伝統の継承
『大仏開眼』の前編、やっと観終わりました。仕事が忙しくて、観る時間がなかったのですが、やっと一息。で、さっそく観始めたのですが、あまりの忙しさで睡眠時間を大幅に削っていた私。視聴中、うたた寝してしまうというようなことを、2度ほど繰り返しました。。。3度目の正直とは、このこと!ようやく、無事、前編を観終わることができました♪奈良時代を描いた作品。特番によれば、衣裳やセットも、残された資料に基づき、できる限り、この時代を再現したのだそうです。戦国時代や江戸から明治にかけての時代が多く描かれる中、とても新鮮な時代劇でした。(まだ前編しか観てないけど)で、昨日、ツイッターでつぶやいたことを、今から加筆&修正して、改めて、語っちゃいます。今日は、時代劇の話。時代劇。私の仕事の一つでもあります。と同時に、私の生活に密着したものでもあります。でもね。最近、京都で時代劇が撮られなくなってきた印象が、とても強いです。まったくなくなったわけではないけれども、関東での撮影が、ホントに増えました。確かに京都で撮ると、京都滞在を前提に、出演者のスケジュールを確保しなくちゃならないし、宿泊費、交通費など予算もかさみます。時代劇を撮ること自体、ものすごーく予算がかかるので、今の時代、予算を抑えようと試みれば、出演者も気軽に通える関東付近で撮るのが、もっとも効率がよいのかもしれません。でもっ!!京都の撮影所において、長い歴史の中で培われた時代劇撮影の技術は、本当にすごい技なんです。まさに、職人芸なのです。作品が撮られてこそ、その技も、引き継がれていく。…のですが、作品数が少なくなってきている今、継承の機会も減っているのが現状ではないでしょうか。時代劇の撮影は、現代劇の撮影とは、やっぱりちょっと違います。例えば、「作法」。着物を着たら、それなりの立ち居振る舞いがあったりします。もっと深いところでいえば、お侍さんにはお侍さんの動き方があるし、町人には町人の動き方がある。もちろん、現代劇だって、その人となりで違ってくるのだけど、現代劇なら想像しながら演じることもできる。けど時代劇は、教えてもらわなければわからない作法がいっぱいあります。東映にしても松竹にしても、京都で時代劇を撮影するときは、仕出し(エキストラ)の方々が、その作法を身につけていらっしゃるわけで。時代劇のプロ、なんです。時代劇が始めての出演者に、京都の撮影所で活躍している役者さんが、その作法を継承するなんて姿も、多々みられたりします。お殿様の前に控える、裃(かみしも)を着た武士たちだって、座り方、立ち方の作法が、ちゃんとあったりするんですよ(^^)これがまた、けっこう、むずかしい。普段の生活の中では、決してすることのない動きなので。実は私も、むかーしむかし、ほんのちょっと役者をかじっていました^_^;城に仕える腰元(侍女)は、お引きずり(※1)は、歩くにもテクニックが必要だったりします。(※1 着物の裾を後ろにひきずる着方をイメージしてください)くるっと方向転換したときの裾の処理は、難易度高し。方向転換すると、足のつま先とかかとの位置が入れ替わるのですが、当時に裾も自然と後ろに…なんてことはありません。裾はそのままの位置にあるので、つま先のところにあることになります。そこで、さっと足で蹴って、後ろに持ってくる。この蹴り方に、コツがあったりします。下手な私は、うまく蹴れず、つま先方向に裾が残ったまま、前進。よく裾をふんずけていました(涙)。どう動けば、うまくいくのか、その技を、先輩から教えていただいたものです。ある意味、それも、継承の一つなんじゃないかなって思います。腰元が拍子木を手に、「火の用心、さっしゃりませ~」と城をめぐるシーン。あれは、仕出しさんがやることが多く、演出上、監督さんからいきなり、「はい、やって」とか言われたりします。始めてのときは、「え、え、どうやるの?」なんて状態でした…。当時、こういうことも時代劇の撮影を経験する中で、覚えて行くことなんだなあと感じた記憶があります。京都の撮影所で生きる方々は、本当に、時代劇のいろんなことを、いっぱいいっぱい知っていらっしゃいます。本当に、すごいです。もちろん、東京で撮った作品も、すごく完成度は高いし、素晴らしい作品です。ただ、京都の時代劇撮影技術がベースにあるのと、そうでないのとでは、もったいなさ度が違うな…と。例えば、立ち回りだって、関東でもかかりの上手な方々はたくさんいるけど、東映の大御所さんたちの技術は、言葉では言い表せないほど、すごいです。生で観ると、本当にすごい迫力です。東映の大御所さんたちは、かつて、ものすごい俳優さんを相手に、その技術を磨いてこられましたから。だから、これから時代劇はどうなるのかなあって思うと、すごく寂しい気もします。私にできること、何かあればいいのに。。。すごく長きなりましたが、最後までお付き合いいただいて、ありがとうございます。また機会があれば、時代劇、語ってみたいと思います。