『ガリヴァー旅行記』 スウィフト
スウィフトの『ガリヴァー旅行記』を読了。(岩波文庫、平井正穂訳、1726年/1980年)この本を読む前は、ただの「童話」だろうと思っていたけど、大間違い。この本に書いてあった「偏見」の恐ろしさだ。そもそも「童話」が子どもの読み物だと思っていた自分がバカなのだ。内容は、第一篇から第四篇まであったが、第一篇は、あの有名な小人の国の話。主人公が、体を仰向けのまま、手足を大地に縛りつけられていた話だ。文章は、とても綿密で読み応えがあり、作者の想像力の豊かさ、柔軟さに驚いた。そして、近代の書物によく見られる理想的な合理的センテンス。200年以上も前の本とは思えなかった。読み始めると、あっという間に惹きつけられ、主人公と同様、一喜一憂した。しかし、一番興味を示したのは、第四篇。気がついたら一気に読んでしまっていた。ここを読んで、この本が「童話」ではなく、「社会風刺本」だということがよくわかった。そういえば、以前に読んだ阿部謹也さんの『自分のなかに歴史をよむ』の中にも、今日、少年少女たちに読まれている昔話は、元々、当時の社会風刺本であるものが多い。ということを読んだことがあった。様々な魅力溢れる架空の国々や、想像を逸する不思議な人々を描くことで、17世紀あたりのヨーロッパ社会の矛盾や不正を痛烈に批判した一冊。我々人間に対する批判もたくさんあった。心にグサッとくることがたくさんあった。また読み直す必要がありそうだ。