カテゴリ:音楽
この前からかなり気になっているモノがある。
ここを読みに来て下さっている皆さんはチョー・ヨンピルをご存知だろうか? 80年代かなぁ、日本でもあちこちの歌謡番組にも出ていたし、「釜山港に帰れ」は日本でも大ヒット。 日本では演歌歌手と思われがちなチョー・ヨンピルは、本国である韓国ではどちらかというとロック寄りアーティストと受け取られていたのは話には聞いていたが、それにしてもあれから20年前後も経ってしまい、彼は彼で韓国の一つのレジェンドの地位を築いてしまったに違いない。 この23日には、彼は北朝鮮でもコンサートを行うという記事を見ていて、それがどんな感じだったかを知りたいと思っていたら、中央日報と朝鮮日報には記事が出ていて、北朝鮮での視聴率は17.4%を記録したとも発表されていた。 (しかし、北朝鮮でテレビがある家なんか、まだまだないはずなのに・・・このコンサートに来ていたお客さんも、日本人が好きなコンサートに自由に行けるのとは違って、いわば命令で「今夜、行ってきなさい」と指示を受けた政府の高官の一家なんかではないのかと思うが) 報道では、最初はそういうコンサートでどのような反応をしていいかわからないと見える聴衆に、チョー・ヨンピルもいささか調子が狂ってしまう出だしだったようだが、最後には北朝鮮の人たちもチョー・ヨンピルの熱唱に落涙していたのだそうだ。 (私も聴きに行ってみたかった) さて、このチョー・ヨンピルが日本でヒットを飛ばしていた当時のアルバムを何枚か聴いたことがあった。 私は非常に彼のアルバムを気に入ってしまい、カセットに録音して結構何回も聴いていたし、実際によくカラオケでも歌っていた。 それらのアルバムの中に、彼のさまざまな歌の中でも白眉の1曲がある。 タイトルは「恨五百年」。 この曲をご存知の方があるだろうか? この間から、ヒマがあるとこの曲のことを調べていた。 韓国は恨(ハン)の国と称されることがよくあるが「だから反日感情が強いのか」という短絡的な考え方をするのは正しくないと思う。 韓国言うところの「恨」とは、その漢字の直接の意味である「怨恨」と考えるより、むしろ痛切さ・悲哀・寂寥感・無常観・・・そういうものがもっと深いところでないまぜになった言葉だという解釈が当たっている気がする。 この「恨五百年」の「恨」についてだけでも2説あるようで、文字通りの「恨」が500年続いているという説の他、この「恨」は数を表していて、単に「約」と同じような意味に過ぎないとしている説もあるそうだが、もともとこの歌の成り立ちは朝鮮八道のうち、朝鮮半島中東部にある江原道の民謡がもとになっているらしい。 その「恨五百年」をチョー・ヨンピルが原語で熱唱しているのを聴くと、意味はまったくわからないというのに体の中心から外側にむけてぞわぞわと総毛立つのを何度も感じた。 とは言っても、それを最後に聴いたのはもう20年近くも前だから、このところ急にこの歌を思い出し、調べれば調べるほど、また聴きたくてたまらなくなってきた。 チョー・ヨンピルのこの歌唱は、韓国の伝統芸能とも言えるパンソリの歌唱を少々取り入れているらしい。 こう聞くと、今度はやっぱりパンソリ自体にも興味が出てくるのも当然だ。 もともと、パンソリがどういうものかは前から知っていた。 1人の歌い手と1人の太鼓の鼓手がペアになって繰り広げられる語りのようなパンソリは主に朝鮮半島南西部、全羅道で主に語り継がれてきた演唱、口誦で、昔は1枚敷いただけの筵を舞台として、民衆の感情を音楽物語のように演じるという大衆芸能だ。 ちょっと聴くと、日本の浄瑠璃や浪曲にも似ている気がするし、民謡にも演歌にも通じるところが確かにあるように感じる。 歌い手は、部分によっては太鼓のリズムで歌い、太鼓のないところではつぶやきのように語るが、ところどころはコミカルな愚痴めいた言葉も挿入されたりで、少しずつ時代によっても内容は変わっていくのだろう。 最初に聴いた時には「なんだ、これ」と思ったが、言葉がまったくわからないにも関わらず、なんとなくそこにこめられた悲壮感や情念がなぜか感じられ、パンソリもまた一つのソウル・ミュージックだったのかというのがひしひしと伝わってくるのだ。 近年、パンソリがまたクローズアップされてきたカギとなったのは93年の「風の丘を越えて ~西便制」という韓国映画だったようだが、この映画は観よう観ようと思いつつ、まだ今に至るまでその機を得ていない。 次に日本に戻ったら絶対に借りてみなければいけないのだが、父が血の繋がらない娘にパンソリを厳しく教え込むという映画らしく、この映画が評価されてパンソリ自体がまた脚光を浴びるようになったということだ。 私自身は、やっぱりいつかは「春香伝」と「沈清伝」のパンソリは絶対に生で聴いてみたいものだと思っている。 今日、思い切り探して久しぶりに聴いてみたパンソリ。 このページを開けると、エンコードが日本語のままだと文字化けして漢字ばっかりのサイトになっているが、韓国語にエンコードしてもどうせ読めないのだから気にしなくてもいい。(笑) 文字化けオンパレードの下に緑色のハングルが並んでるが、そのうちの上から4つは画像つきでパンソリが聴ける。 興味のある人はそう多いわけではないと思うが、こういう音楽もあるということで。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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