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カテゴリ:狩猟
今期2度目の師匠と二人での犬無し忍び猟に出撃。
猟期も終盤。 集落周辺の山で猟犬に追われた鹿がきっと上流に溜まってくる。 それに雪も今年は無い。 天気も上々、日が高くなれば動くはず。 などなど、師匠と車で相談しながら、今日の猟場をピンポイント3カ所、もしくは4カ所に特定。 まず最初に行ったポイントは、標高1,000mを越える稜線上のススキの原っぱ。 そろそろ出会ってもおかしくないなと話していたその時、 ピィ~ッ! と、子を呼ぶ親鹿の鳴き声。 すかさず、俺が鳴き声の方に走り、師匠は鹿が逃げるだろう場所へ陣取った。が、鹿を見付けて銃を構えた途端、親が師匠のいる方向とは逆に飛んだ。 1頭ではないはず、とそのままの体勢でいたら、すごい勢いで2頭が続いて、あっという間いなくなっちゃった。 これで、万事休す。 もっとこっそりじっくり行けばよかったなかな。悔しいなあ。 続いて第2ポイント。 南向き斜面で、200年クラスの大杉が綺麗に立ち並ぶ林の中で、すこぶる見通しが良い。 ん、なにかこっち見てる。 すかさず、銃を構え、 ドッカ~ン! 2頭の鹿が走って行ってしまった。畜生、外したか・・・。 それにしてもやりにくい。 結構気温が低いせいか、モノも動いてないようで、今日の足跡がひとつも無いのである。 それでもモノに出会えてるってことは、モノのテリトリーにこっちが踏み込んで行ってるということで、犬も使ってないのに、まあ結構な事ではある。 引き続き、今度は斜面の上の方を横切っていく鹿を発見。だが、木立の中をちらちら走るので、撃てず。 だが、まだ近くにいるかもしれないので、師匠は撃ちやすい場所に陣取り、俺がモノを探しにその斜面を斜めに上がってみた。 今日の俺は勢子役のようだな。 稜線まで上がったが、モノは切れて行ってたみたい。 で、今度は稜線伝いに歩いていると、ほんの10mそばの茅の中で、ガサガサッと気配が。そして姿は見えないが、あわてふためいてモノが下って行くのが分かった。 “師匠、下ったでぇ!” 無線を入れてしばらくすると、 ズバ~ン! とライフル発砲音。 “あかんわぁ、2頭、どえらい下だったわ。下に集落あるし、撃ちにくいで。” 下の集落と行っても、標高で500mくらい下なのだが、なにせ、射程距離が数キロにもなるライフルなので、師匠も常に慎重なのである。 ここまででモノとの出会いは二人合わせて8頭。 居るところに来ればやっぱり出会えるもんだなあ。 さて、本日の第3ポイント。時刻からしてここが今日最後のポイントだろう。 ここは今期に入って、俺が一人で忍んで2度やられている所。 起伏があって見通しは100m程度だが、杉のすき間が広いので撃ちやすい。 しかし、これまで1度は下から、2度目は上から入って、いずれも横に切られて発砲すら出来ず。 師匠と相談し、斜面を下から入ることにして、師匠は左から、俺は右から入った。 今まで、2回とも右に切って逃げられてるので、俺は思いっきり右端を押さえ込むようにして斜面を直登。俺が登ってる直登ラインの右側は急に切れ落ちていて、モノが走るコースは限られている。そこを押さえ込んでモノが右に逃げないように、という俺の考え。 吉と出るか凶出るか・・・。 う~ん、出ないなあ。 “師匠、お留守みたいですぜ。”と言おうとして何度かマイクに手を掛けそうになったが、しぶとく登り続けた。 登っては止まって気配を取り、登っては止まって気配を取り、と繰り返す。 10分ほど登っただろうか。 出たっ! よし、しめた! 右を押さえたつもりだったのが功を奏したのか、モノは左へ、つまり師匠の方へ向いている。 まだ走らず、お前誰や?ってな顔してこっちを見てる。 ザックを放り投げ、しゃがんで挙銃。 ドッカ~ン! ドッカ~ン! ドッカ~ン! 1頭真下に駆け下り始めた。弾がかすったかな? 残りは師匠の方へ一気に走り始めた。 “3つ、そっち行ったで!” 返事は無い。師匠も気配を殺して臨戦態勢に入ってるのが目に浮かぶ。そう言うときは、気配を殺すために、無線の返事もしないのである。 ズバ~ン! ズバ~ン! ズバ~ン! ズバ~ン! ズバ~ン! 師匠のライフルがこだまする。 おお、なんとトナカイが俺の100mくらい下を師匠のいた方から走って来るではないか。 で、でけぇっ! その後に一回り小さいが、これもいいサイズの雄鹿がのたりのたりと走ってくる。 でも走りが遅い。一目でこれは2頭とも師匠の矢が入ってると判断。 でも止めないと走られる。 ドッカ~ン! バッカ~ン! バッカ~ン! そのまま通過・・・。 “どうや~?” すこし余裕の師匠の声色から、師匠の方に1頭倒れているのを確信。 “1つごついのが抜けて、あとのもう1つは下ったよぉ。足追います。” 一気に斜面を走り降りて、足を拾う・・・。 あった! 血糊も落ちている。やはり当たってる。 “師匠、ノリ(血糊)拾ったよぉ。赤い血です(どす黒くないってこと)。” 足を拾っていったら、4m程の崖で足が消えていて、崖から生えてる灌木に血が付いている。 “崖まくれてるわ。きっと下に転がってるよぉ。” 回り込んで行ってみると、三ノ又のごっつい鹿が転がっていた。 よしよし、しかしでけぇな。 最初に俺が撃って下に走ったモノと、師匠が撃ったあと、俺の下に回ったうちの1頭の足を拾おうとしたが、あわてふためいた足跡が、途中から忍び足に変えられていて拾えず。 もしかしたら矢がかすっていたかもしれないが、時間切れであきらめることに。 こうして、このポイントで、おそらく4頭出たうち2頭を仕留めるウハウハの結果。 さすが師匠の銃の腕は素晴らしい。 だが、時は14時。もたもたしていると解体して山を下る前に日が暮れてしまう。 大急ぎで解体作業開始。 師匠が最初に止めたモノは一本角のオスだった。そやつを解体してから、俺の所を通り過ぎたごつい三ノ又の解体開始。 「渓遊ちゃん、このへんにキュウリ売ってある?」 肋骨当たりの皮を剥きながら、師匠から訳の分からん問いかけ。 「はぁ? キュウリですか?」 「ちゃうよ。このへんにキュウリュウ(9粒 鉛が9つ入った散弾のこと)撃ったか?」 「ああ、9粒撃ちましたよ。」 「いや、これ、この穴、俺の弾じゃないわ。9粒の穴やで。」 たしかに、2つ肋骨に穴が空いていて、それも貫通していない。ライフルなら間違いなく貫通する。 「この鹿、俺の弾は足を抜いているけど、渓遊ちゃんの矢が肺に入ったんがトドメになってるわ。こやつは渓遊ちゃんのやで。」 師匠が俺に花を持たそうとしてくれている。 「いやいや、手柄は鹿は初矢、シシは止め矢って師匠から教わってますよ。足に入ってなかったらどっちにしろ、俺の所に回ってきてないし。」 ま、俺の矢がモノを止める一助となったことは嬉しいが、手柄は正直どっちでもいいかな。師匠と一緒に山に入って、それぞれの役回りをこなし、結果を出せたことの方がもっと嬉しい。 2頭解体して、身の回りの整理をして、車に戻って猟装を解いて、エンジン掛けたのが17時。 谷が深いので、既に薄暗い。 それにしても、よく歩いて、よく鹿を出して、全部で出た鹿は12頭か。そして、よく撃った1日だったな。 そして結果も出せたし。 去年も師匠と二人で忍びに入って1日3頭倒しているが、今日は見事なチームプレイで2頭倒せて、満足度の高い楽しい猟が出来た。 師匠もかなり嬉しそうで、お互い車中でしゃべり続けている。 この場にビールでもあれば、多分記憶無くすまで二人で飲み続けていたに違いない。 帰宅してから、肉(骨付き)の重さを計ったら14キロあった。なかなかの重さですな。 そして、風呂に入ってお約束のビール。 俺は1リットルくらいで撃沈、意識不明。 後日聞いたら師匠は3リットル超えたそうだ。恐るべし60代。 こうして樹氷の中での鹿との追っかけっこが、ようやく清く正しく終わったのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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