2006/06/16(金)08:27
Dr.ビュートのソフィーリッチ・・11
「コーリャンのニギリメシ」の解説
山中直樹記
北満州から、やっとの思いで逃げ出してきた少年が一人、一言の言葉も発することなく、胸の肋骨を見せるように、首まで着ていたシャツを持ち上げたのです。
その少年の目が、「オフクロ」さまと「オニギリ」に向いているのが微笑ましいではありませんか。
反り返るほどに、小山少年の驚いた様子が素直に出ています。
大きな頭と目に、画家・小山をうかがわせます。
口を大きく開き、手を広げた様子や上げた腕に、驚いた姿、気持ちが籠っています。
優しく、ふくよかさが漂う「オフクロ」さまには、「マリア」さまが思い浮かびます。
控えめに描かれている所に、一層、その思いが込められているのでしょう。
一方で、コーリャンと大豆入りのニギリメシが、大きく描かれている所が、マンガチックで面白い。
冷えたらおいしくなさそうですが、今日、健康食品として話題の大豆蛋白や成分が栄養学的には、役立った可能性があるところに、食料不足の状況に在っても、人の知恵が働いたのかと、大きなニギリメシに微笑ましさを感じてしまいます。
現代の日本では、想像し難いが、明日はどうなるか判らない命の危険と食糧難の状況で、小山少年の想いは「オフクロ」さまと、「マリア信仰」に通ずる人への「愛」だと思います。
私にとっては、「煩悩是道場」の修養の場で全ての人々の幸せを願う「自他楽」の心を求める世界に敬服を感ずる貴重な作品だと思います。
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