増進会VS秀英「札幌学習塾戦争」第3弾 PART1
2005年夏に北海道へ進出し、全国展開を加速している東証一部上場企業で大手学習塾の秀英予備校(本社・静岡、渡辺武社長)の株価が急落している。 秀英の株価は本道進出後、2005年5月末から6月末にかけての3,400円台をピークに下がり続け、7月19日現在では3分の1以下の1,000円前後。株価急落の秀英に明日はあるのだろうか。学習塾業界に詳しいA、B、C、Dの教育記者四人が増進会VS秀英「札幌学習塾戦争」をテーマに語り合った。第二次世界大戦時の旧日本軍の状況 A 株価急落は上場企業にとって最大のイメージダウンだ。秀英予備校(以下秀英)の2007年3月期決算は、売上高が前年同期比2.7%増の137億2,400万円で過去最高を記録したものの、三重県進出に伴う設備投資の負担増などにより利益率が減少し、営業利益は同20.5%減の20億7,100万円、経常利益は同21.0%減の21億円、当期純利益は同26.3%減の11億6,500万円と大幅な減益だった。 今期も宮城県進出等により、売上高が同1.8%増の139億7,700万円、経常利益が同50.3%減の10億4,400万円、当期純利益が同97.2%減の3,200万円と大幅減益を見込んでいる。 C 拡大戦略で校舎を相次いで新設する秀英は、まるで戦局を広げすぎて苦戦を余儀なくされた第二次世界大戦時の旧日本軍のような状況ではないか。静岡県が本拠地の秀英から見れば、北の果ての北海道は中国大陸のようなものだろう。 札幌駅北口に完成した10階建ての巨大な札幌本部校も、校舎の規模に見合う高校生・浪人生や小中学生をどこまで確保し、維持できるのか不透明な部分が多い。 しかも、札幌本部校の小中学部は小3・小4クラスを開設しているが、常識的に考えて、よほど授業内容に特別な魅力がない限り、小学生を札幌中心部まで通わせる保護者はいないのではないか。M&Aが相次ぐ学習塾業界 B 北大学力増進会(以下増進会)を展開する、同じ東証一部上場企業の進学会(本社・札幌、平井睦雄社長)の2007年3月期決算は、売上高が前年同期比8.4%減の78億4,900万円、営業利益が同7.7%増の10億1,100万円、経常利益が8.7%増の18億2,800万円、当期純利益が4.2%増の10億200万円の減収増益だった。 進学会のメイン事業である塾関連事業は、売上高が同3.5%減の66億4,100万円、営業利益が同10.5%増の13億4,700万円。 A 進学会の株価も、秀英の本道進出後、2005年9月末から10月末にかけての1,000円台をピークに下がり続けていたが、2007年4月末に700円台で下げ止まり、その後上昇基調に転じている。7月19日現在、740円前後で推移している。 企業の買収能力を示す時価総額(株価×発行済株式数)は、進学会が約147億円に対し、秀英が約67億円。進学会は秀英の約2倍強の時価総額となっている。今年5月末、通信教育最大手のベネッセコーポレーションが東証一部上場で大手学習塾の東京個別指導学院を127億円強で買収すると発表するなど、ここ数年学習塾業界は、少子化が進む中外国人持ち株比率道内企業第2位 秀英の最大のライバルである佐鳴予備校(静岡県で創業し、東京に総本社、名古屋に本社を構える。佐藤イサク理事長。以下さなる)九大進学ゼミを買収して九州へ進出した。さなるはグループ全体で1都12県に計310校舎を展開し、グループ合計で売上高137億円、経常利益35億7,000万円を誇る。秀英も来年3月にも九州へ進出する計画だが、現状では、さなるが秀英を上回る勢いがある。 生き残りをかけた学習塾の業界再編は今後も一段と進むと見られている。その中で、上場企業の進学会と秀英もM&Aの対象となる可能性も十分あるだろう。 B 6月19日付けの日本経済新聞の地方経済面に、道内企業の外国人持ち株比率上位企業が掲載された。06年度末で第1位は家具インテリア大型専門店のニトリで26.5%(05年度末は26.5%)。第2位は進学会で24.1%(同23.8%)だった。無借金体質で健全な財務内容の進学会は、外国人投資家も注目する優良企業のようだ。 D 今年6月に発表した増進会の2007年度高校入試の合格実績では、札幌圏上位10校(札幌南、札幌北、札幌東、札幌西、札幌旭丘、北広島、手稲、開成、大麻、国際情報)の合格者数は、前年対比270名減の627名。10校の合格者数すべてで前年を下回った。(つづく)