外食は楽しみである。知らなかった美味しい料理が出てきたら家で再現してみたくなる。メインと付け合わせのコンビネーションに新発見があっただけでも嬉しい。また、少量ずつたくさんの料理が出てくるのも良い。家ではそんなにたくさんの料理を同時に作ることは出来ない。材料の入手が困難な料理も良い。カエルとか、イノシシとか、シカとかの入手経路を持っていないので、こういうのはジビエの季節にそのようなレストランに行かなければ食べられない。
逆に外食したとき、家で食べるようなものは食べたくない。その筆頭がハンバーグだ。ハンバーグはしばしば家で作る。簡単だし、味が安定している。十分に美味しい。だから、外食でハンバーグを食べることはない。家で作るより美味しいことはまずない。
子供の頃母が作ってくれたハンバーグはあまり美味しくなかった。店で食べた方が美味しかったのだが、その理由は自分で作るようになってから分かった。母はタマネギのみじん切りを入れていたが、生のまま、肉と混ぜていたのだ。まあ、炒めて入れるのは面倒ではあるのだが。
スーパーマーケットで牛豚の合い挽きの挽肉を買う。もちろん、塊を買ってきて自分でミンチを作っても良いのだろうが、それほどの料理でもない。私は和牛は脂が多くて気持ち悪いから、すべての牛肉料理に積極的に赤身の牛肉を使う。店によっては、挽肉に脂が多く混入している。これはハンバーグを焼く時に判明するから、覚えておき、二度とその店では買わないように気をつける。信頼できる店で安売りしている合い挽きを買ってくるようにしている。
まず、タマネギをみじん切りにして炒める。ハンバーグの味を左右するのは、このタマネギの炒め方と、肉の品質だけだから、真面目に炒める。タマネギは白-透明-茶色と変化するが、茶色になるまで炒めている。炒め終わったらボウルに移し、冷ます。冷ますだけの時間が必要なので、夕飯でハンバーグを作る時は、昼にタマネギだけ炒めてしまう。母もカミさんもこういうことを嫌うようだ。夕方、なるべく遅く食事の支度を始め、一気呵成に作りたがる。私は工作でもチェロの練習でもちょこちょこと何回にも分けてやるのが好きだ。
タマネギが十分に冷めたら材料を混ぜる。タマネギに挽肉、生卵、パン粉、適当な香辛料(オレガノとかタイムとか)を加え、こねる。塩は入れると肉から水が出るから、ここでは入れない。焼く直前に塩胡椒をしている。分量は特に量っていないけれど、挽肉300gにタマネギ大・半個、卵1個、パン粉は卵1個分くらいの体積くらいだろうか。竹製のしゃもじのようなものでこねたら、人数分に分割して丸め、手に叩きつけて空気を抜いていき、フライパンの大きさをイメージしながらなるべく薄く整形する。我が家は4人家族だから、丸いフライパンを4分割した1/4円以内の形にしている。そうしないと、いっぺんに焼けない。
フライパンを強火にかけ、煙が出てきたら油をしき、なじませる。ハンバーグの種の片面にしっかり塩胡椒をふり、その面が下になるようにフライパンに入れ、上面に塩胡椒をふる。下面が固まったらひっくり返し、直ちに弱火にし、ちょっと焼き目が付いたら濡れ布巾にフライパンをのせて冷ます。弱火のコンロにのせ、蓋をして蒸し焼きにして中まで火を通す。頃合いを見て竹串を刺してみて、透明な油が出てきたらOK。私は多少生でも怖くないが、食べる人が気持ち悪がるので、ちゃんと火を通している。
フライパンに残った脂だけ捨て、焼けカスに、ワインだのバターだのケチャップだのトンカツソースだのを、その時の気分で加え、ソースを作る。ぐずぐずしているとハンバーグが冷めてしまうので、手早くできる物だけだ。真面目にソースを作りたい時は、ハンバーグを焼く前に心静かに作る。