連絡してみて下さい。それじゃ」　「あ、どうも」　俺は捜査官にぺこりと頭を下げたが、捜査官がちっと舌打ちしたのを聞き逃さなかった。　結局、捜査官は今回の事件は俺の狂言だと思っていたのだ。　狂言の場合、それを証明するのが技術的に難しいと云う話を聞いたことがある。　多くの場合、警察は立件せずに内部的に処理をしてしまうようだ。　ましてや、今回のように被害を受けたのが狂言者である俺だけという、阿呆らしくて間抜けな事件では尚更だった。　捜査官は俺の部屋を出て、エレベーターに向かう途中で、　「まったく人騒がせな野郎だぜ」　と吐き捨てるように云った。　彼らを見送った後、俺がそのままぼうっと突っ立っていることに気が付かなかったのだ。　その時、俺は注意力が散漫な捜査官だと思ったが、「モリヤの笛」のことを彼に云わなくて正解だったとも思った。　「なるほど、そうでしたか」　アストラルのマスターは、いつもの偽善者然とした微笑を湛えながら、落ち着いた口調でそう云った。　今回の話を聞けば、普通はもっと驚きさそうなものだが、マスターは俺に何も質問をしないばかりか、まるで予想していたかのように、　「今日の夕方にでもお店の方にみえませんか？　もしかしたら役に立つかも知れない人を呼んでおきますから」　と云った。　「えっ？」　藁をも掴む気持ちで相談した俺は、マスターの意外な言葉にあっけにとられた。　「八木沢さんもご存知の人物です。詳しいことはその時にお話します。それじゃ、私はちょっと急ぎますので」　そう云うとマスターは、ぽかんとしている俺を残して喫茶店を後にした。　　「役に立つかも知れない人を呼んでおくだと？」　正直に云うと、俺はマスターの何となく得体が知れない雰囲気にいつも馴染めない気持ちを持っていた。　由佳が一緒の時は大いに盛り上がるのだが、マスターと二人の時は、俺の調子が狂って、俺だけが酔い潰れるというパターンが多かったのだ。　そして、由佳に云わせるとマスターは俺の千倍くらい頼りになるらしかった。　マスターからはトラブルを解決してくれそうなオーラが出ていて、俺からはトラブルを起こしそうなオーラが出ているとも診断してくれた。　悪かったな、トラブル発生男で。　由佳の言葉を思い出して俺は不貞腐れそうになったが、潜在意識のなかで俺もマスターを頼りにしていたから、気が付いたら彼に相談していた訳だから、今回ばかりは由佳の説を認めざるを得なかった。　何れにしても、こんなに早く何かの手掛りが掴めるとすれば幸運だったし有り難いことではあった。　ただその一方で、狐に摘まれたような感じも拭えなかったので、マスターの言葉を余り過大に期待するのは禁物だとも思った。　冷め切った珈琲を啜りながら、由佳の携帯を取り出すと、俺は着信履歴などをもう一度確認してみた。　あの時、俺が由佳のワンルームに入ってみると、由佳の姿がなかっただけではなく、俺のマンションの時と同じように花瓶やぬいぐるみなどが粉々になって床に落ちていた。　モリヤの笛が戻ってきていたのは間違いなかった。　俺の場合と異なっていたのは、俺は誘拐されなかったが、由佳は誘拐されたという点だ。　やはりあの話は由佳にしておくべきだったと俺は深く後悔した。　モリヤの笛が消えて竜巻になった時、モリヤの笛は俺に「菊池由佳さんですね」と訊いたのだ。　モリヤの笛が俺に喋りかけてくることなど全く予想していなかったことと、雑音が混じっていたこともあってハッキリとは聞き取れなかったが、モリヤの笛は確かに俺にそう訊ねた筈だった。　クライアントの会社に出向こうとしたところだったので、俺はネクタイ姿だったし、見れば由佳かどうかくらい分かるだろうと思った記憶が残っているからでもあった。　モリヤの笛はそれから何かの確認作業に入ったような感じがあって、やがてゆっくりと消え始めた。　その後で、あの忌まわしいスローモーションの竜巻が起こったのだった。　俺は由佳に、モリヤの笛が由佳の名前を出したことを話そうと思って、何度も喉まで出かかった。　しかしその度に、由佳は俺が精神病を病んでいると確信している様子だったので、この話をすれば直ぐにでも救急車を呼びかねないと思って止めにしたのだ。　知っていればどうにかなったかは分からないが、よく考えてみれば、一番危険な状況にあったのは由佳だったのかも知れない。　モリヤの笛には消える能力があったのだから、現れる能力だってあった筈だった。　本当は俺の方が一晩中、由佳に付き添ってやっていなければならなかったのだ。　それなのに俺は酔い潰れたあげくに、由佳に豚の鳴き声をさせたり、俺とエッチをしたがっていると勝手に決めつけたりして、何とヒドい男だったのだろう。　俺は自己嫌悪で一杯になった。　俺が、由佳のワンルームから持って来た彼女の携帯にはパスワードなどが設定されていなっかたために、簡単に履歴が確認できた。　着信と発信はその相手の大半は俺だった。　後はアストラルのマスターが数件、それから家族なのだろうか固定電話とのやり取りが数件あるだけだった。　メールの方も半分以上は俺で、アストラルのマスターとのメール交換はなく、会社の同僚からの合コンのお誘いを断っているメールが結構あった。　それは、行きたくないとか体調が悪いだとか、貰った相手がむっとしそうな素っ気のない断りのメールで　「よく云うよな」　と思わず俺は呟いてしまった。　由佳は常々、俺のメールが素っ気がなくて誠意が感じられないと俺を嗜めていたことを思い出したからだ。　俺が由佳と別れた理由は、由佳の男性関係とかでは勿論なかったが、これだけ感動的に男との付き合いがない由佳を知ってしまうと、別れたことがひどく非人間的な仕打ちであったような気がして俺は胸が締め付けられた。　又しても、由佳が俺を薄情者だと云う根拠が明らかになったのだ。　もしかしたら、由佳が云っていることの方が全面的に正しいのかも知れない。　俺は、由佳の失踪について家族や警察に知らせる時が何時かは来たとしても、当面は俺独りで由佳を助け出さなければならないと強く思った。　アストラルに一番近い地下鉄の改札口を出た時にマスターから携帯が入った。　先刻云った人物と連絡が着いて、今、店で二人で待っているとの事だった。　俺は、その人物は誰なのかを訊ねたが、マスターは会えば分かると云って携帯を切った。　相変わらず勿体をつける男だ。　案外、由佳だったりして。　その人物が由佳だったら、事件解決の役に立つ人物ではなく、事件そのもが解決してしまうから、それはさすがに有り得ないことだった。　そうなるとその人物とは一体誰なのか？　そうこう考えているうちに、アストラルが入居しているビルが見えて来た。　「何だ原口じゃないか？」　俺は素っ頓狂な声を上げた。　アストラルのドアを開けると、マスターと俺の大学時代の後輩でこの店を俺に紹介した原口の顔が眼に入ったからだ。　「何だとはヒドいじゃないですか、八木沢先輩」　と原口は云った。　「マスター、これは一体？」　俺がそう云いかけた時、背後から何者かの手によって俺の口はハンカチのようなもので塞がれた。　「これはクロロホルム？」　反射的にそう思ったら、案の定、意識が遠くなりかけてきた。　「畜生、どうなってるんだ！由佳の次は俺まで誘拐しようってのか？」　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　　　

Apr 17, 2005

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睡れる月

　一日遅れの日記になってしまいますが、昨日から宝塚歌劇団雪組の福岡特別公演「睡れる月（ねむれるつき」）が初日を迎えまして、私は早速、観に行ってきました。　亡くなった愛しい人に再び会いたいという「転生」への願いがモチーフになっており、『更級日記』を書いた菅原孝標女の作と云われる、輪廻転生文学の「浜松中納言物語」の源中納言の末裔として、本作の主人公「源信御津＝浜松中納言＝朝海ひかる」は描かれていました。　石清水八幡宮で行われたくじ引きで将軍に選ばれた、有名な「籤引き将軍」足利義教（よしのり）の恐怖政治時代が時代背景に選ばれており、ストーリーは『嘉吉乱記』や『赤松盛衰記』などの室町軍記が下敷きになっているようでした。　ただ、私的には折角の、六代将軍義教が、祝宴の最中に討ち取られる嘉吉の乱では、首謀者の赤松満祐・教康の父子にもっとスポットを当てて欲しかった。　ところが、何故か登場するのは息子の「教康（のりやす）＝安城志紀」のみで（義教からは親父さんこそがヒドい目にあったというのに）、それもほとんど目立たない存在でした。　そして全体を通して、作者の大野拓史氏が何を訴えたかったかは、私にはよく分からないままで終わってしまいました。　私は、４日間公演の千秋楽にもう一度観劇する予定なので、その時にはもっとストーリーを追ってみようと思っております。　ただ雪組自体は、同じ日本物ミュージカルであった、２年前のお披露目公演『春麗の淡き光に』と比較すると、バウで主力を欠いていても、全員が熱演していて、歌とお芝居も格段に進歩していたのに驚かさせれました。　それと、彼が本作の主役だと云っても異存がない人がいるくらい、扱いが大きかった「式部卿宮（しきぶきょうのみや）＝貴城けい）が、特に目立っておりました。　息をつく間もなく公演が終わり、挨拶になった時、福岡沖地震のお見舞いを云おうとした組長さんが、真っ白になったのか、長い長い沈黙の時間がありまして、突然、ゴメンナサイと何度も謝ったので、会場は一気にほのぼのムードになりました。　その後、組長さんも立ち直って立派な挨拶があって、福岡の地方公演では珍しく、会場が明るくなっても拍手が鳴り止まず、カーテンが開いた時には、半数は帰ろうと立ち上がっていたものですから、全員が総立ちになっての長い長いスタンディングオペレーションが続きました。　この時の会場とステージとの一体感は凄いものがありまして、これには雪組の皆さんも感激してもらえたようで、改めて宝塚っていいなと思ったひと時でした。　それから、楽天ブログでお知り合いになった方からお薦めいただいていた、地元のミュージシャン「吉田祥吾さん」のライブにも行きまして、彼の人間愛に溢れる曲の数々を聴いて、こちらの方も大変感動しました。　彼には是非、更に有名になってもらって多くの人に聴いてもらいたいと思いました。　その後のオフ会も含めて、とても充実した１日を過ごせたので満足顔で帰宅した私でした。

Apr 17, 2005

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合鍵

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第２章　（第２回）　俺はよろけながらも由佳のマンションのエントランスにある鍵穴に合鍵を差し込んだ。　差し込んだ時、キーホールダーに保管はしていたものの、久しく使うことがなかった合鍵を見て、俺は少し懐かしい気持ちになった　そう云えば、由佳と別れることになった日、俺はお互いのマンションの合鍵を返却し合うことを提案したが、由佳から速攻で却下された。　女にとって恋愛関係だけが全てではなくて、母や姉のように愛するやり方もあって、神様だって三位一体になってるからどうたらこうたらで、だから合鍵は双方共持っているべきだという主張だった。　俺にはさっぱり理解出来ない主張だったが、由佳の瞳の奥に炎が見えたから、そう云う時の由佳に抵抗しても無駄だと知っていたから俺は了解した。　それから由佳は、俺がとんでもない薄情者であって、薄情者はその罪を償うために別れてからも友達として付き合わなければならないとも主張した。　別れ話を持ち出したのは俺の方だったし、俺に対して一生懸命だった由佳に申し訳ないと云う気持ちはあったから、そのことも俺は了解した。　しかし不思議なことに、由佳は俺と別れてからの方が妙に生き生きとしていて、特にアストラルに一緒に行った時などは、「よくぞこの女と別れていた」と自分の賢明さを誇らしく思うくらいテンションが上がる。　　　エレベーターに乗り込み、由佳のワンルームに行こうとした時、俺は由佳の部屋の番号を忘れてしまっていることに気が付いた。　悪気は全くないのだが、俺の場合、もう行くことがないと思った段階で、その種の記憶が自然に消滅してしまうのだ。　そう云うところを、由佳は薄情者と呼ぶのだろう。　そしてその主張は、数ある由佳の主張の中で、唯一俺にも理解が出来るものだった。　このマンションは女性の一人住まいが多いと由佳が云っていたが、案の定、郵便受けに名前を表示している部屋はなかった。　管理人室も見当らない。　誰かがこのマンションに帰宅するまで待ってその人に聞くかだが、由佳の部屋番号を知っている保証は無かった。　結局、俺はマンションの外からもう一度、由佳に携帯を入れることにした。　合鍵を持ってくるのを忘れたと云うのだ。　今日は俺の部屋で色々なことがあったから、気が動転して持ってくるのを忘れたと云えば信じるだろう。　そして由佳が出てきたところで、「ああ、ここにあったよ」と云えば、俺がいつも由佳の合鍵を携行していることを喜ぶ筈だ。　しかし、俺って、どうしてこんなにいつも由佳に気を使ってしまうのだろうか。　その後、何回も由佳を呼び出したが、由佳は携帯に出なかった。　自分から電話してきて先に寝てしまうことなど絶対にない女だ。　そして、マナーモードを極端に嫌う女でもあった。　由佳は、電話は呼出し音を鳴らすことが使命であって、だから昔の固定電話は必ず大きな音で知らせたんだと信じている。　俺には昔の固定電話にはマナーモードと云う機能が、単に無かっただけのように思えるのだが。　何れにしても、現在、由佳がバスルームを使っている可能性が一番高いことは明白だった。　　　そう云えば、恋人時代に由佳が俺の背中を洗いたいと云い出して、いつも持ち歩いているらしいタワシで俺は体を擦られたことがあった。　そのタワシで擦ると風邪をひかなくなるとも云っていた。　そして、俺は直ぐに悲鳴を上げた。　俺は土の中から掘り出された芋じゃないんだ。　そんな針金のようなタワシで強く擦られたら、風邪をひかない体になる前に、皮膚が剥けて因幡の白兎みたいな体になってしまう。　「八木、これってすごく気持ちが良いでしょう？」と微笑む由佳に、俺は肌が極端に敏感なんだと必死に哀願して、何とか無事にバスルームから出ることが出来た。　更に２回程携帯を入れたが、由佳は又しても出なかった。　「何やってんだよ」　俺はそう呟いたが、由佳は９９％、例のタワシで体の隅々までごしごしと念入りに洗っている筈だった。　「そんなに念入りに洗って一体どうしようと云うんだ」と云ってから俺はハッとなった。　「まさか・・・」　まさか俺とエッチがしたいなんて云い出さないだろうな。　そう云えば俺のマンションで、「エッチのお相手をして欲しいんだったら、ちゃんとお手当を払ってよね」とか云ってたよな。　俺は酔いが醒めてきたせいもあったが、喉の渇きと軽い目眩を覚えた。　やっぱり今日はどこかのホテルに独りで泊まろうと決心した時、　「どなたかの部屋をお探しですか？」　「えっ？」　振り向くと若い女が独り立っていた。　女性の一人住まいが多いマンションの外を、あまりうろうろとは出来ないので、俺がエレベーターホールから由佳に連絡を取っていたために、その女は俺を怪しまなかったようだ。　　　「ええ、菊池由佳さんの部屋なんですが、彼女、どうも携帯がマナーモードになっているみたいで」　俺は嘘をついた。　「菊池さんですか。彼女は私と同じ９階ですよ。９１４号室」　「あ、ああ、そうですか。有難うございます。助かりました」　俺は礼を云ってから、ちょうど降りてきたエレベーターにその女の後から乗り込もうとした。　「次のエレベーターにして下さい！」　その女にピシャリと云われて、　「は、はい」と答えるのがやっとだった。　俺はその女に怪しまれてもいなかったが、信用されてもいなかったのだ。　ここまで苦労して来たからには、俺はもう意地でも由佳のワンルームに泊まる気になっていた。　と云うより、正直、どこかのホテルまで辿り着く気力がもう無くなっていたのだ。　　由佳がエッチがしたいと云ったら、俺は、　「人殺し！」と叫ぶつもりだった。　５回も叫べば、俺のステータスバーのヒットポイントはゼロを示して、「由佳の大冒険（発情編）」はゲームオーバーになるだろうと云う作戦だった。　９１４号室の呼び鈴は、押した本人の心臓を止めるくらい大きな音がした。　俺は反射的に周囲の部屋を見回したが、別の部屋から誰かが出てくる気配はなかった。　昔はそのまま合鍵で入っていたから気が付かなかったが、きっとこれも由佳に云わせれば呼び鈴の使命なのだろう。　俺は出来るだけ音を立てないように合鍵を回して、由佳のワンルームの中に入った。　「お前、風呂に入るのもいい加減にしろよな！」　そう云いながら、リビングのドアを開けた時、　「あっ」と絶句してしまって、それから暫くの間言葉が全く出なかった。　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 15, 2005

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誘拐

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第１章　（第６回）　「えっ？」　「空間を少し歪ませちゃったもので」　　私は驚いて、思わず後ろの方に転んでしまった。　尻餅をついた恰好だ。　運悪く、尻餅をついた場所にカムテープがあって、私のお尻は相当痛かった筈なのに、驚きで頭の中が一杯になっていた私は痛みを全く感じなかった。　この、私の人生で最大の驚きは、突然どこからか声がしたという聴覚がもたらしたものではなく、ベッドの上に「モリヤの笛」を発見してしまった視覚からもたらされたものだった。　「うっ、うそ？」　「菊池由佳さんですね。僕、捜すのに結構苦労しちゃいました」　　モリヤの笛は私にそう云った。　「彼があなたに通信してくれたお蔭で特定出来ましたけど」　　「だっ、誰よ、あんた？」　　「いや、驚きました。マニュアルでは、ファーストコンタクトの生物がターゲットということになっていたもんですから」　　「生物？　ターゲット？」　驚かされているのは、私だけだと思っていたから、モリヤの笛も驚いたということが分かって私は余計不安になった。　「詳しくお話しする時間がないので」　モリヤの笛からは、ガーといったノイズのような音も一緒に聞こえていた。　「事情があって、僕は今、特殊な空間からあなたに通信しています」　「通信しなくていいです」　「ただ技術的な理由から、あと数分後に起こる空間の歪みを利用して、あなたを搬送しなくてはなりません」　「搬送？」　どうやら私はかなり危険な状況に追い込まれているらしかった。　少なくとも、八木沢が幻覚を見たのではなかったことが判明した。　八木沢が見たものが幻覚でなかった以上、私の危機的な状況も幻覚ではなかった。　「実はあなたに頼みがあるのです。そしてそれは、どうしてもあなたでなければならないお願いなのです」　実は、私はとてもお腹が空いているので、これからあなたを食べますと云われたらどうしょうかと心配していたので、私は少し安心した。　そして、私はこれがドッキリカメラである可能性を考えた。　ドッキリカメラのスタッフが隠れるとすれば、この狭いワンルームだと、トイレかバスルームかワードローブしかない。　しかし、その全ての空間を、部屋に戻ってから私は既に調べてしまっていた。　「空間が歪みはじめました。それではゆっくりとベッドに横になって下さい」　ドッキリカメラ説は脆くも崩れ去って、八木沢が云っていたスローモションの竜巻が始まった。　「大丈夫！心配しなくても良いです。あなたは私たちにとって大切な方ですから」　心配するなと云われて、はいそうですかと納得出来るような状況でないことは分かっていた。　ただ、モリヤの笛が私のワンルームに戻ってからまだ５分も経っていないのに、心配する対象を八木沢から自分に急に変更させられたために、私は恐怖を感じるだけの余裕がなくて平然とした顔つきになっていたのだ。　「あの、私は何処に搬送されるんですか？」　「あなたは何も心配しなくて良いんです。それより早くベッドに横になって下さい！　そして眼を閉じて。そう、もっと体の力を抜いて下さい」　　モリヤの笛は、熟練した外科医のような口調で私に指示した。　「ターゲット、イエローピッグとコンタクトが完了しました。今からポイントビューウィックへ搬送します。搬入準備をお願いします」　モリヤの笛とその仲間たちの間で、私はどうやら「黄色い豚」と呼ばれているらしかった。　彼らにとって、私は大切な方である筈だったが、その割りには冴えない名前を付けてくれたものだ。　十分過ぎるくらい劇的な状況なので、私はもっとドラマティックな名前にして欲しかった。　幾ら何でもイエローピッグはヒド過ぎる。　もしかして、モリヤの笛は何処からか私を観察していたのだろうか？　八木沢の連絡でやっと特定出来たと云っていたから、観察されていたとしても不思議はなかった。　私は、アストラルでぶうぶうと鳴き過ぎたことを後悔した。　せめて「イエロードール」くらいに昇格させてもらえないものかとも思ったが、本当はもっと深刻で重大な危機が私には迫っている筈だった。　そして、私が誘拐されかかっていると云うのに、八木沢が、この肝心な時に私のワンルームにまだ到着していないことに気が付いた。　八木沢から連絡があってから２０分は経っていた。　直ぐにお店を出て歩いてくれば、今頃、このワンルームに着いていてもおかしくないのに。　「役立たず野郎！」　そう八木沢を罵った時、私の意識はすうっと暗闇のなかに同化していき、光を欠いたニ位一体の状態に溶け出していった。　「八木、私、今、モリヤの笛から誘拐されてるよ。早く助けに来てよ！」　　　　　　　　　第２章　終電に間に合わない時間になったせいか、アストラルのマスターが呼んだタクシーはなかなか来なかった。　頭の方はズキズキとしていたが、体調は思った程悪くなかった。　しかし、空車を捕える気力や由佳のワンルームまで歩く体力までは、流石に今の俺には残って居なかった。　「八木沢さん、タクシーがやっと来たみたい」　「ああ、すまん。マスター、今日は迷惑かけちゃったみたいで」　俺はタクシーが来るまで、３０分近くも残業をさせたことをマスターに詫びた。　「いいんですよ、私もお二人には楽しませてもらってますから」　　アストラルのマスターは、そう云って俺にウィンクした。　俺は、男からウィンクをされると、素直に背筋に悪寒が走る。　酔い潰れの状態から、先刻目覚めたばかりなのだ。　その悪寒に、俺のヒットポイントがきっちり半分削られた。　マスターには、もう少し俺を労わって欲しいと思う時がよくある。　俺が乗ったタクシーの運転手は、俺が行き先を告げた途端、急に愛想がなくなった。　無理もないか。　無線で呼ばれて、長時間かけてここまで来て見たら、２メーターの区間じゃ愛想も悪くなろうというものだ。　「いやー、一寸ばかり派手に飲みすぎたもので。ハハハ」　と笑ってみたが、運転手は無言のままだった。　仕方がないので、もう一度由佳に「今からそちらに向かっている」と連絡を入れようと携帯を取り出したが、もう直ぐ由佳のワンルームに着くので止めにした。　その代わり、どうして俺は由佳のワンルームに泊まることになってしまったのだろうと自問した。　モリヤの笛は既に消滅してしまったのだから、独りでどこかのホテルに泊まっても別に問題はなかったのだ。　竜巻が起こったら、二人で居たからと云ってどうにかなる代物でもなかったし、由佳のことだから明日は会社を休んで、俺を精神病院に連れて行こうとする可能性もあった。　案外、モリヤの笛が元の持ち主のところに戻ってたりして。　思考力が回復してくると、今日は由佳のワンルームに泊まっても良いことが何もないことに気が付いた。　そこで、急に気が変わって、今日はホテルに泊まることにした、ついてはもう独りで大丈夫だからと連絡しようとした時、タクシーが止まった。　由佳のマンションの前に到着したからだ。　「すみません、もしかしたらホテルに泊まることも考えられますので、このままちょっと待ってもらえませんか？今、携帯を入れますので」　俺はそう云って、携帯に登録している由佳の短縮番号を押した。　由佳の携帯は鳴っている筈だったが、由佳はなかなか出なかった。　運転手は千円札からのお釣りをそそくさと準備し始めた。　タクシーがキィーと急発進して、俺から瞬く間に遠ざかっていった。　よく考えたら、このままあのタクシーでどこかのホテルに行って、そこから由佳にキャセルを連絡すれば良かったのだ。　それに気が付いたのは、運転手からお釣りを貰ってしまった後だった。　普段はもう少し早く気が付くのに。　俺は酔い潰れたことを後悔した。　一番近い角を曲がったために、もう見えなくなってしまったタクシーの方角を見やりながら、俺は携帯に出なかった由佳を恨んだ。　「まったく、肝心な時に役に立たない女だ」俺は由佳を罵った。　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 15, 2005

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幻覚じゃない

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第１章　（第５回）　私に難しいことは分からないが、どうやら主イエス・キリストの構造は三位一体になっているらしい。　キリスト様と自分を比べるのは不遜だと思うし、そのレベルの違いを広さで例えれば、宇宙と私のワンルームくらいの差がある事も理解したうえで、私には何となく三位一体という感覚があると云う気がする。　私という主体は、単独でも存在することは出来るけど、それはただ存在しているというだけにしか過ぎない。　ところが、その主体に光が当てられることで、初めて形が認識される。　初めて周りの人も含めて、私が丸型だったのか四角形だったのか或いは三角形だったのかを知るのだ。　そしてその形を安定させるために、存在には影が与えられる。　これによって私流の三位一体は完成するのだ。　ところが現実の私は、影にあたる八木沢と先に出会ったために、自分の分身のような愛おしさは常にあるのだが、光を当てる存在がなかったから、二人とも闇の中に埋没してしまってお互いを認識し合うことが出来なかった。　ところが、今日のように、アストラルのマスタ－という光が差し込むと、私の形状が認識されて、八木沢とのあるべき距離もはっきりして行って、とても安定した関係を回復出来る。　私はこの三位一体論を素敵だと思ったが、この話をした時のマスターの当惑した顔と、八木沢の「俺はお前の影法師かよ」とむくれる顔が容易に想像された。　その前に、そもそもキリスト様の三位一体は「神と精霊と神の子」なので、人間が出来ているマスターはともかく、私と八木沢をその三位一体に当て嵌めることは、不遜を通り越して神への冒涜になってしまう。　私はそう思った時点で、この問題をこれ以上深く考えても無意味であることを思い知った。　　私はベッドの照明を消そうとしたが、まだシャワーを使っていなかったことを思い出して、よろよろと立ち上がった。　それから、八木沢にメールを打っていなかったことにも気付いて、眼が覚めたら私に連絡をする旨の文章を入力した。　入力しながら、アストラルのカウンターにひとり残してきた八木沢のことを考えて私はハッとなった。　夜中に八木沢が眼を覚まして、また同じ幻覚を見たら、アストラルの店内が悲惨なことになってしまうではないか？　私は何という間抜けだったのか。　ぶうぶうと鳴いてばかりいたために、そして事件のことをマスターに云わないことにしたために、肝心のことに気が回らなかった。　私は早速、マスターの携帯に連絡を入れてみた。　「やあ、由佳ちゃん、先刻はお疲れさま」　「マスターごめんなさい。色々お願いしちゃって。今、お店？」　「うん、お店を閉めてるところ」　「八木ちんは？」　「八木沢さん、もう起きてるよ。顔を洗いに行ってるんで、戻ったら由佳ちゃんに連絡するように伝えようか？」　「ええ、お願いします。それとマスター、八木ちんさ、眼を覚ましてから何か変なこと云ってなかった？」　「変なこと？」　　　「あっ。いいの！　別に何でもないの。じゃあ宜しくお願いします」　私はそう云って携帯を切った。　　暫くして、八木沢から連絡があった。　酔い潰れた直後にしては、思ったよりしっかりとした声だった。　私はまた竜巻が起こるかも知れないので、今夜は私と一緒に居た方が良い旨を八木沢に伝えた。　ホテルに泊まるのならそこに私が行くし、私のワンルームで良ければここで待ってるとも伝えた。　しばらく考えてから、八木沢は私のワンルームに泊まる方を選んだ。　八木沢が私のワンルームに泊まるは、何時以来だろう？　私たちが別れてから２年くらいは経つので、それ以上の年月が経っていることになる。　勿論、今夜はエッチに発展することはないのだが、もうこのワンルームに八木沢が泊まることはないと思っていたから、一晩限りとは云え何となく嬉しかった。　バスルームの湯船にお湯を張りながら、明日、八木沢を何処の病院に連れて行こうかと考えた。　そして、八木沢が幻覚を見た時のために、バスローブの紐を何本か用意し、大声を出すことも考えられたのでガムテープも用意した。　その様子を、もし事情を知らない人が見ていたら、私はきっとＳＭプレイの準備をする女王様に見えただろう。　八木沢を待つ間、私は八木沢の幻覚について考えてみた。　幻覚を見たうえに、部屋の中をあれだけ粉々にする訳だから、かなりの重症なのかも知れなかった。　焦点が合わない濁った瞳孔で、自室の調度品や本類を破壊している八木沢を、私は想像したくないと思った。　幸いなことに、私は幻覚を経験したことがなかったので、幻を見ている感覚や状態について全く想像がつかなかった。　ナチュラルハイやアルコール幻覚症では、今回のようなことにはならない気がしたので、仕事に疲れた八木沢がエンジェルダストかＬＳＤか、或いはメスカリンかも知れないが、どこかで強力な幻覚剤を手に入れて服用したのだと思った。　やはり、明日は絶対病院に行かせて、治療を受けさせると同時に、常習者にならないよう私が監視してあげなければならないと思った。　「でも、よりにもよって幻覚剤を飲むなんて！　どうして私のようにアルコールで我慢出来なかったのかしら」　私は呟いた。　「幻覚じゃないよ」　どこかで声がした。　　　　　　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 14, 2005

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ぶうと鳴く女

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第１章　（第４回）　　私は自分の耳を疑うより、八木沢の精神面を心配した。　　笛が消えることだけでも凄いのに、それが竜巻になっただなんて。　　八木沢はこの種のジョークを徹底して嫌うリアリストだったので、ここまで云うからには、彼の眼には実際にそれが見えた筈だった。　　だから、私は余計に八木沢のメンタル面を心配した。　　と云うより、はっきり云って私は八木沢の頭がイカれたと思った。　　「由佳、お前知ってたんだろ？」　　「知ってるって、何を？」　　「とぼけるなよ！　あの笛、消える前から時々色が変わったり、変な音が聞こえて来たりしてたんだ」　　　　「まさか」　　「てっきり気のせいだと思っていたんだが、今日みたいに俺の眼の前でやられちゃなあ」　　「本当に見えたんだ？」　　「ああ、あの笛、ゆっくり消えていったからな。そして竜巻になった」　　八木沢はごくりと唾を飲み込んだ。　　「だけど、俺自身はその竜巻を全く感じることが出来なかったんだ」　　そう云ってから、八木沢は私をじろりと見据えた。　　「やがて、竜巻はゆっくり俺の部屋の物をバラバラにし始めた。俺が震えながら警察に連絡した時まで竜巻は続いていたんだ。お前、スローモションの竜巻って聞いたことある？」　　「八木、あんた仕事とかで疲れてんだよ」　　ここで初めて八木沢はフッと笑った。　　「明日、私と一緒にクリニックに行こう」　　　八木沢は、お前はやっぱり何も知らなかったんだなと呟いて、また黙りこくった。　　それから私は、今日は朝から熱がなかったか？とか、変な薬を飲まなかったか？とか、色々と八木沢に質問した。　　八木沢はそれに何も答えなかったが、　　「じゃあ、由佳、一体誰が、俺の部屋をあんなに無茶苦茶にしたと云うんだ？」　　と云って、私を見つめた。　　それは、八木、あんた自身以外に考えられないよと云おうとして、私は慌てて言葉を呑み込んだ、　　「あーあ、警察なんかに連絡しなきゃ良かったな。しくじったよ。警察は半分以上、俺の狂言だと思ってるみたいだし」　　「やっぱり」　　と合鎚を打ってしまってから、私はアッと思ったが既に遅かった。　　「あのなあ、お前から変な物を貰ったばっかりに、俺がこんな目に遭っているんだから、もう少し真面目に考えてくれよな」　　八木沢はムッとして云ったが、　　「八木、私はちゃんと真面目に考えてるよ。だから心配なの。明日、一緒に病院に行こうね」　　　「もういいよ！　さあ、カウンターで飲み直そうぜ」　　そう云って八木沢は、一旦席を立ちかけたが何かを思いついてまた座り直した。　　「由佳、今度もし俺の部屋にモリヤの笛が現れたら、お前にすぐに帰すからな」　　「うん。いいよ。だけど八木、今日のことはマスターには云わない方がいいよ」　　　　八木沢は私に何かを云おうとしたが、結局、肩を竦めて「分かった」と小さく呟いた。　　アストラルのマスターは、私たちの様子がおかしいことに最初から気が付いていたようで、　　「いらっしゃいませ、何に致しましょうか？」　　と他人行儀に注文を聞いただけで、別の客とずっと話をしていて、私たちの前には立たなかった。　　今日は、私たちをそっとしておくつもりらしい。　　マスターらしい配慮だが、今日に関して云えば、その思いやりは反って私には辛かった。　　八木沢は「モリヤの笛」のことをずっと考えていたし、私は私で、明日連れて行く心療内科のことを考えていたから、お葬式のような静か過ぎる酒席だったからだ。　　そして、私は八木沢の飲むピッチが異常に早いことに気が付いた。　　八木、そんなにガブ飲みしちゃ体に悪いよと云おうとしたが、酔い潰れ常習者の私が云っても説得力がないと思って、代わりに真水に近い焼酎の水割りに飲み物を変えた。　　八木沢のピッチはそれからも落ちず、「酔い潰れモード」を驀進していたが、八木沢は私のようにギャーギャーと騒ぐことはしなかった。　　もし私が、八木沢のように「モリヤの笛」が眼の前で消えて竜巻になるという幻覚を見ていたら、もっと派手に喚き散らしただろう。　　そう思うと、私は独りでじっと耐えている八木沢を感じて、母性本能みたいなものを擽られた。　　「なあ由佳、自分の部屋を無茶苦茶にしてまで、警察をからかう趣味が俺にあると思うか？」　　ない。絶対にない。だからあんたは病気なんだよ！　　「俺はこの店で、何回も山羊の鳴き真似をしたよな。今日は俺のためにお前が鳴いてくれ」　　「えっ？　私が？」　　　　　八木沢がそう云った時、私は最初、彼の話を信用しない私への嫌がらせかと思ったが、よく見ると八木沢の眼は私に癒して欲しいと訴えているようだった。　　「そうだな、俺は豚がいいな。由佳、豚になってくれ！」　　八木沢はそう云いながら、グラスのマドラーを私の鼻先に近づけると、　　「子豚の由佳ちゃん、さあお鳴き！」　　と云いながら、マドラーをくるくると回した。　　人は、酒酔いが進行すると、誰でも自分の声量をコントロール出来なくなるらしい。　　カウンターの隅で飲んでる私たちに、折角マスターが気を使って、隣の何席かを空席にしてくれていたのに、八木沢の声が太すぎたために、マスターを含めてカウンターで飲んでいた客の全員が、一斉にこちらを振り向いた。　　「ほら、子豚ちゃん、鳴いて鳴いて！」　　泣く子と地頭と酔っ払いには勝てない。　　八木、私、来月で２７歳になるんだよ。分かる？２７歳なんだよ！　他人の前で豚の鳴き真似をしても、ちっとも可愛くない年なのよ。　　私はそう思ったが、３６歳の男にメェメェ云わせていることの天罰が下ったんだと納得したことと、母性本能のスイッチが既にオンになっていたこと、そしてもっと決定的な理由だと思うが、マスターが私に片目を瞑ってみせたことで、私は「ぶう」と鳴いた。　　　　カップルで来ていた１０代の若い女がククッと笑った。　　若い女はいつでも遠慮がない。　　八木沢は益々調子に乗ってきて、　　「駄目、駄目。豚はそんなに上品には鳴かないぞ！　ブウブウ、こんな風に鼻にかけて鳴くんだ！　ブウブウブウ」　　先刻の若い女がギャハハと下品に笑った。　　この女の方が、私の何倍も下品な豚の鳴き真似は上手そうだった。　　私はマスターの方を見た。今度はマスターはただ微笑しているだけで、特段のサインをあたしに与えてはくれなかった。　　私はマスターの顔を見ながら、　　「ぶう、ぶう、ぶう」　　と３回鳴いた。　　鳴きながら、先刻のマスターのウィンクが、私のフェティシュの弾薬庫に繋がる導火線の１本を確実に着火させたことを悟った。　　「ぶう、ぶう、ぶう」　　私はまた３回鳴いた。　　今度は下品な女は笑わなかった。　　私はそれからも、３０秒に１回程度の頻度で豚の鳴き真似をした。　　ちょっとした非日常など、１５分も経てばすぐに日常の風景に埋没してしまう。　　アストラルのバーカウンターの客は、何事もなかったかのように、またそれぞれの談笑に戻っていった。　　そして、私の規則正しい鳴き声は、最初は喜んでいた八木沢に眠気を与えたようで、いつしか八木沢はカウンターに伏して寝入ってしまった。　　八木沢の寝顔に母性本能を刺激され、マスターのウィンクでフェティズムに火が点く私という女は、一体どんな女なのかしらと私は真剣に考えた。　　「由佳ちゃん、今日は大変だったね。八木沢さんは僕がマンションまで送っていくから」　　マスターが労いの笑顔で私の席にやって来た。　　「終電がなくなっちゃうから、由佳ちゃんはもう帰った方がいいかもよ」　　そう云って、マスターは私のグラスを片付けようとしたが、　　「あれ？　もしかしたら、由佳ちゃん、今日は八木沢さんちに泊まるの？」　　「まさか」　　ああ、ごめんごめんと云いながら、マスターは私のグラスとコースターを片付け始めた。　　「でも、今日はちょっと事情があって、八木ちんは彼のマンションには帰れないんだ」　　　　　「えっ？　そうなんだ」　　マスターは少し困った素振りを見せたが、　　「八木沢さんは、いつかも酔い潰れてこの店に泊まっていったことがあるから大丈夫だよ。」　　と云った。　　「うん、私んちはここから近いので歩いてでも帰れるけど、折角だからお言葉に甘えて、マスターにお願いしようかな」　　「ＯＫ、じゃあ気を付けて帰ってね」　　「有難う」　　　　私はそう云いながら、眠っている八木沢に「メェメェちゃん、今日は頑張ったね、おやすみ」と頭を撫でてから、アストラルを後にした。　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　皆さん有難うございました☆ 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　　　

Apr 12, 2005

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モリヤの笛

マーブル小説：　　ぱらどっくすめもりー　　　　　　　　　　　第１章　（第３回）　今夜のアストラルは珍しく客が一杯で、入店するまでに初めて１５分程待たされた。　そして、いつもはもっと遅い時間にバーとして利用するから、この店でゆっくり食事を摂るのも初めてだった。　　「あのさ、由佳、あれのことなんだけど」　八木沢は、生ビールで乾杯すると、待ちきれないといった感じで私に訊ねた。　　「あれって何よ」　　「あれだよ、あれ。あれの名前何だったっけ？　ほら変てこな笛みたいな。お前が俺に呉れただろ？」　　「ああ、モリヤの笛？」　　「そうそう、あれ、モリヤの笛って云ってたよな」　八木沢は妙に納得して、やがて神妙な顔つきになった。　モリヤの笛というのは、私が小学生の頃、当時住んでいた群馬の山村で拾った、八木沢が云うとおり、変てこな乳白色の物体のことだった。　モリヤの笛は流線型をしていて、最初見た時はてっきり石だと思ったのだが、良く見ると金属のようでもあるし、半透明な部分もあるのでプラスティックなのかも知れなかった。　中央部には巻貝の貝殻にも似た深い窪みがあり、ほら貝のようにして吹くと結構いい音がしたので、私はそれを笛だと鑑定した。　従って、本当は笛かどうかも疑わしい代物だったのだが、私は、その笛に「モリヤの笛」と名前を付けた。　その笛を拾った場所が、森と森に囲まれた谷のような場所であったことと、その近くに「守谷さん」と云う名前のお爺さんが住んでいたことがその名前の由来であった。　私は、大いにこの笛がことが気に入り、家に持ち帰ってずっと大切に保管してきたのだが、私のワンルームに八木沢が泊まりにきた時、どうしても欲しいと云うので八木沢にあげたものだった。　　　　　　　　　　　　　　「だから、あの笛がどうしたって云うのよ」　八木沢は、普段から何でも単刀直入な話し方をするので、それが、別れ話などの時には、とても薄情な印象を与えしまうタイプだった。　ところが、今日の八木沢は、会った時から奥歯に物が挟まったような話し方が多く、こんなに私の方が焦れて聞き返すことは稀だった。　　「ああ、実はな・・・」　　「やあ、いらしゃい！」　八木沢が話し始めようとした時、アストラルのマスターが私たちのテーブルに挨拶に来た。　私はマスターにぴょこんとお辞儀をした。　私はマスターが好きだ。　と云うより彼を嫌う人は余りいないと思う。　こんなに誰にでも優しくて、包容力があって、そして癒される人を他に知らないからだ。　だから、私は、深夜にカウンターで飲む時は、八木沢にはつんつんと悪態の限りをついて、マスターにはでれでれと甘えまくる。　普通、男だったら、そして八木沢の立場だったら、少しくらいヤキモチを焼きそうなものだが、八木沢はみじんもヤキモチを焼かない性格だった。　八木沢が、余りにも完璧にヤキモチを焼かないものだから、私は段々と、女を否定されているような気分になって、更に過激に「つんつんでれでれ」を演じてしまう。　私は典型的なツンデレ女なのだ。　何かの本に、ツンデレキャラにオタクは萌えると書いてあったけど、残念ながら八木沢はオタクではないので、私に対して全く萌えない。　そして、私はヤキモチを焼かない八木沢に対する腹立たしさが限界に来た時、八木沢に対して山羊の鳴き真似をすることを命じるのであった。　八木沢のメェと鳴く低い声を聞くと、まるで催眠術のトリガーを引いてしまったかのように、私はいつも酔い潰れる道を突き進んだ。　この頃になると、私はもう、悪態をつくことも甘えることもしなくなり、ただの良い聞き手になっている。　その状態になると、私には、八木沢の声は甘く諭されているように聞こえ、マスターの声は甘く慰められているように聞こえる。　そして、その時が、私にとって一番幸せな時間でもあった。　一次元の点にしか過ぎなかった私が、八木沢から影を、マスターから光を与えられ、一気に三次元の立体にまで昇華していくのだ。　私のうっとりとした眼を見ながら、マスターは、　　「今日は、珍しく早いお着きだね」　と云った。　マスターはそう云ってから、八木沢が妙に真剣な表情をしているので、アハハと明るく笑ったが、八木沢からの反応が得れずに、　　「ゆっくりしていってね。後でまた来るから」　と言い残して厨房の方に戻って行った。　　「ねえ、八木、大丈夫？　お部屋が荒されてショックなのは分かるけど、何も盗まれなかったんでしょう？」　　「いや、それが盗まれたんだ」　　「何を？」　　「モリヤの笛！」　えっ？と叫んでから、私は暫くして笑い出した。　　「嘘よ！　いくら八木んちに金目の物がないと云ったて、あんな物をわざわざ盗むなんて」　　　　　　　「う～ん・・・」　とまた八木沢は考え込み始めた。　　「あの笛、もしかしたらスゴいお宝だっりして」　そう云って一緒に笑おうとしたが、八木沢が無反応だったために、私は独りでアハハと小さく呟いた。　　「八木さあ、もしあれがスゴいお宝だったとしても私は全然平気だし、八木にあげちゃった物だから、八木が自由に処分して良いんだよ」　　「そうじゃなくて！」　　八木沢は、珍しく語気を荒げた。　いったいどうしたのかしら？　そう私が心配してしまうくらい、今日の八木沢の雰囲気はいつもと違う。　ところで、八木沢がモリヤの笛が欲しいと云い出したのには訳があった。　八木沢は大学時代に「空間デザイン」を学び、空間デザイナーとして小さな事務所を構えたが、あまり客がつかずに、直ぐに仕事を選ばない普通のインテリアデザイナーに変わった。　そして、それもうまくいかず、今はデザイナーというより代理店のような仕事をしていた。　ある日、まだ、私たちが恋人関係にあった頃、八木沢に大きな仕事が入ったようで、八木沢がそこのインテリアに「モリヤの笛」を使いたいと云い出したのだ。　八木沢に惚れていた私は、ふたつ返事で八木沢に「モリヤの笛」を手渡した。　ところが、クライアントがその笛を気に入らなかったらしく、「モリヤの笛」は八木沢の部屋を飾るインテリアのひとつになってしまった。　そして、私たちが別れる時、八木沢は私に笛を返すと云ったが、私は八木沢に一度あげたものだから受け取らないと言い張って、結局、「モリヤの笛」は八木沢の部屋にそのまま置かれることになった。　　「警察だってこんな話、信じる訳がないから云ってないんだが、本当は「モリヤの笛」は盗まれたんじゃなくて消えたんだ」　　「消えた？」　　　　「そう、消えたんだ。俺の眼の前で！おまけに消えてから竜巻になりやがった！」　　　　　　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　皆さん有難うございました☆ 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 12, 2005

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マーブル小説

　「マーブル小説」と言いますのは、私が勝手に作った「小説のジャンル」でございまして、社会的には全く認知されておりません。　何がマーブルなのかと申しますと、１つの小説のなかで表現される「タッチ」がマーブルなのでございます。　例えば「本格推理小説」で始まった小説が、気が付けば「ＳＦアドベンチャー」になっており、少し読み進めば、「ボーイズラブ」になっていて、最後は「ホラー小説」として締めくくられるみたいな（笑）　その無茶・強引極まる「ストーリーの展開」を楽しむ「大人の文芸」、それが「マーブル小説」なのです(；´Д｀)=3☆ｵｲ！　　そしてうまくいけば、一粒で四度か五度もおいしい(o^-')/　かも知れない⊂((〃￣ー￣〃))⊃ ふふふ　それがマーブル小説なのです(Д｀ﾟ*)ﾉﾟﾎﾝﾄｶ?　従いまして、本来は「マーブル小説」と言うよりも「カメレオン小説」という方が正しいとは思いますが、ここでは語感が持つイメージを大切にして、「マーブル小説」と定義させて戴きます。　良く言えば「実験小説」、普通に言えば「支離滅裂な小説」ということになりますので、多くを期待しない「大人の余裕」をお持ちの方だけがお読み下さいませ！　　　　　　ラリホー桃咲　　　　　　ぱらどっくすめもりー　　　第１章　（第２回）　「ねえ、菊池先輩、今夜さあ、これからなんだけど空いてない？」　更衣室で私服に着替えていると、「総務課」の瀬戸山美樹が、独特の鼻にかかった甘え声でそう訊いてきた。　美樹というのは、私より３年後輩の女子社員で、自分の脳みその９５％を、男のことを考えるためだけに使っているような女だ。　だから、私はこの女だけは、「オフィス事務センター」に来て欲しくないと思っているのだが、周囲は人々は、それは時間の問題だと思っているようだ。　「最近さ、うちと取り引きを始めた日本物産の、ほら知ってるでしょう？　営業の山崎君、彼ってあたしのツボなのよね」　「ホントよね　山崎ＬＯＶＥって感じよね～！　それとさ、彼の先輩の柳沢さんも渋くない？」　話に割って入ってきたのは、私と同期に入社した「経理課」の塚本みどりだ。　この女は美樹に比べるとまだまだで、多分７０％くらいしか、男のことで脳みそを使っていない。　「うんうん、渋い。柳沢さんって男の色気みないなものがあるのよね、もうどうにでもしてって感じ。彼、今日の合コンに来るのかな？」　　「う～ん、それはビミョウかな。だって彼さあ、社内の昇格試験があるって言ってたじゃない？」　「あっ、そうかあ。でも今日みたいに合コンが急に決まると、誰を狙おうかって考えて、かえって興奮するね」　「そうね　でも戸川っちは絶対来るわね」　「戸川っち来るの？　嬉しい！　彼って超スウィートよね！　もしかしてあたしの好みかも～」　「ふん　男は全部好みの癖に」と云いそうになったが、大人の私は　「ちょっと、あなたたち。折角だけど、私は今日は忙しいの。合コンのお誘いなら、また別の日にして頂戴」　そう落ち着いた口調で、お局のように断定的に云った。　「えっ　先輩行かないの？　だって今日みたいに急に決まった時しか、先輩なんかにお誘いはないのに」　「美樹！」　さすがに７０％女のみどりは、残された３０％の脳みそを使って、美樹をたしなめた。　「ごめんね。今日は家で飼ってるサンショウウオが産卵する日なの。だから、これから帰って観察日記を付けなきゃ駄目なの」　「うっそー！　信じらんない！　人間の男より両生類の方がいいなんて！」　美樹は素っ頓狂な声を上げたが、　「馬鹿ね。繁殖させて高く売り飛ばすに決まってるじゃない！」　と訳知り顔のみどりに云われて、　「そっかあ、先輩ってあったまイイ～！」　　と納得した。　私は「お先に」と云って、更衣室のドアを開けた時、　「嘘に決まってるだろが！」　と二人を罵りたくなったが、美樹が両生類という言葉を知っていたことに驚いている自分と、明日から、サンショウウオの繁殖のさせ方について、しつこく二人から質問攻めに遭うことを想像して、　「もう少しマシな嘘をつけば良かった」　　と後悔している自分に気が付いて、バタンと強くドアを閉じた。　八木沢のマンションに着いた頃には、もう辺りはすっかり真っ暗になっていた。　「おう、由佳か？　こっちだ、こっち！　あっ、靴履いたままで上がって来てくれ！　危ないから」　「えっ？　靴履いたままでいいの？」　　「おう、まあこっちに来いよ！　そしてこれ、ちょっと見てくれよ！」　　　「あっ」　普段から冷静沈着で、多少のことには動じない私も、この時ばかりは驚きの声を上げてしまった。　八木沢の、寝ること以外の用事は全てここで済ます２０畳ほどの広さの居間が、粉々に砕け散ったグラスや引きちぎられた本類等で、足の踏み場がない状態になっていた。　「何なの　これ？」　「俺にも、何が何だか、さっぱり分からんのだ」　八木沢が腕組みをした。　「空き巣？　でも八木んちに空き巣に入ったって、金目の物とか何にもないしねえ」　「あのなあ」　私は、八木沢と親しくなってからは、ずっと八木沢のことを八木と呼んでいた。　そして、私は八木沢に捨てられてからは、一緒にお酒を飲みに行くと、決まって、　「こら～　八木、てめぇ、よくも私を捨てやがったな！　お詫びにここでメェとお鳴き！」と命令するのだ。　「お前、絶対、女王様入ってるよな」　そうボヤきながらも、せめても罪滅ぼしという殊勝な気持ちが残っているとは思えないが、八木沢はおどけながらもメェと鳴くのだった。　「あっ分かった！　下調べもしなかったドジな空き巣が、金目の物がなかったんで、ブチキレたんだ！」　「お前ねえ」　久しぶりに、八木沢が、怒った顔と呆れた顔が入り混じった表情を私に見せたので、八木沢を愛していた昔を思い出して、私は少し胸が苦しくなった。　「よく見ろよ！　ブチキレた空き巣が、こんなに正確に右から左へ螺旋状に物を破壊するか？」　「そう？」　八木沢の言葉で、私は部屋全体をもう一度眺めてみて、八木沢が云うとおり、破片物が荒々しいが規則的に散乱していることに気付いた。　「まるで、部屋の中で竜巻でも発生したみたい」　「だろ？」　確かに、ただの空き巣が、ここまで几帳面にブチキレるとは考え難かった。　「先刻、帰った警察の鑑識官のおっさんも、お前と同じことを云ってたよ」　あっ由佳、それ　触っちゃ駄目！　散乱している本類を片付けようとした私を、八木沢の野太い声が遮った。　「不審な点が多過ぎるだろ？　だから今後のこともあって、明日また警察が現場検証をするんだってさ」　　「何だ、私に後片付けをさせるために呼んだんじゃなかったんだ！」　「うん、今日のところはな。そのうち後片付けをお願いするとは思うけど」　「ところで」　八木沢はそう云ってから、また怒った顔と呆れた顔が入り混じった表情になった。　私は、八木沢のこの表情に極端に弱かった。　生まれつきにと云っても良い程弱くて、八木沢に捨てられてからも、姉のような役割を演じているのは、本当は、この表情を見たいだけなのかも知れなかった。　自分でもつくづく情けないと思うのだが、これだけは如何ともし難くて、また八木沢があまり話の文脈に関係なくその表情をするために、ふいを突かれて世話を焼いてしまうことになるのだ。　これって美樹が良く云う「ツボ」ってことなのかな？　「実は、お前に、ちょっと訊きたいことがあってな」　八木沢がそう切り出した時には、私はどうしても今夜、八木沢をメェと鳴かせたい欲望にかられていた。　「あっそうだ！　八木はもう食事は済んじゃったの？　それに明日まで現場検証があるんじゃ、今晩はどうすんのよ？」　「ああ、飯は少し食ったけどな。でも警察からは、今夜はホテルにでも泊まってくれって云われてるんだ」　八木沢の言葉に、自分でも悲しいくらい顔を赤らめた私は、　「八木、やだよー！　今更、私とよりを戻そうなんて！　もう別れちゃったんだからね、私たち。エッチのお相手をして欲しいんだったら、ちゃんとお手当を払ってよね！」　「ばーか！」　私の言葉に八木沢はマッハで反応した。ジョークは半分だけなんだから、何もそこまで素早く反応しなくても。　「アストラルにちょっと付き合って欲しいんだ」　アストラルと云うお店の名前が出たことで、私は急に機嫌が良くなった。　アストラルは私のワンルームから、ほど近いところにあるレストランバーだった。　私が初めて、八木沢にメェと鳴けと命令した日、八木沢は、　「分かったよ。お前には色々と世話になっているしな。だが、俺がメェと鳴く店は一軒だけだ。そしてその店は俺が決める！」　その店がアストラルだった。　私は、アストラルに行く度に、八木沢に山羊の鳴き真似を強要し、そして泥人形になるくらい酔って、八木沢に介抱されながら帰るのが常だった。　そして、私は決まって、酔っ払っていることを口実に、本音をわめき散らかして、深夜に、八木沢とアストラルのマスターに慰め、諭されるのだ。　二人は覚悟のうえとは云え、その時だけは、実に優しく私を慰めてくれて、その時だけ私も幸福な気分になる。　たぶん本当は、八木沢のことも、職場と同じように口では愚痴をこぼしても、私はきっと、捨てられた今でもそんなに嫌っていないのだと思う。　「由佳、今日は山羊はなしだ！　マジでお前に詳しく話を訊きたいんだ！」　タクシーを呼びながら、八木沢が初めて私に見せた真剣な表情に、私はこの表情も悪くないかもと内心思った。　そして、思いながら、私も美樹やみどりたちと余り変りがないのだとも思った。　「はい、分かりました」　と私が、まるで素直な女のように答えたため、八木沢は、一瞬眼を丸くしてから、ブルッと身を震わせた。　（つづく）　　　↑「小説　ぱらどっくすめもりー」です！　　「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　皆さん有難うございました☆ 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 11, 2005

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ストレンジフルート

　タイトルは「へんてこな音色のフルート＝安物のフルート」のことではなくて「奇妙な果実」のことです。果実＝フルーツが単数形のため、カタカナで表記すると同じになってしまいますね(・ω・；)　「奇妙な果実」はご存知のとおり、「ブルースのレディ　The lady　」とまで云われたビリー・ホリデーの代表作ですが、先日、福岡のジャズのライブハウスで、地元の若いジャズミュージシャンと、ワイワイお喋べりをしていたんですが、丁度、その日が、ビリー・ホリデーの誕生日である４月７日だったもので、彼女の話をしたのですが、彼らは、ビリー・ホリデーと奇妙な果実の曲は知っていても、歌詞の内容と意味を知らなかったので、大いに驚きました。　まあ、最近のヴォーカリストは、「奇妙な果実」はテーマが重過ぎて、レパートリイに採用することがないので、歌詞を聞いたことがないのも理解出来るのですが、ジャズマンたるもの、やはり、こうした歴史も含めた「人間の痛み」について知っていて欲しいかなとは思いました。　ジャズにお詳しくない方のために、ビリー・ホリデーを一寸だけ紹介しますと、彼女は1915年に、ボルチモアの黒人専用産院で誕生して、父親が15才で母親は13才と云う今日では考えられない家庭に生まれました（ビリー・ホリデー自伝）　その後、ジョン・ハモンド、ベニー・グッドマン、テディ・ウィルソン、レスター・ヤング等、錚々たるミュージシャンに認められ、彼女が２４歳になった1939年に、その前年に創設されたマイナーレーベル「コモドア」から、「奇妙な果実」は発売されました。　　この曲はルイス・アレンの詩に、彼女自身とソニー・ホワイトが曲をつけたものです。　　　　そして、何とビルボードのシングルチャート16位にランクされるヒットになりました。　「奇妙な果実」というのは、リンチの末、ポプラの木に吊るされた黒人の死体のことであり、これは人種差別に対する痛烈な告発の歌ですが、それをビリーは淡々と唄い上げています。　この歌が起因して、彼女に対する白人社会からの迫害などもあって、彼女は麻薬とアルコールへと逃避し、投獄と療養をくり返しつつ、転落の一途を辿りました。　そしてビリー・ホリデイは、1959 年7月に４４歳の若さで病院で亡くなりました。　彼女の人生の詳細につきましては、1972年のダイアナロス主演、映画「ビリー・ホリデイ物語　奇妙な果実」をご覧下さい。　　ところで、今年は、1865年の奴隷解放からちょうど１４０年目の年にあたります。　私は、ジャズを聴きはじめた少年の頃にこの曲を知って、精神的に大変な衝撃を受けた記憶があります。　今日は、ビリーの気持ちを伝えるべく、「内容伝達重視の直訳モード」で、私のヘタな訳詩をお届けしたいと思います。　　　　STRANGE FRUITSouthern trees bear strange fruitBlood on the leaves and blood at the rootBlack bodies swinging in the southern breezeStrange fruit hanging from the poplar trees Pastoral scene of the gallant southThe bulging eyes and the twisted mouthScent of magnolias, sweet and freshThen the sudden smell of burning flesh Here is fruit for the crows to pluckFor the rain to gather, for the wind to suckFor the sun to rot, for the trees to dropHere is a strange and bitter crop　　　　　　　　奇妙な果実　南部の木々には　奇妙な果実がぶらさがっている　葉は血に染まって、その根元にまでしたたり落ちている　黒い死体は　南部のそよ風に揺れて、まるでポプラの木に　たわわに実っている奇妙な果実のようだ　美しい南部の　田園風景の中に　リンチを受けて腫れあがった眼や　苦痛にゆがんだままの口を眼にして　甘く新鮮に漂う　マグノリアの香りも　突然　肉が焦げる匂いになってしまう　その果実は、群がるカラスたちについばまれ　雨に晒され　風になぶられ　太陽の熱で腐り、そして遂に朽ちて落ちる　奇妙で　むごい果実がここにある（注釈：マグノリアは、モクレン科の花でとても甘い香りがします。　　　　日本原産の代表はコブシですね。　　　　トム・スケリット主演映画「マグノリアの花たち　Steel Magnolias　　　　 89年」やトム・クルーズ主演映画「マグノリア　Magnolia　99年」　　　　など、映画のタイトルにも採用されています。　今日、「詩集　オーパーツ」完成しました(*^_^*)　皆さん有難うございました☆ 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 10, 2005

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雪雪降れ降れもっと降れ♪

ギャー　って今日はＢＢＳを含めてよく叫ぶ日です☆実ゎ　「ＶＯ５　present スカイ・ステージ・トーク　イン　福岡　special」とゆう　やたら長い名前の宝塚トークショーの招待券が当りまして、雪組の「貴城けい・未来優希・天勢いづる」さんが出演するのですが、雪組命のヅカ仲間のお友達にプレゼントしようと思って連絡したら、彼女も当たったらしく（応募者が少なかったんですかねぇ）晴れて私も行けるようになりました！『睡（ねむ）れる月』の福岡公演は、4月16日（土）～4月19日（火）で、私は３回見に行くことにしていますが、千秋楽（一応）にトークショーまで聞けるので、素直に嬉しいですp(^-^)q今年のお正月に、近くの小さな神社で、御賽銭を奮発したのが　やっぱ良かったんですかねぇ！花組以外は、さすがに出待ち入り待ちはしませんが、今は全部の組を応援したい気分なので、雪組にも頑張って欲しいと思っています！今日、「詩集　オーパーツ」に５編追加しました(*^_^*) 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 7, 2005

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変換するに能わず

　そっか　この言葉も変換ＮＧなんだ！「詩集　オーパーツ」の入力作業をしていて、幾度となくＣＰでは変換できない漢字や単語に出くわしました。　ルビもふれないし、変換出来ても機種依存文字だったりで、そんなに難しい言葉を使っているつもりはないのですが、３０年前には単なる少し古めかしいだけの漢字や単語でもＩＭＥスタンダードの辞書には存在していないのです。　辞書のレベルを上げれば記載は出来るんでしょうが、それもきっと機種に依存しそうですし、このあたりがオンライン文芸の難しいところなんでしょうかね。　詩の場合、どうしてもその文字でなければならない時がありますから、かなり辛い感じがありましたが、割り切ってしまえば、かえって古臭さがなくなって新鮮な印象に仕上がった気もしております。　結局、試行錯誤のうえ、本文記載の言葉を、ルビによって別の意味の言葉で読ませているものはルビの表現を優先し、漢字変換が出来ない文字や単語は「ひらがな」で表記し、古い漢字が辞書にない場合は、新しい略された漢字が雰囲気を破壊しない場合はそのまま使用し、雰囲気を阻害する場合は、「ひらがな」で表記しました。　詩はどちらかと云えば、エモーショナルなものですから、あまり難しい漢字や、表現はかえってマイナス面が多いのですが、ここ１番の時は、他の文字には代替性がありません。　「小説」の場合は、もっとそういう面が有るのではないでしょうか。　まあストーリーとか内容が勝負でしょうから、関係ないといってしまえばそれまでですが、それにしても、ＣＰの語彙の少なさに改めて驚いた次第であります。　純文学もそうですが、ＢＬや普通のライトノベルとかも人気があるので、私は必ずしも若い人の活字離れが深刻であるとは思いませんが、ＣＰになければその漢字や単語に触れる機会が激減しますので、その微妙な味わいの違いのようなものが感じることが出来なくなることは、日本語文化の損失のように思うのですが、皆さんのご意見は如何でしょうか？今日、「詩集　オーパーツ」に２編追加しました(*^_^*) 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 4, 2005

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第４位

　人気ＡＶ女優の「桃咲あい」さんのブログを抜いて第４位に！　って、これは「Ｇｏｏｇｌｅ」の表示順位のお話でして、或るところで「ログインＩＤ」を「ｍｏｍｏｓａｋｉ」にしたら、既に使われていますという表示が出たので、試しに「桃咲」で検索してみたら、何と　813,000 件中４番目に「ラリホー商会ジャパン公式ホームページ」が表示されているではありませんか！　これには正直云って驚きました。確かに最近、僕は相互リンクコーナーを設けたけど、それ以外にこれといったＳＥＯ対策もしていなかったし、またする気もないので、こんなに上位に記載されているとは全く思ってもいませんでした。　「桃咲あい」さんのファンの方ごめんなさい。でも他の上位表示は、全て彼女ばかりだからお愛嬌ってことで・・・　そこで調子に乗って「ラリホー」で検索してみたら、こちらの方は 13,900 件中の第２位の表示になってました。　これは、わずか２か月にも満たないブログに不相応な表示順位で、嬉しさよりも申し訳ないような気持ちになりました。　まあ、普通、「桃咲」や「ラリホー」で検索して来る訳ではないと思いますが、「Ｇｏｏｇｌｅ」に連動しているディレクトリー型のサーチエンジンがあるのでしょうか？　知らないうちに、かなりの数のサーチエンジンに表示されているようでして・・・　検索エンジンのロボットって、どういう基準でＨＰを発見し、上位表示を決めるのかは分かりませんが、きっと３週間前くらいに一斉に表示されたのだと思います。　その頃から急にアクセス数が増えて、それまで１日２００アスセスくらいだったのが１０００アクセスを超える日が何日も続きまして、時々、アクセス記録表示を見るのですが、３分の２くらいは、楽天さん以外の方でして、ＯＣＮ、ＤＩＯＮやその他色々なプロバイダーさんの所からみえて戴いておりますが、お名前などが表示されませんし、数人の方を除いて、あまり書き込みなどもされないようなので、ちょっと残念な気もしております。　そしてヤフーの方は当然ながら、検索エンジンなどの関連表示はありましたが、本体は登録されていませんでした。　当然だと思いますし、もっとおみえ戴く皆さんに気に入っていただけるブログになるまで、ヤフーには掲載されない方がいいと思っております。　これだけの方に来ていただいて、皆さんが、少しでも時間を費やして戴くわけですから、個人のブログといえども、これからも「独りよがり」にならないようにしたいと強く決意した今日でした。　これまでご訪問いただきました全ての方に、深く感謝致しますと共に、これからも「ラリホー商会ジャパン公式ホームページ」をどうぞ宜しくお願いいたします！　　P.S. ヨハネ･パウロ2世のご冥福を記上からお祈り申し上げます今日、「詩集　オーパーツ」に１２編追加しました(*^_^*) 　　↑「詩集　オーパーツ」です！　

Apr 3, 2005

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