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Apr 17, 2005
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カテゴリ:小説


マーブル小説:  ぱらどっくすめもりー


            第2章 (第3回)


 「困るんですよね」
 「はあ」
 「我々も忙しいので、もっと真剣に答えて戴かないと」
 「・・・」
 「八木沢さん、聞いてるんですか」
 「えっ?」
 昨夜は酔い潰れた時と明け方にちょっと眠っただけだったので、睡眠不足と二日酔いで体調は最悪だった。
 今日の現場検証には、専門家の捜査官と作業員らしい服装の男が数名来ていて、思っていたよりずっと本格的な検証が実施されていた。
 そして彼らは、今回の事件が空き巣や強盗による犯行ではないと直ぐに断定した。
 確かに素人の俺でもそう断定出来そうな状況が揃ってはいたが。
 調度品があれだけ粉々になったのに、窓ガラスは全く割れておらず、施錠も完璧だったからだ。
 あそこで俺がナイフにでも刺されて死んでいたら、歴史に残る完全密室殺人事件になっていたかも知れなかった。
 外部からの不審な侵入者がいないとすれば、後は合鍵を持っている者の嫌がらせか狂言という事になる。
 捜査官の話では、捨てられた女性が合鍵を使って男性の部屋に入って、腹癒せに花瓶とかを割ることは時々あるらしかった。
 その話を聞いて、由佳だったら別れ話の仕方次第では、このくらいのことはやりかねないと思って俺はニヤリと笑ってしまった。
 それを見ていた捜査官が、只でさえ要領を得ない俺の話に苛立っていたこともあって苦言を呈したのだった。

 捜査官の口振りからは、今回の事件とテロとの関連を疑って俺の背後関係を調べた形跡が感じられた。
 勿論、俺にテロリストの友人はいないのでシロだと判明したが、念のため爆発等があったかの検証をしていたようだ。
 暫くして、作業員が捜査官に何か耳打ちして現場検証は終わった。
 「我々はこれで引き上げますが、もし合鍵を渡している人を思い出したら連絡してみて下さい。それじゃ」
 「あ、どうも」
 俺は捜査官にぺこりと頭を下げたが、捜査官がちっと舌打ちしたのを聞き逃さなかった。
 結局、捜査官は今回の事件は俺の狂言だと思っていたのだ。
 狂言の場合、それを証明するのが技術的に難しいと云う話を聞いたことがある。
 多くの場合、警察は立件せずに内部的に処理をしてしまうようだ。
 ましてや、今回のように被害を受けたのが狂言者である俺だけという、阿呆らしくて間抜けな事件では尚更だった。
 捜査官は俺の部屋を出て、エレベーターに向かう途中で、
 「まったく人騒がせな野郎だぜ」
 と吐き捨てるように云った。
 彼らを見送った後、俺がそのままぼうっと突っ立っていることに気が付かなかったのだ。
 その時、俺は注意力が散漫な捜査官だと思ったが、「モリヤの笛」のことを彼に云わなくて正解だったとも思った。


 「なるほど、そうでしたか」
 アストラルのマスターは、いつもの偽善者然とした微笑を湛えながら、落ち着いた口調でそう云った。
 今回の話を聞けば、普通はもっと驚きさそうなものだが、マスターは俺に何も質問をしないばかりか、まるで予想していたかのように、
 「今日の夕方にでもお店の方にみえませんか? もしかしたら役に立つかも知れない人を呼んでおきますから」
 と云った。
 「えっ?」
 藁をも掴む気持ちで相談した俺は、マスターの意外な言葉にあっけにとられた。
 「八木沢さんもご存知の人物です。詳しいことはその時にお話します。それじゃ、私はちょっと急ぎますので」
 そう云うとマスターは、ぽかんとしている俺を残して喫茶店を後にした。
 
 「役に立つかも知れない人を呼んでおくだと?」
 正直に云うと、俺はマスターの何となく得体が知れない雰囲気にいつも馴染めない気持ちを持っていた。
 由佳が一緒の時は大いに盛り上がるのだが、マスターと二人の時は、俺の調子が狂って、俺だけが酔い潰れるというパターンが多かったのだ。
 そして、由佳に云わせるとマスターは俺の千倍くらい頼りになるらしかった。
 マスターからはトラブルを解決してくれそうなオーラが出ていて、俺からはトラブルを起こしそうなオーラが出ているとも診断してくれた。
 悪かったな、トラブル発生男で。
 由佳の言葉を思い出して俺は不貞腐れそうになったが、潜在意識のなかで俺もマスターを頼りにしていたから、気が付いたら彼に相談していた訳だから、今回ばかりは由佳の説を認めざるを得なかった。
 何れにしても、こんなに早く何かの手掛りが掴めるとすれば幸運だったし有り難いことではあった。
 ただその一方で、狐に摘まれたような感じも拭えなかったので、マスターの言葉を余り過大に期待するのは禁物だとも思った。

 冷め切った珈琲を啜りながら、由佳の携帯を取り出すと、俺は着信履歴などをもう一度確認してみた。
 あの時、俺が由佳のワンルームに入ってみると、由佳の姿がなかっただけではなく、俺のマンションの時と同じように花瓶やぬいぐるみなどが粉々になって床に落ちていた。
 モリヤの笛が戻ってきていたのは間違いなかった。
 俺の場合と異なっていたのは、俺は誘拐されなかったが、由佳は誘拐されたという点だ。
 やはりあの話は由佳にしておくべきだったと俺は深く後悔した。
 モリヤの笛が消えて竜巻になった時、モリヤの笛は俺に「菊池由佳さんですね」と訊いたのだ。
 モリヤの笛が俺に喋りかけてくることなど全く予想していなかったことと、雑音が混じっていたこともあってハッキリとは聞き取れなかったが、モリヤの笛は確かに俺にそう訊ねた筈だった。
 クライアントの会社に出向こうとしたところだったので、俺はネクタイ姿だったし、見れば由佳かどうかくらい分かるだろうと思った記憶が残っているからでもあった。
 モリヤの笛はそれから何かの確認作業に入ったような感じがあって、やがてゆっくりと消え始めた。
 その後で、あの忌まわしいスローモーションの竜巻が起こったのだった。
 俺は由佳に、モリヤの笛が由佳の名前を出したことを話そうと思って、何度も喉まで出かかった。
 しかしその度に、由佳は俺が精神病を病んでいると確信している様子だったので、この話をすれば直ぐにでも救急車を呼びかねないと思って止めにしたのだ。
 知っていればどうにかなったかは分からないが、よく考えてみれば、一番危険な状況にあったのは由佳だったのかも知れない。
 モリヤの笛には消える能力があったのだから、現れる能力だってあった筈だった。
 本当は俺の方が一晩中、由佳に付き添ってやっていなければならなかったのだ。
 それなのに俺は酔い潰れたあげくに、由佳に豚の鳴き声をさせたり、俺とエッチをしたがっていると勝手に決めつけたりして、何とヒドい男だったのだろう。
 俺は自己嫌悪で一杯になった。

 俺が、由佳のワンルームから持って来た彼女の携帯にはパスワードなどが設定されていなっかたために、簡単に履歴が確認できた。
 着信と発信はその相手の大半は俺だった。
 後はアストラルのマスターが数件、それから家族なのだろうか固定電話とのやり取りが数件あるだけだった。
 メールの方も半分以上は俺で、アストラルのマスターとのメール交換はなく、会社の同僚からの合コンのお誘いを断っているメールが結構あった。
 それは、行きたくないとか体調が悪いだとか、貰った相手がむっとしそうな素っ気のない断りのメールで
 「よく云うよな」
 と思わず俺は呟いてしまった。
 由佳は常々、俺のメールが素っ気がなくて誠意が感じられないと俺を嗜めていたことを思い出したからだ。
 俺が由佳と別れた理由は、由佳の男性関係とかでは勿論なかったが、これだけ感動的に男との付き合いがない由佳を知ってしまうと、別れたことがひどく非人間的な仕打ちであったような気がして俺は胸が締め付けられた。
 又しても、由佳が俺を薄情者だと云う根拠が明らかになったのだ。
 もしかしたら、由佳が云っていることの方が全面的に正しいのかも知れない。
 俺は、由佳の失踪について家族や警察に知らせる時が何時かは来たとしても、当面は俺独りで由佳を助け出さなければならないと強く思った。

 アストラルに一番近い地下鉄の改札口を出た時にマスターから携帯が入った。
 先刻云った人物と連絡が着いて、今、店で二人で待っているとの事だった。
 俺は、その人物は誰なのかを訊ねたが、マスターは会えば分かると云って携帯を切った。
 相変わらず勿体をつける男だ。
 案外、由佳だったりして。
 その人物が由佳だったら、事件解決の役に立つ人物ではなく、事件そのもが解決してしまうから、それはさすがに有り得ないことだった。
 そうなるとその人物とは一体誰なのか?
 そうこう考えているうちに、アストラルが入居しているビルが見えて来た。

 「何だ原口じゃないか?」
 俺は素っ頓狂な声を上げた。
 アストラルのドアを開けると、マスターと俺の大学時代の後輩でこの店を俺に紹介した原口の顔が眼に入ったからだ。
 「何だとはヒドいじゃないですか、八木沢先輩」
 と原口は云った。
 「マスター、これは一体?」
 俺がそう云いかけた時、背後から何者かの手によって俺の口はハンカチのようなもので塞がれた。
 「これはクロロホルム?」
 反射的にそう思ったら、案の定、意識が遠くなりかけてきた。
 「畜生、どうなってるんだ!由佳の次は俺まで誘拐しようってのか?」
           (つづく)
 



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