|
カテゴリ:家庭
友人の長尾聡が撮ったドミニカ移民のドキュメンタリーを観るまで棄民政策を知らなかった。
国家犯罪を教科書で教えるわけがないから当然といえば当然だが。食糧事情保護という大義のもとに行われた口減らし。甘い汁を吸った外道たち。映像にでてきた役人はこんなことをいっていた。 過去の運用に不手際はあったことについての話なら耳を傾けます。責任を問うならば話は別です。 そいつは象徴であっても責任はないのだ。権益は存在するのに。誰も尻拭いをしないですませるシステム。思い出す度に怒りでいっぱいになる。 さて、本書。 ブラジル棄民政策の生き残りが日本外務省に牙をむく。 日本とブラジル。物理的な舞台設定の広さもさることながら、関わる者の背景、人生観、人生経験の違いの描写が作品を広がりのあるものとしている。 どろどろとした復讐心だけではない。愛する者を思う気持ち。弱ったものに手をさしのべる優しさ。愛すること。多岐に渡る感情もまた深みを与えている。 混沌としているのに美しい。貧困と富裕。友情と裏切り。棄てる側と棄てられる側の論理。つねに裏表がつきまとい、たちまち逆転する展開がダイナミックだ。 「この国は貧乏臭い」 日本人の甘さを突く台詞がつづくのに村上龍的な「この国は腐ってる」論で終わっていないのはあの国のもつ明るさのせいか。 もっとも、絶望の果てには希望しかないのかもしれないが。 生きていくことの根源、本能みたいなものを揺さぶられる。(♂) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年11月20日 19時46分11秒
|