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旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪お茶と同情≫

♪  Wise men say only fools, only fools rush in
     But l, but l, I can’t help falling inLove with you
  Shall I stay, would it be, would it be a sin
     If I can’t help falling in love with you♪

エルビイス.プレスリーが1961年度作品、ブルー.ハワイのなかで
歌ってヒットした♪好きにならずにいられない♪

この原曲はマルテイーニ作曲の♪愛のよろこび♪です。

この名曲がそれよりもっと前に
さりげなくサントラ盤として使われていた作品。
   ≪お茶と同情≫1956年度作品

ヴインセント.ミネリ監督が舞台劇のキャストそっくり
そのまま使っての映画化作品である。

昨日のドイツ映画に継いで、青春の痛み,悩みを重厚に描いた作品を
紹介します。

主演にデボラ.カーと
ミュージカル 南太平洋 でお馴染みのジョン.カーを据えて。

もともと、舞台劇だけに
その後半のデボラ.カーの叩き込むような
セリフは圧巻です。

この作品もアメリカニューイングランドの男子校を舞台に、
教師とその舎監をする妻との問題を絡め、
一人の男子生徒に焦点を当てる。

荒々しいことが男らしいと信じて疑わない教師の下で
繊細で、やさしく、思いやりのある一人のトム.リーという
学生がつまはじきにされ、シスターボーイとあだ名され、
彼が変わり者と言われる中で舎監をしているローラだけが
彼の理解者であることから、夫婦の危機にまで発展する。

本当の男らしさはなにか。人間らしさとは何か?
いじめの中でローラへの慕情に慰められ、
学生生活に挫折し,悩む姿を描く。

ストーリー

トムガこの学校を卒業して10年。
今日は同窓会に出席していた。
彼が、この学び舎の寮にいた頃の部屋を訪ね、
その窓から庭を見下ろし、回想するシーンから物語りは始まる...。

ギターを奏でながら、また、クラシック音楽を愛す、
おとなしいトム(ジョン.カー)は
ベース.ボールや登山に励む他の生徒達とは、打ち解けなかった。
彼が打ち解けないのではなく、
そういう趣味を女々しいと感じる学生たちが彼を遠ざけていたのだ。

彼は幼い時に両親が離婚し、メイドにお裁縫や,料理も教わり、
スポーツ以外は何でも出来た。

この男子校の寮の二階にアレックスという子と同室していた。
彼だけは幾分トムを理解し、なにかとかばってくれた。

トムは教師ビルを交えてみんながスポーツに興じるときも
教師の妻達に混じって裁縫を器用に手伝ったりと、
傍目には奇妙に映った。

ローラはそれはその子の個性であって、普通の子だと思っていた。
ローラは寮の居間に生徒をお茶に誘って、くつろいでもらったりしていたが、
トムは頻繁に彼女を訪ねたり、庭弄りをしているローラの手伝いをしたりと
傍目にはローラニ付きまとっているように見えた。

ローラの夫ビルに言わせれば
妻はお茶と少しの同情以外に立ち入ってはいけないと
いつも言っていた。

トムの父ハーブはこの学校の出身で、ビルとも友達であった。
彼は軟弱な息子(決して軟弱ではないのだが)を男らしく
育てて欲しいとビルに頼む。
親の考えを押し付け、その愛に飢える息子を理解しない父ハーブ。

生徒達はトムにシスター.ボーイというあだ名をつけからかった。

パジャマゲームといって新入生のパジャマを上級生がはがして
男らしさを確かめる夜がやってきた。
パジャマを着たトムだが、怖くはない。
ただナンセンスと思うだけであった・
それでもトムは出かけた。

しかし、みんなが見つめる中、
生徒達は、シスターボーイを護れと、
彼のパジャマを剥がしにかかるどころか、彼を取り囲んで護った。

見かねたアレックスは、飛び込んでトムのパジャマを引き裂いた。

パジャマゲームの対象にもならないと
からかった級友たちに、トムが哀れだったからだ。

このことがあってからビルは
ハーブに頼まれたことの失敗と
トムのローラへの思慕を感じ取り、
ローラとは話し合えば口論。いや
口論さえ避けるようになった。

アレックスはもっと男らしく歩けだのと
いろいろと忠告してくれたりしたが、
彼も父親の命令で、寮を変わる事になる。

トムは男になるために、
安酒場のエリーというあばずれ女にデートを申し込む。
不本意であったがアレックスの勧めであった。

しかし、彼女とのデイト中にも、彼のうぶさ、子供っぽさを
なじられ、かっとなって自殺を図った。

エリーとの約束を知ったローラはなんとか引きとめようと部屋で
努力したが、トムはとうとう出かけてしまっての結果であった。

非難し、馬鹿にし、理解しようとしない夫ビル。
そして、ローラは前夫にに似て繊細で優しいトムに
亡き前夫の面影を見る。

荒々しいだけが男らしさではない。本当の優しさのなかにこそ
男らしさはあるというローラとビルはかみ合わない。
トムをここまで追い詰めた他の生徒達のことは?

そうすると何もかも、価値観が変わってきていることに
気付き始めたローラ。

自殺騒ぎの後、姿を消したトム。
ローラは森の中だと..彼を探す。

ローラは”トム、あなたのこと好きよ。でもね、
相手の気持ちが得られずとも
その人を想ったその淡い気持ちは、
キレイな思い出として残るわ。
これから先、素敵な女の子と知り合える、きっと。。。”

霞む思い出から覚めたトムは階下へ降りて、
ビルの部屋をノックした。
庭はかつて、手入れされた面影はなく、ビルの心を表していた。

ビルはローラからトムヘ充てた手紙を渡した。

””トム、立派な作家になったわね。
私たちのことを書いた作品を読ませてもらったわ。
わたしが聖母のように書かれているけれど
それは違う。
私にとって、ビルとやり直すことより、
あなたを救うほうが簡単だったのよ。

美化してはいけない、これからは真実を書くのよ””
   としたためてあった。

あの後,ローラはビルの元を去ったのであった。

トムをいたわり,見つめることで、ローラも
これからの人生を見つめなおすことが出来た。

そして、トムは自分の感性を生かした仕事が
出来るようになった。
男らしさとは何なのだろうか?

男らしさよりも女らしさよりも、人間らしさが大事だと
言っているような気がします。
トムは傍目には女々しく映ったかもしれないが、
これだけの人間観察ができて小説にまでした。
人の心を読み取り、理解すること、許し,労わり..それこそが、
真の男らしさであり,人間らしさであった。

10年ぶりにあったビルは以前と変わりないようであった。


監督ビンセント.ミネリは
花嫁の父、巴里のアメリカ人、バンド.ワゴン、バラの肌着、
恋の手ほどき、 いそしぎ などを演出した人。

ライザ.ミネリの父親であり、
ジュデイー.ガーランドの夫でもありました。
アメリカのよき時代に活躍した。

ミュージカルも結構手がけていて、
いろんなカラーを打ち出す人でもあった。

この作品はリチャード.アンダーソンという劇作家の
書き下ろしで
ブロードウエイでロングランの記録を持った作品とか。
それをキャストそのままで映画化したものだそうです。

トムが奏でるギターの調べはあのマルテイーニの
♪愛のよろこび♪...
サントラ盤にも使われています。

映画のための主題曲、ヒット曲を映画に挿入したりと
旧い作品だからこそ、その発見も面白いものである。

1956年度  米
監督  ビンセント.ミネリ
出演  デボラ.カー
    ジョン.カー
    リーフ.エリクソン

脚本がすばらしく、重厚感ある作品です。

親子愛、兄弟愛を描いたエリア.カザンの泥臭さとは
また違った魅力があります



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