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August 18, 2009
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カテゴリ:美術
美しくて、残酷で、恐ろしい世界。

テーマ展などで、単独の作品は何度か拝見していましたが、
個展で見るのは、2005年に原美術館で行われた
やなぎみわ展 - 無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語』以来。

(当時の感想はこちら…昔の方がちゃんと書いてて驚きます;)

今回は、第53回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館での個展開催を受けて
国立国際美術館B2Fという大舞台を、黒く染める今回の展覧会。

あの時感じた、美しくて、残酷で、恐ろしい印象そのままに、
より美しく、より残酷で、より恐ろしい世界が展開されます。

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出展されているのは、

「My Grandmothers」
「Fairy Tale」
「Windswespt Women」

の3シリーズ。

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「My Grandmothers」 シリーズ。

一般の女性に「50年後の自らの理想の姿」を問いかけ、
それに対するインタビューを繰り返す中で浮かび上がってきた「老後」あるいは「祖母」を、
本人に特殊メイクを使って演じてもらい、それを写真作品にする、というシリーズ。

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原美術館の時は2,3作品のみの展示でしたが、今回は、26作品もの展示。
題名は、それぞれの女性のファーストネーム(たぶん)。

それぞれに付された、一連の呟き、あるいは詩が、各作品のコンセプトを伝えてくれます。

それは、決して「バラ色」でも、「幸せに暮らしましたとさ。」でもない、
時に残酷で、時に素晴らしい、リアルなそれぞれの「老後」あるいは「祖母」。

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個人的に好きな作品は、占い師の「AI」と元教師の「MIKA」。
両作品とも、星新一先生の作品のような、物語性とひねりが利いています。

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気怠そうに少女達の占いをし続けている「AI」。

子供相手のいんちき占いと言われながら、彼女が仕事を続けているのは、
ただ一人の客、すなわち、彼女の後継者を待っているから。

順番を待つ少女達の、期待と不安に満ちた表情と、
占いをする老婆の、嫌そうで気怠く皮肉めいた表情。


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巫女のような恰好で、海の上の岩にすくっと立つ「MIKA」。
周りの海では、少女達が遊び戯れています。

彼女が生徒達とこの島に流れ着いたのは十数年前。
ここが世界で唯一の場所なのか、他に生き残った人間がいるのかも分らず、
今まで生き延びできた、と言います。

女性ばかりの島で、生徒達に生き延びる術を教え、
次世代と地球の再生を祈る彼女の姿は、教師ではなくすでに巫女。


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その他にも、

一人で小型飛行機を操縦している「MIEKO

若手お笑い芸人を最前列で眺める「YOSHIE

子も孫も捨てて、アメリカで若い彼氏とハイウェイをぶっ飛ばす「YUKA

自らの墓石の上でポーズを決める、スーパーモデルの「ERIKO

ダンサーとして砂漠で舞う「MOEHA

森の奥でひとり琴を奏でる「TSUMUGI

場末の料理屋で胡弓を弾く「MISAKO



などなど、バラエティに富んだ「老後」あるいは「祖母」が、並べられています。

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「Fairy Tale」 シリーズ。

少女」と「老婆」が出てくる童話や物語をモチーフに、
老婆」役を、醜い仮面を被った「少女」が演じるという作品群。

前回の展覧会の時に詳しく紹介しているので、解説はこちらに譲りますが、
美しくて、残酷で、恐ろしい、それぞれの物語の暗黒面を、見事に表現しています。

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「Windswespt Women」 シリーズは、新作。

黒く彩られた美術館の空間は、とてつもなく巨大(3m×4m)で、
迫力ある、踊る女性の写真5枚に占拠され、異質な雰囲気に満たされています。

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その隅のテントで上映されているのは、ひとつのテントを被って旅をする、5人の女性の姿。
前回の展覧会の時にご紹介した「砂女」の発展バージョンと言えるでしょう。

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黒いテントが荒涼とした大地を旅し、ある場所に止まったかと思うと、
その中からのそのそと5人の女性が這い出し、激しい踊りを披露し、
再びテントの中に戻って、テントの旅を再開する、というストーリー。

女性たちは上半身裸、という設定で、豊かすぎる胸(若い女)か、
しぼんでしまった胸(老女)の、どちらかをつけ、
髪を振り乱して、激しく踊ります。


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この踊りが、巨大写真のモチーフでもあります。

前回の「砂女」の紹介では『「少女」の「母」からの継承と自立。
というフレーズを使いましたが、今回は、それぞれが老年にシフトし、
共に旅し、共に踊ることで、継承、交換性、ジェンダー的視線、
といったことを考えさせられる作品になっていました。

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一緒に観に行っていた父が、この映像作品を見て「意味が分らん」と嘆いていましたが、
素直に「不気味で、残酷で、気持ち悪い」と思えば良いのだと思います。

その不気味さ、残酷さ、気持ち悪さが提示されている意味、
そう感じた理由を問うことから、見えてくるものが、
つまり作者の問いかけたもの、なのでしょう。

私がやなぎみわさんの作品を好むのは、
その作品によって考えさせられること、刺激されることが大だからです。


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同じく国立国際美術館のB3Fでは
ルーブル美術館展 美の宮殿の子供たち
が同時開催されていました。

子供たちの無邪気さを描いた作品と、やなぎみわ作品、何と皮肉な対比であることか。

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しかし、ルーブル展の中でも、子供の命は常に死と隣り合わせであったがゆえに、
儚さの象徴でもあった、ということが語られていて、
そういった作品とやなぎみわ作品は、濃厚にリンクするのです。

「生」「老」「病」「死」
お釈迦さまが「四苦」と呼んだ、避け得ぬ「苦」。

特に「生」と「老」について考えさせられる、やなぎみわ作品は、
さらに「性(ジェンダー)」の問題も絡められて、
我々の喉元に、鋭い刃を突き付けるのです。

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『やなぎみわ 婆々娘々!』展

  @国立国際美術館 (大阪・中之島)

[会期]2009.06/20(土)~09/23(水・祝)
[休館]月曜
[料金] 一般 420円/大学生 130円/高校生以下・65歳以上 無料

※『慶應義塾をめぐる芸術家たち』も同時に観覧可
※『ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち』展チケットで観覧可
※無料観覧日:07/04(土)、08/01(土)、09/05(土)

作者:やなぎみわ(http://www.yanagimiwa.net/



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今回は「ルーブル展」とあわせて、父と二人で国立国際美術館を回ったのですが、
帰りに、やなぎみわさんの図録を買おうとしたら、
そんな怖いのを買う必要があるのか?」と言われました。(買いましたけど。)

「怖い」だけなら買いません。
考えさせられるから、考える必要を感じるから、買うのです。

…いや、行った美術展のほとんどで図録買ってるんですけどね。






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Last updated  August 19, 2009 01:00:48 AM
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mrtk@jp@ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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