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カテゴリ:クラシック音楽_ピアノ関連
今日は9月25日は、グレングールドの誕生日である。彼がもし生きていれば、今年で72歳になる。50歳でこの世を去ってからもう22年もたつのだ。 グールドは25年ほどの間に100枚を越えるレコードやCDを残しているが、その記念すべきデビュー盤は、誰もが知っているあの「ゴールドベルク変奏曲」である。しかし、日本のレコード会社が出した彼の最初の1枚は、「ゴールドベルク」ではなく、ベートーヴェンの後期のピアノソナタ3曲を収めたものだった。いまでは誰も驚かないだろうが、この演奏は当時の常識では枠をはずれた「とてもベートーヴェンとはいえない」変わった弾き方だった。その為、日本の批評家の集中攻撃の対象となった。そのすさまじさに、このレコードをリリースした会社も、グールドのレコードを続けて出す勇気を完全に失ってしまったという。 しかし、この演奏を聴いて評価した評論家がいた。それが吉田秀和さんだった。「確かに変わってはいるがおもしろいピアニストだ」と思った吉田さんはすぐにグールドの他の録音を取り寄せたらしい。そして出会ったが、グールドのデビュー盤である「ゴールドベルク変奏曲」だった。 後年、吉田さんがある出版社から「私の一枚」という原稿を依頼されたとき、迷った末に選んだのが、グールドの「ゴールドベルク変奏曲」だった。あの吉田秀和さんが数あるレコードの中からたった1枚選んだレコードである。これは聴くしかあるまい。この一文を読んだ私は、すぐにこのレコードを買った。 冒頭の主題のアリアが流れ始める。一音一音確かめるように、グールドは弾いている。ピアノの音は耳からではなく、胸からきこえてくるような錯覚に襲われる。一種の酸欠状態にも似た、心地よい息苦しさ‥‥。そしてどこか遠くへ連れて行かれるような気分になり、やがて自然と涙があふれてくる。音楽が胸にしみるというのは、きっとこういう感覚のことをいうのかもしれない。 最後の録音となった新盤の「ゴールドベルク変奏曲」ももってはいるが、私は旧盤の方が好きだ。あの胸しみる何とも言えない恍惚感は、新しい盤ではなぜか味わうことができないでいる。 ----------------------------------------- ●旧盤バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル盤) ●新盤J.S.バッハ:ゴ-ルドベルク変奏曲 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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