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December 21, 2008
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カテゴリ:美術
ドイツに住んでいた時、どうしても行きたい街がありました。

その街の名前はデッサウ
建築・美術の総合学校として名を馳せた、バウハウスの息吹が残る街。

機能性・合理性と美しさが直結した、バウハウスのデザインは、
古びないどころか、今でも新鮮な驚きを与えてくれます。

事前知識は持っていたつもりでしたが、デッサウの街の佇まいは、
想像を軽く超えていました。

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モダンで明るい建築物群。
卓越した工業デザイン。
絶妙な色彩バランスを保つ絵画。

それらが今でも息づいていて、オフィスやカフェとして、
当たり前に、機能性を失わずに使われているのです。

見学用の校舎やマイスターハウス(教師のための住居)ですら、
明日からでも使えそう。

十分に楽しい体験ではありましたが、しかし、あまりにも膨大な情報量に、
自分の中の整理が追いつかなかったことも確かです。

=====
この夏、東京藝術大学大学美術館で、「バウハウス・デッサウ展」をやっていると聞き、
デッサウに再び行くよりは近い」と自分に言い訳して、東京に向かいました。

-----
この展覧会では、バウハウスの歴史と各方面にわたる活躍が、
その多様性をそのままに、分かりやすく整理されながら紹介されていて、
単なるデッサウ滞在の追体験以上に、知的刺激を与えてくれる、
期待以上の面白さでした。

=====
1.バウハウスとその時代

Bauhaus.jpg
(写真はwikiより)


これだけ大きな影響を与えたバウハウスですが、
活躍したのは、1919年から1933年までの14年間に過ぎません。

「アーツ&クラフツ運動」の影響を受け、
そのドイツ的展開として始まったバウハウス

しかし、この時期はナチス台頭の時期と重なり、
美術家・建築家を目指して挫折した経験のあるヒトラーから
退廃芸術」の烙印を受け、息の根を止められます。

=====
2-1.基礎教育

バウハウスでは、パウル・クレーカンディンスキーといった画家達が、教壇に立ちました。
その教育も、色彩と心理の研究から物質・素材の用途研究にまで及びます。

-----
面白かったのは、ヨーゼフ・アルバースの「構成研究」の実作品群。

一枚の紙に、丁寧な切込みを入れることで、それだけで、
安定感のある立体が、複雑な模様が、立ち現れてくるのです。
切紙細工にも似た、不思議な世界。

-----
そして、パウル・クレーカンディンスキーの、色彩授業。

それぞれの色が持つイメージ、その活かし方、形と色、
他の色を背景にした場合、どう見えるか…。
色彩の魔術師たちが、生徒と共に重ねた実践研究。

-----
単なる建築(=バウ)の学校に留まらない、幅広く自由な芸術教育が、
バウハウスの豊かな創造性へと繋がっていたことを、見て取ることが出来ます。

=====
2-2.工房

バウハウスの工業デザインは、実際の製品となって、人々の手に渡りました。

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卓上ランプや吊照明、椅子のデザインは、今見ても斬新で魅力的。

そして、それらが、それぞれ個性的でありながら、
大量生産にも適しているという点が素晴らしい。

折りたたみ椅子にしても、肘掛け椅子にしても、
すごくデザイン性に富んでいるのに、バラした構造は実にシンプル。

-----
そのことが分かる、椅子の構成パーツをそのまま貼り付けた、
宣伝用見本板が展示されていて、このインパクトはすごい。
なにせ、実物大ですからね。

しかも、これだけシンプルな構成要素から、
デザイン性と機能性に優れた椅子が成り立っているなんて、
溜息が出てしまいます。

=====
2-3.写真と美術

そして、絵画、写真、コラージュ。

特に写真では、丁寧なスナップ写真から、ピントを調整したもの、
影を強調したもの、被写体を「構成」して撮ったもの、などなど
様々なテクニックが駆使されていることが、素人目にも分かります。

-----
しかし、一番印象に残ったのは、
バウハウス・デッサウが閉鎖される日に撮られた、一枚の写真。

デッサウに今も残る、食堂のテーブルの端に、
難しい顔をし、腕組みをして座る、一人の少女。

真っ白で細長いテーブルには、何も載っておらず、
テーブルに映る窓枠の影は、十字架にも見えて、
それを意識すると、髪を帽子で覆っている少女の姿が、
修道女のようにも感じられ、何も無い空虚さ、それ自体が主張を始めます。


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=====
2-4.舞台

バウハウスの建物の中には、舞台空間が用意されていました。

ここで演じられたお芝居のビデオが上映されているのですが、これがすごい。

学生時代に演劇をかじったこともあり、
それなりにお芝居は観ているつもりですが、
それでも、なお、前衛的だと言わざるを得ない。

-----
仮面をかぶっての、幾何学的なダンス。
色彩鮮やかな衣裳に身を包み、演じられる無言劇。

他の美術展で何度か、ピカソサティの舞台映像を見たことがありますが、
それよりもさらに実験的で、構成的。

-----
面白いのか、と聞かれれば、生でない舞台を評することはフェアじゃない、と答えましょう。
しかし、観た者の中に、何かを生み出させる、「核」をもっていることは確かです。

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完成された舞台では決してないにもかかわらず、
完成された何がしかを期待させられてしまう、
不思議な不思議な舞台空間。

「完成形」を見ることの多いバウハウスの作品群において、
未完成であるが故に、もっとも、可能性を感じさせてくれる作品でした。


=====
3.建築

建築については、どんなに展示してあっても、
本物に及ぶべくもないのは仕方ありません。

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写真よりも、模型よりも、本物の持つ力はすごい。
これは、建築系展覧会の限界。

でも、それでも、十分に刺激になる内容。
知らなければ、知らない分、そのモダンさに驚けます。

=====
『バウハウス・デッサウ展』

  @東京藝術大学大学美術館 (東京・上野)

[会期]2008.04/26(土)~2008.07/21(祝・月)
[開館]10:00-17:00 月曜休館
[料金] 一般 1,400円 / 大学生・高校生 800円 / 小中学生 500円

  http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2008/bauhaus/bauhaus_ja.htm

 バウハウス [BAUHAUS] wiki

作者:
 ヴァルター・グロピウス [Walter Adolph Georg Gropius] (1883-1969) wiki
 ヨーゼフ・アルバース [Josef Albers] (1888-1976)
 パウル・クレー [Paul Klee] (1879-1940) wiki
 カンディンスキー [Wassily Kandinsky] (1866-1944) wiki

=====
さてさて。

ベルリンにも、バウハウス・アーキヴ(アーカイブ)があります。

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この建物が、リニューアルのためのコンペを行ったのですが、
このコンペを勝ち取ったのが、「金沢21世紀美術館」で有名なSANAA

このアーキヴの入口横にある小屋では、他のコンペ作品も含めて、
コンペ資料を一般公開しているのですが、さすがにどれも力作ぞろい。
そんな激戦の中、ドイツを代表する建築運動の歴史的建造物のリニューアルを、
勝ち取ることが出来る、というのは、さすがだなぁ、と感心しました。

このコンペ案は、HP:http://www.bauhaus.de/ から、
Gebaude (building) → zukunft (future) とたどると、見ることが出来ます。







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Last updated  December 24, 2008 12:44:59 AM
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mrtk@jp@ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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