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February 15, 2006
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カテゴリ:映画
まだ、震えが止まりません。

単なる感動ではなく、人間に対する恐怖でもなく、怒りでもなく感情のどこかが直に揺り動かされるような…。

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1994年。アフリカ、ルワンダ。

フツ族出身のポールは、ベルギー系ホテルの支配人。
ツチ族の妻を持ち、ルワンダ政府軍将軍や、国連軍の大佐、欧米の記者、赤十字の職員達からも信頼されるホテルマンです。

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少数派のツチ族と多数派のフツ族の民族対立は、国連の平和維持軍(Peace Keeping Operation)の仲立ちで終息に向かうかに見えました。

しかし、和平派の大統領が暗殺されたことをきっかけに、周到に準備されていたツチ族大虐殺が幕を上げます。

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主人公に出来るのは、自分の家族を、そして、自分を頼って来た隣人たちを守ることだけでした。

「危険」を盾に現場に出ようとしない記者も、カメラマンの突撃取材映像を観て、世界への配信を決意しますが、これは国際世論に逆効果をもたらします。

すなわち「国際社会はルワンダから手を引く」と。

国連軍のおかげで何とか均衡が保たれていたホテルの平和も、危機に晒されます。

何も出来ない現実に、歯噛みする平和維持軍の大佐。
それでも孤児達を救おうと街に向かう赤十字職員。

緊迫感を増す国内事情。

「ツチ族を匿う者は裏切り者だ」と扇動するラジオ。
ツチ族をゴキブリと呼ぶ男は、主人公に言います。「ゴキブリの臭いがする」と。

圧倒的な虐殺の現実の前に、妻の胸から下げられた十字架は、沈黙したままです。

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道路を埋め尽くす死体。
虚しく転がされ、火を噴いている赤十字のバス。
鉈を手に街をうろつく「普通の」人々。

平和という言葉の無力さ。
虐殺の熱狂に酔う人間の弱さ。
賄賂がなければ、命さえ救えない現実。

次から次へと襲い掛かる危機に、ホテルマンとしての知恵と経験と人脈を駆使して、手の届く人々を守り続ける主人公。

「アフリカのシンドラー」と呼ばれた男の「戦い」の軌跡を描いた、奇跡の映画です。

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主人公はどこにでもいる、普通の人として描かれます。

つまり、彼は結果としてのヒーローであっても、「映画の主人公のような」スーパーマンではありません。
(いや、本当は語学が出来て、仕事も出来て、の優秀なホテルマンなのですけどね。)

また、この映画には必要最低限以上の残虐なシーンはありません。

その意味では「安全な」映画でありながら、残虐なシーンが省かれている分、「心の問題」に焦点が当てられます。

息をつかせぬ展開、緊張感を失わせないカメラワーク、音楽のセンス、映画としてのクオリティもとても高い作品です。

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しかし、この映画が、我々に突きつける問いは、あまりにも重い命題。

つまり…

同じ情況におかれた時、あなたならどうしますか、と。
あなたはあなたの立場で、今、何をしますか、と。

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第二次世界大戦終結後、「冷戦」と呼ばれる時代は、正確には「代理戦争」の時代でした。

民族間の、あるいは貧富の差を契機とした小さな火種は、イデオロギーと大国国益主義の油を注ぎ込まれて、殺戮と憎悪の暴発をもたらしました。

しかも、その「民族」という概念さえ、植民地主義によってもたらされた、あいまいな定義に過ぎなかったことを思えば、誰が何に怒りを覚えるべきなのか。

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あるいはイデオロギーによる殺戮があったことも忘れてはなりません。

「民族自決」の概念は、各地で独立運動を産み、それに対する「政府」による弾圧-殺戮という構図が各国で見られました。

「普通の人々」の狂気を引き出したイデオロギーは、凶器と化して自国の国民を襲いました。

それだけで悲劇は終わりません。

「冷戦」の終結後、余剰となった武器が新たな紛争地に持ち込まれ、あるいはテロリスト達の手に渡り、一層の悲劇を産みます。

いや、産み続けています。

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人の命の重さが同じだ、というのなら、犯した罪の重さも同じです。

私の中にも差別の感情はあります。
嫌いな奴もいますし、他人に殺意を抱いたことだって、あります。

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関東大震災の時、風説の流布により、「普通の人々」が朝鮮半島出身の人々を殺戮した事実。

日本に住む「普通の人々」が、兵士となり、アジアで人を殺してきた事実。

いまだに原爆の連続投下を正当だと主張する、加害国の「普通の人々」の気持ち。

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私は、私自身も「普通の人々」の一員であり、彼らと同じ立場に立った時、日頃の憎悪 あるいは 「自分の身を守るため」という大義名分といった導火線があれば、人を殺してしまいかねないことを知っています。

だからこそ、ブレーキとしての平和の必要性を声高に叫びますし、「不偏不党無所属」を看板に掲げています。

以前「大アンコールワット展」の感想で書いた文章を再度掲げましょう。

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宗教が人を殺すなら、私はそんな神を信じない。
権力が人を殺すなら、私はそんな政治を認めない。
利権が人を殺すなら、私はそんな会社を許さない。

民族が人を殺すなら、私はそんな「民族」に属さない。
思想が人を殺すなら、私はそんな言説を肯定しない。


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アカデミー賞にノミネートされたのこ映画はしかし、日本での配給が危ぶまれていました。

それに対し、この映画を上映する運動が起こり、その結果、日本公開が実現しました。

詳しくはこちら

私はそんな運動があったことを知りませんでしたけど、上映に漕ぎ着けて下さった方々に感謝を表したいと思います。

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全編英語、っていうところに違和感を覚えないではなかったのですが…作品の価値を考えると許される瑕疵かな、と。

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『ホテル・ルワンダ』
- "HOTEL RWANDA" -

2004年 南アフリカ=イギリス=イタリア 122分

http://www.hotelrwanda.jp/

監督:テリー・ジョージ
出演:ドン・チードル / ソフィー・オコネドー / ホアキン・フェニックス / デズモンド・デュベ / デイヴィット・オハラ / カーラ・シーモア / ...

★★★★★


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参考までに、これらの映画も挙げておきましょう。

★DVD大バーゲン!★シンドラーのリスト (限) 『シンドラーのリスト』 (ホロコースト)
ブラックボード 背負う人 『ブラックボード~背負う人』 (イラン・イラク戦争)
お買い得地雷を踏んだらサヨウナラOne Step on a Mine,I'ts All Overチームオクヤマ第一回作品... 『地雷を踏んだらサヨウナラ』『TAIZO』 (カンボジア内戦)
お買い得ボウリング・フォー・コロンバイン《中古DVD》 『ボウリング・フォー・コロンバイン』 (武器商人)
ライフ・イズ・ミラクル 『ライフ・イズ・ミラクル』 (ユーゴ紛争)

 『ロード・オブ・ウォー』 (武器商人)


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どれも映画として見ごたえがあり(面白く、と言うと不謹慎かしら)、かつ考えさせられる作品です。

(写真はアフェリエイトリンク。題名からのリンクは感想。)





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Last updated  June 21, 2006 07:21:35 AM
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mrtk@jp@ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
I read your post and wished I'd wrtietn it@ I read your post and I read your post and wished I'd wr…
mrtk@jp@ Re:★芝居★ 劇団ここから 『春の遭難者』 (10/13) こちらこそ、素晴らしい時間を過ごさせて…

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