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旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

、≪落ちた偶像≫



   キャロル.リード作品
1.≪落ちた偶像≫
2.≪邪魔者は殺せ≫

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1. ≪ 落ちた偶像 ≫


製作   (英)1948年  モノクロ
原作    グレアム グリーン
監督    キャロル リード
出演    ラルフ リチャードソン/ミシェル モルガン/
      ボビー ヘンリー


キャロル リードとくれば.”第三の男”を上げるべきですが、
あまりに知られすぎて面白くないし、かねてより(サスペンス映画)は
B級、C級作品に結構面白いものがあると思っているので、こちらを
取り上げた。
この作品はA級作品に匹敵.

舞台は、イギリス
殆どが、邸の中だけのシーン.父も母も留守勝ちな大使の邸
いつも1人ぼっちの少年(ボビー)には、執事(ラルフ)だけが、
自分の理解者であり、友達である. 
両親が、海外出張ばかり故、邸の中は、この二人と執事の妻と
3人だけだ.
少年はペットに小さな蛇を飼っている。
口やかましく横暴に振舞う執事の妻を二人とも嫌っている。
ある日蛇を見つけた妻は、ストーブにくべて焼いてしまう・
ますます、妻を嫌う少年.

執事には、好きな女性(ミシェル)がいる.
邸の真中には大きならせん階段があるり
これが後に起こる転落事故(?)の舞台となる.

淋しい少年を元気付ける為、執事はいろいろと作り話をして
きかせているが、このミシェルという女性の存在を
少年が知り、また、妻が嗅ぎ付けることで、
話が、ややこしくなってくる.
妻とミシェルのことで、口論となり 妻が階段から落ちるという事故が
起きるのだが、作り話の延長で少年には、ゲームなのか真実かわからない.
また、少年にとって英雄のような存在の執事を殺人者と、
思いつつ、必死で庇うからこそますます容疑は深まる。
無垢である少年にとって何が真実かは、どうでもよく
彼が、逮捕されることがあっては、なら無ないのだ.

実際にこの執事が、犯人であったのかどうか.。
少年の無垢と嘘が助けになるか、真実が助けになるのか
らせん階段の上から少年と執事伝ヤツ手段として使われる紙飛行機や
下から上へ向かうらせん階段のカメラワークのすばらしさと、
この階段を中心に繰り広げられるドラマを
キャロル リードは、巧みに操り最後まで一気に観客を引っ張って行く.
イギリス映画でないと出来ないシチュエーション.

素敵なオルゴールを手にしたような気分にさせてくれた映画でした.

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2.≪邪魔者は殺せ≫
  ≪邪魔者は殺せ≫

太陽の光と影の名手が黒澤 明とすると、
夜の光と影の名手はもちろんキャロル.リードである.

≪第三の男≫よりも素晴らしいと、そしてC.リード0監督の
最高傑作だと評する人は非常に多い。
何故か...?
その答えはストーリーの後で。

そして その作品とは  ≪邪魔者は殺せ≫.

第三の男でオーソン.ウエルズは闇のウイーンの地下下水道を、
濡れた石畳を逃げ回った。

今回は、アイルランドーードシャブリの雨の深夜の
ダフリンが舞台である。

秘密結社のボス、ジョニーは仲間四人と資金稼ぎの為
銀行強盗を働く。
3人は巧く逃げて車に乗り込んだがジョニーは銀行の出口で
立ちくらみを起こし、ちょうど来た工場員とぶつかり、
もみ合う内に相手を撃ち殺してしまう。
自分も左肩を負傷し、なんとか、仲間の手助けで車に乗りかけたものの、振り落とされてしまう。

それから深夜の彼の逃亡が始まるわけだが、
重症を追った彼は逃げるといっても歩くことすら、
喋ることすら、ままならないなかで、
いろんな人に出遭い、その人生模様が
展開されるというストーリーである。

町中が銀行強盗の犯人達のことを知るのに、
時間は掛からなかった。
賞金も提示された。

逃げて防空濠の中でじっと息をひそめていると、
近所で遊んでいた子供達のボールが転がってくる。

すると警官がボールを持って、彼に近づく.
ジョニーはどうしてここにいるかを話す。
すると幻影はかすみ、そこに立っているのは可愛い少女であった。
じっと見詰め合う二人。

仲間の二人は高利貸しのばあさんに密告されて撃ち殺される。

少女に聞いて防空濠へ助けに来たもう一人はおとりになって
彼を逃がす。
次ぎはトラックに轢かれて怪我をしたと思い、家に連れて帰るが
傷を見て、真実を知る中年の姉妹。

死にかかっている人を警察には渡せないと悩み始める。
迷惑がかかってはいけないと、ジョニーは出ていく。
”無事でね!”と雨の中を出ていく彼に帽子を被せてやる。

次ぎは辻馬車に乗り込む。

休憩していた御者は気づかずに走るが、
知らずに乗せていた客がジョニーだと知ると、
面倒は嫌だがサツに知らせる気は無い.

空き地の小屋まで運んで行って置き去りにする。
それを見ていた男がいた。
賞金を稼ごうと..。だが警察に売るか、組織に売るかを
考えている男だ。

ジョニーには恋人がいる。
組織に部屋を貸していた家の可憐な娘だ。
彼女も負傷して逃げている彼を探して町にでて、
聞き込みをしている。

当然刑事の尾行はあるが、
彼女は教会へ行く。
教会には先客がいた。
例の賞金を稼ごうとしている男で情報をくれるといい、
司祭と一緒に話しを聞く。
今までの経緯を話してくれた.

司祭に金で買えと持ちかける男。
”ジョニーを助ければお前に真の報酬を与えよう。
それがお前には一番の報酬だ。”
男は”信仰って金にして幾らだ?”
”あとで分かる”と司祭。
”やるともさ”?????

ジョニーを助けたい彼女は司祭から自首を勧めろといわれるが..。
神にそむいても彼を助ける!と出ていく。

吹雪の舞出だした町をおぼつかない足取りでジョニーは
さまよう.
バーへ入る。
当然みんなは囁く。”ヤツだ!”
”閉店までやすませてくれ”とテーブルにうつぶせて気を失う。

賞金稼ぎは無知な為、金より良い儲けをといった司祭のことばを
信じているようだ.”しんこう”の意味もわからずに。

男はジョにーを連れに空き地の小屋へ行くが彼はもう居なかった。

ジョニーを英雄化して肖像画を描きたいという画家もいる。
テーブルに伏して幻影を見るジョニーをよそにバーの中は
乱闘騒ぎである。ジョにーの身柄をめぐって.

ここの従業員や主も警察には通報せずに辻馬車を呼んで
送り込む.。傍には画家が。賞金稼ぎのシェルも画家の家へ。
家には画家の友人のもぐりの医者が。.。

シェルは医者に”司祭と取引は成立したが一体シンコウって
なんだ?”
医者..”あるお方だけのものだ.”
”そんな大事な宝物をよく司祭がくれるといったもんだ?”と
首をかしげる!

医者は手術を施し、傍らで画家はジョにーの肖像画を描き始める。

医者は命の尊厳を語りながら淡々と仕事を..。
画家は肉体よりも魂のみだと絵を描く。
それを見比べるシェル...
このシェルがわれわれ庶民の代役なんですねーー
さすがリードです.刑事も司祭の元へ。

恋人はジェニーを探し出して船で逃げようと船員に話しはつけてある、が、肝心のジョニーを見つけることが出来ない。

輸血が必要だが...。医者は助けたい・・
ジョニーにはまた幻覚症状が..。目の前にはいろんな人の顔の絵が
渦巻き、司祭が自分に訴えかけている。

目を覚ますジョにー.
子供の頃から可愛がってくれた司祭。
今まで殆ど口を利かなかった彼は目覚め、愛を語っている。
司祭に会う為に...
おそらく、ここに至る経緯は、司祭にそむいてアイルランドの
独立の為の宗教の対立があって、司祭にも反抗心があったのではないだろうか..。


ジョニーは吹雪の中へ出ていく。
シェルは付いて行く。
歩くジョにーの死は間近だ。

シェルは司祭にジョニーを合わせてやろうと
植え込みに彼を匿い教会へ。

教会にいた恋人にシェルはジョニーのことを告げる。
急ぐキャサリン!
雪の路上で抱き合う二人の前に包囲した警官隊が....

ポケットから銃を出すキャサリン.
銃声の音に駆けてきた司祭とシェルは呆然と...
キャサリンの空を撃った銃声に警官が彼らを撃った..

その時港を出て行く船の汽笛が...

なぜ?この作品が第三の男より良いと評したか..。
多分この作品のロマンの香りだと思う。

逃げるヒーローより、そこにまつわりついてしまった
人たちの生き様が見え、複雑なアイルランドの信仰の対立に絡む
アイルランドの独立運動を背景として生まれた犯罪で、
失った心は一体なんだったのか...
シェルの一見、無知のような男が発することばが
ひとつひとつ的を得ていて、この映画の
テーマ、疑問を投げかけてくれた。

兎に角、キャロル.リードは夜の光と影の天才だ。
昼から始まるドラマは夜から雪の未明にかけての物語だ。
光と影の対立法を駆使して、革命への闘志を持ちながらも
邪魔者として、命を落とす、男の孤独。
J.メイスンの若かりし頃、、、渋いです.
そぼ降る雨の寂寥感から雪のクライマックスへ向けての
展開はホント!第三の男以上かもしれない!

ロマンチックで格調高いラストシーンは必見です。

追い詰められた二人が警官の銃弾に真っ白な雪の中に倒れているシーンは美しく壮絶でした。
この映画でも前のニ作で紹介したように
(第三...と、落ちた偶像)
子供が登場するんですね。
大事なシーンなんですね。
実はわたし、この作品今日はじめての鑑賞なんです。
10何年前に録画していて、仕舞ったまま観ていなかった.
勿体いないことをしました...

冒頭にあるメッセージ....。
”この映画のテーマは秘密結社の活動ではなく、
立場が違う人々のこころのもつれである。”

制作  英国  1947年度
監督  キャロル.リード
出演  ジェームス.メイスン/ロバート.ニュートン/
    キャスリーン.ライアン




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